Interview & Report

Thomas Sassatelli

Thomas Sassatelli トーマス・ササテリ

「Antonioli」バイヤー

Antonioliは、ハイファッションのセレクトショップとして、世界中にファッション感度の高い顧客を持つ。服やアクセサリー、フットウェアに至るまで、ハイブランドの中でも特に高いレベルでセレクションされたブランドが揃っていることで顧客から信頼を得ている。また、デザイナーにとっても、Antonioliでブランドが取り扱われることがステイタスになっている。
取り扱いブランド例:アン ドゥムルメステール、リック オウエンス、バルマン、ドリス ヴァン ノッテン、ランバン、ガレス ピュー、メゾン マルタン マルジェラ、ハイダー アッカーマン、ダミール ドーマ、ラッド ホーラーニ、ニール バレット、 アレキサンダー ワン、トム ブラウン、ジバンシィ、クリス ヴァン アッシュなど。

[ Antonioli ] www.antonioli.eu

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012-13 A/Wの開催に合わせ、ミラノを代表するセレクトショップ「Antonioli(アントニオーリ)」のバイヤー、トーマス・ササテリ氏(写真左)、エマヌエレ・プリタ氏(写真右)のふたりが、ジェトロ(JETRO=日本貿易振興機構)の招聘により来日した。世界をリードするトップブランドから、新進気鋭の若手デザイナーまで幅広く取り扱い、Eコマースなどにもいち早く乗り出すなど、世界中のファッションピープルたちから絶大な信頼を得てきた同ショップの気鋭バイヤーは、日本のファッションをどのようにとらえたのか?
ファッション・ウィーク開催中の過密スケジュールの合間を縫って、チーフバイヤーのトーマス・ササテリ氏に話を聞いた。

今回はジェトロの招聘によって、同じくバイヤーのエマヌエレ・プリタさんと来日されていますが、最初にこの話を聞いた時の感想を教えてください。

Sassatelli:最初に連絡を受けた時は、とても興奮しました。まず、東京のファッション・ウィークに参加できるということがうれしかったですし、自分たちがミラノを代表するショップとして選ばれたこともとても光栄でした。この時期は他にも色々仕事があるのですが、それを押してでも行きたいと思いましたね。

来日は今回で何度目になりますか?

Sassatelli:今回が初めてです。でも、うちのショップで働いている日本人の女性がいて、彼女が東京を案内してくれたので、銀座、原宿、渋谷など色々なエリアを効率良く回れていると思います。中でも渋谷のパルコ周辺などは特に面白かったですし、住んでもいいと思えるくらい東京が気に入っています。

東京のファッションについて感じることはありますか?

Sassatelli:自分たちのショップでも、ミハラヤスヒロやカラーなどの日本人デザイナーのブランドを扱ったことがあるので、ある程度イメージはありましたが、今回東京の街を歩いてみて、すごくエッジーなストリートファッションも見ることができました。今は世界中にエッジの効いたファッションをしている人がいますが、中でも東京のおしゃれな人たちは、世界でも一番なのではないかと感じました。

特に印象に残ったショップなどがあれば教えてください。

Sassatelli:青山のTHE CONTEMPORARY FIXは良かったですね。百貨店やファッションビルを見るのも面白いのですが、あまりに数が多すぎて、少し混乱してしまいます。その点、THE CONTEMPORARY FIXは、ちょうど良い規模だと感じましたし、色んなブランドがうまくミックスされていて、とても良かったです。1階にレストランがあるというのも新しいですよね。他に見たところだと、ヤスユキイシイのブティックも良かったですし、ラフォーレ原宿の近くにあるCHICAGOでは、ヴィンテージの着物なども売っていて、とても面白かったです。他にもショップがありすぎて、まだ見切れていないですね。

先日、THE CONTEMPORARY FIXオーナーの吉井 雄一さんがディレクターとなり、日本の有力ブランドを集めてプレゼンテーションした「VERSUS TOKYO」が、ピッティ・イマージネ・ウオモで開催されましたが、
ご覧になりましたか?

Sassatelli:ピッティには行けなかったのですが、その後ミラノで開催された展示会は見ることができました。全体的にとても面白かったですし、その中で特に気に入ったブランドがあり、買い付けをしたかったのですが、すでにミラノにある他のセレクトショップが買ってしまっていて、とても残念でした。

イタリアにおいて、日本のファッションはどのように見られていますか?

Sassatelli:今、日本のファッションはとても注目されていますし、ミラノやパリと同じくらい可能性を秘めていると思います。ファッション・ウィークは、どうしてもその場に行かない限りあまり情報は伝わってこないのですが、今回のピッティやミラノでの展覧会は、イタリアでの認知度を高めるという意味でも、とても良い試みだったと思います。

来日してご覧になったショーで、印象に残っているものがあれば教えてください。

Sassatelli:現時点ではまだ2つのショーしか見ていませんが、最初に見た「インプロセス バイ ホール オーハラ」はプレゼンテーションの仕方が面白かったですし、先ほど見たばかりの「ドレスドアンドレスド」は、ショーの最後に映像でイメージを見せる演出が、とても良かったですね。ヨーロッパの老舗ブランドというのは、有名で人気もありますが、もの作りに関しては、ある程度似たようなものを繰り返し作っているように思いますが、日本のデザイナーは常に創造性豊かで、新しいものを求めているような印象を受けますね。

今後のMercedes-Benz Fashion Week TOKYOに期待することはありますか?

Sassatelli:例えば、イギリスでは、ロンドンのファッション・ウィーク期間中に、ブリティッシュ・カウンシルが主体となって、厳選したブランドをひとつの会場に集めて、そこでバイイングができるような場を作っています。そういう取り組みが、今後東京でもできるといいのではないでしょうか。あちこち回らずとも、ひとつの会場ですべてを見られるというのは、海外から来たバイヤーなどにとって、とても良いことだと思います。

「Maison BO-M」

アントニオーリ ミラノ本店

日本の読者のために、ミラノのショップ「アントニオーリ」の紹介もお願いできますか?

Sassatelli:アントニオーリは、総面積500㎡程度のスペースに、レディスとメンズを展開しているセレクトショップです。ドリス・ヴァン・ノッテン、マルタン・マルジェラ、アン・ドゥムルメステールなどの有名なブランドから、まだあまり知られていない新しいブランドまで、置いている洋服はさまざまです。ターゲットとしては、あまり一般的ではなく、少し変わったものやニッチなものが好きな層を狙っていて、ラインとしては、ミニマルでエッセンシャルなコレクションが中心となっています。ミラノの他にも、トリノ(イタリア)とルガーノ(スイス)にショップがあり、また、4年ほど前からEコマースも始めています。

 

アントニオーリのウェブショップは、各国の通貨に対応するなど、とても使い勝手が良いですね。

Sassatelli:ありがとうございます。合計金額が各国の通貨で表示されるので、輸送費などを意識することなく、シンプルに買い物ができるようになっています。日本からも東京を中心に多くのユーザーがいて、特にリック・オウエンスやジバンシィなどのブランドが人気です。

アントニオーリのウェブサイト www.antonioli.eu

インターネットが発達したことで、世界各地のブランドの洋服を、どこからでも購入できるようになりました。そんな時代において、セレクトショップとしてオリジナリティを出していくために大切にしていることがあれば、教えてください

Sassatelli:まだ、世にあまり出ていない新しいデザイナーやブランドを常に探すように心がけています。街中や他のウェブサイトでは得られないような情報を、自分たちのサイトなどから発信していくことで、世界中の人に注目してもらえたらと思っています。その結果として、ショップに立ち寄ってくれる人が増えてくれることを期待していますし、ファッションに対するエネルギーをもっと喚起していけたらうれしいですね。

INTERVIEW by Yuki Harada

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