Interview & Report

“EN” Special Conversation vol.3

“EN” Special Conversation vol.3 中伝毛織/中島 君浩 × ARTYZ/小野崎 朋孝

“EN” Special Conversation

中島君浩(写真右)
中伝毛織株式会社 取締役 副社長

小野崎朋孝(写真左)
ARTYZ デザイナー

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2014-15 A/W開催期間中に、日本の技術とクリエイターが出会うトレードショー/エキシビション“EN”が渋谷ヒカリエ8Fで開催される。それに合わせ、本サイトでは産地企業とファッションデザイナーによる全4回の対談シリーズを更新中。今回は、世界的なウールの産地として知られる尾州を代表する企業、中伝毛織株式会社 取締役 副社長 中島君浩氏と、国内生産にこだわったテーラードジャケットやレザーシューズなどを展開するARTYZ(アーティーズ)のデザイナー 小野崎朋孝氏が現在進行中の取り組みについて語ってくれた。

 

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ツイードラン名古屋2013

まずは、それぞれの活動について教えてください。

中島:中伝毛織は、尾州産地にあるウール中心の織物とニットの会社です。数多くある日本の産地の中でも最も規模が大きい尾州では、ウールを中心とした素材を生産しています。その一方で、2012年10月に初開催された「Tweed Run Tokyo(ツイードラン東京)」というツイードを着て、街を自転車で走るイベントの際には、尾州の企業数十社に参加を呼びかけ、さらに昨年は「ツイードラン名古屋」も開催させて頂きました。尾州をはじめ各地の産地が厳しいなかで、いかに日本のものづくりをアピールしていけるかということを考えながら活動しています。

小野崎:アーティーズは、2003年にTシャツからスタートしたストリートブランドで、昨年10周年を迎えました。当初はTシャツのみの展開でしたが、現在はテーラードジャケットやシューズなども展開しています。テーラードというとイギリス製の生地で仕立てるイメージがありますが、自分としては日本の素材にこだわりたいという思いがここ数年強まっていたので、今回こうした機会を頂けて非常にタイミングが良かったと感じています。

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ARTYZ 2014 S/S COLLECTION

中島:日本の技術はすでに海外からも評価されていて、尾州産地にも海外のラグジュアリーブランドが来ていますし、実際に日本製の素材は世界で使われています。また、ウールに関して言うとあまり知られていませんが生産量と知名度の点でイタリアと日本の尾州が二大産地とされています。洋服という観点ではヨーロッパの歴史の長さに敵わないところがありますが、ものづくりという部分では日本人も負けていない。例えば尾州には、紡績、撚糸、糸染め、織・編、整理加工、補修など工程ごとに工場がありますがそれらが集まってひとつの生地が作られています。こうした分業制が敷かれている産地は世界的にも珍しく、自分たちの役割をしっかり全うする日本人の気質が現れているのだと思います。

 

今回はどのような形でやり取りを進めているのですか。

中島:今回はPコートなどの素材として使われることが多いメルトン生地のサンプルをいくつか小野崎さんにお送りし、その中から使いたい生地をピックアップして頂きました。

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サンプル生地

小野崎:送って頂いたサンプルを見て、やはり生地の表情が非常に良いと感じました。これらの生地を見た上で、今回はスタジャンとルームシューズ用のオペラパンプスを作りたいと考え現在型紙を引いているところです。素材をそのまま普通に使っても面白くないと感じたので、スタジャンに関しては袖のレザー部分に海外の老舗メゾンのバッグなどにも用いられているドイツ・ペリンガー社のドイツシュリンクを使おうと考えています。尾州のウールとともに世界の最高峰とされる素材を合わせたスタジャンです。

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織地也(originali)Pコート

中島:突き詰めていくと素材に行き着くところがありますよね。中伝では、生地の魅力を伝えるために、「織地也(originali)」という自社ブランドで洋服も作っているのですが、例えば北欧で海軍が船のデッキ上で着ていたPコートを、すべて日本製のオリジナル生地でリバイバルしているんです。元が軍服なので、素材にこだわった丈夫で質の高い二重織りにしていて、一切風を通さない仕立てになっているのですが非常に好評です。

小野崎:これまでは素材から提案をしていくという作り方はあまりしてこなかったのですが、今回のオペラパンプスに関してはウールという素材を使うところに自分たちが取り組む意味があるんじゃないかなと。ウール製のオペラパンプスというのはほとんどないと思うのですが、それをグッドイヤー製法というカチッとした方法で作ろうと考えています。

 

アーティーズでは、生地をオリジナルで作ることはあるのですか。

小野崎:ウールに関してはオリジナルで作ったことはありません。直接肌に触れるシャツ生地などは良し悪しの判断がしやすいのですが、ウールの場合は自分に知識があまりないこともあって、どうすればいいのか正直わからないところがあります。

中島:ウールの機能を理解して頂けると、だいぶ作りやすくなると思います。これはみなさんが驚かれるのですが、例えば宇宙服のインナーにウールが使用された事もあります。もともとウールというのは、羊の皮膚が進化したものなので、防菌・防臭作業があります。また、ウールはそれ自体が呼吸して温度調整をするので、アルプスなどの雪山登山に行かれる方たちは、凍傷を防ぐために必ずウールの靴下を履く。さらに、ウールの糸には多くの空気が含まれているため、吸湿、防湿効果があり本来は麻などよりも涼しく、夏場にも適した素材なんです。染料をうまく吸ってくれるので、発色も非常に良いんですよ。

小野崎:とても勉強になります。こうした機能を知るだけで、作るものもだいぶ変わっていきそうですね。

 

EN」はファッション・ウィーク開催期間中に行われるため、一般の方から海外からのゲストまで、さまざまな人が訪れると思いますが、どんな部分をアピールしたいと考えていますか

中島:やはり、素材や縫製における日本のものづくりの力を見て頂きたいですね。我々も「メイド・イン・ジャパン」と名乗るからには、恥ずかしくないものを作らないといけないですし、「メイド・イン・ジャパン」が他とどう違うかをはっきり提示する必要があると考えています。そのためには、何よりもものづくりの真剣さというものをアピールすることが大切で、同時に食品などと同じように、安心・安全であることを伝えていく必要もあると考えています。

小野崎:本当にそう思います。一方、海外に関しては、正直僕はあまり意識していません。アーティーズは、日本の素材や縫製にこだわっていますが、それはどちらかというと、地元のプロ野球チームを応援する感覚に近いところがあります。せっかく日本に良いものがあるのに、あえて海外の生地を使ったり、縫製工場を使う必要はないんじゃないかと。

中島:1990年代の日本の繊維産業は輸出が非常に多かったのですが、徐々に洋服の価格が下がり、円高の影響や中国の台頭などもあり、海外との取引がどんどん少なくなっていきました。ただ、ここにきて為替も回復し、海外からのオファーも増えてきているのでチャンスだと思っています。これからは海外の展示会などにも積極的に出ていきたいので、今回のように海外の方たちに来て頂ける機会は、我々としてはウェルカムですね。

 

国内市場の動向はいかがですか。

中島:少しずつ戻ってきている感じはあります。最近は、アパレルメーカーに限らず、百貨店など小売の方たちも産地を訪れるようになっています。野菜などと同じように、作り手の顔が見えるというところが最初の発想かもしれませんが、実際に産地に来るとさまざまな発見があるようで、オリジナル生地の開発などに話が広がることも増えています。日本の産地は原料を輸入しているため、昨今の原料高や、加工のために必要な重油・ガスなどのエネルギーコストの高騰は正直苦しいのですが、コストを抑えるためにそれぞれが知恵を出し合っています。徐々に注文を頂けるようになってきているので、これから仕事が戻ってくれば打てる手も増えてくるのかなと。

小野崎:今、東京には、何でも作ってくれる便利な生地屋やOEMの会社があるため、産地の方と直接会う機会はなかったので、今日はとても勉強になりました。

中島:東京にサンプルを送ってもらうだけではなく、自ら産地に足を運んで頂ければ、必ず何かしらの宝物が見つかると思います。クリエイターの方たちから色々なアイデアをぶつけて頂き、しっかりとものづくりをしてくれる匠たちが形にするという流れができれば、非常に面白いものが上がってくるはずです。せっかくある機能なのでデザイナーの方にも積極的に使ってもらいたいですし、ぜひ産地にいらして頂きたいですね。

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Text by Yuki Harada

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