Interview & Report

ジャネール・オクモドゥ Janelle Okwodu

ジャネール・オクモドゥ Janelle Okwodu VOGUE.COM Contributing Fashion News Writer

MBFWT 2016 S/S 海外ゲストインタビュー vol.3

VOGUE.COM Contributing Fashion News Writer/ジャネール・オクモドゥ

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2016 S/Sの開催に合わせ、経済産業省の招聘でVOGUE.COM Contributing Fashion News Writerのジャネール・オクモドゥ氏が、ニューヨークから初来日した。 世界各地のファッション・ウィークをウォッチしてきた彼女に、東京のファッション・ウィークやストリートファッションに対する印象や、これからのファッションメディアに求められることなど、さまざまなトピックについて話を伺った。

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東京のファッション・ウィークに関する
ジャネールさんの記事
www.vogue.com/13362354/fashion-week-tokyo-model-casting-bobbie-tanabe/

今回が初めての来日ということですが、日本のファッションについては、どのような印象をお持ちでしたか。

日本のファッションは、とても革新的だと感じています。「イッセイミヤケ」や「アンダーカバー」などは、同僚たちにも非常に人気のあるブランドですし、「ファセッタズム」なども以前から気になっていました。また、最近ニューヨークではデニムが流行っているので、日本のデニムのブランドなどにも興味を持っています。

 

ニューヨークにおける日本のブランドの認知度はいかがでしょうか。

もちろんファッション業界の人たちは、日本のブランドのことをよく知っていますし、トレンドを牽引する存在だと捉えています。特に20代を中心とした若い世代は日本に対する関心が高く、男性は主にストリートファッション、女性はモードファッションに興味を持っているようです。ニューヨークの多くの人たちが、80年代に活躍した日本のファッションデザイナーたちをリスペクトしていますし、日本のファッションについて書かれた本が置かれている書店もあるので、そうした場所から知識を得ることもできます。

 

VOGUE.COMでは、ファッション・ウィーク期間中の東京のストリートスナップなども紹介していますが、ストリートファッションにはどのような感想を持ちましたか。

やはり非常にクリエイティブですね。ゴシック調からヒップホップ系まで、幅広いファッションが見られますし、リスクを恐れない挑戦的なスタイルだと感じます。例えば、パリでは伝統を重んじたクラシックなスタイルが主流ですし、ロンドンやニューヨークは実用性が高いアイテムをラフに着こなしている印象がありますが、これらの都市とは異なる魅力が東京にはあると思います。

 

近年の世界的なファッションの傾向については、どのように見ていますか。

全体の傾向としては、しばらく控えめな装いが続いていましたが、ここ数年で素材や色を楽しみながら、個性を主張するスタイルが増えてきています。また、ファッションのトレンドとは少し違う話になりますが、最近はインターネットで世界中のファッションをチェックできますので、以前よりも国際的な影響が広がりやすい状態になっているように感じます。

 

VOGUE.COMで、近年特に力を入れていることなどがあれば教えて下さい。

国際的なファッション・ウィークの記事をより増やしていきたいと考えています。読者は、ビッグメゾンのファッションショーなどにももちろん興味を持っていますが、同時に、東京やストックホルム、コペンハーゲンなどにどんなデザイナーがいるのか、どんなスタイルが好まれているのかという情報も求めているんです。

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東京のファッション・ウィークに関する
ジャネールさんの記事
www.vogue.com/13362285/model-chiharu-okunugi-tokyo-fashion-week/

SNSや動画、スマートフォンなどさまざまなメディアや端末が普及し、情報環境が大きく変化していますが、その中でVOGUE.COMには、メディアとしてどんな役割が求められているとお考えですか。

私たちとしては、読者の興味関心にしっかり応えていくということを徹底しています。その一例として挙げられるのが映像コンテンツで、モデルやラッパーらとコラボレートしたミュージックビデオなども配信しています。インターネットは即時性が高いメディアなので、ファッションショーの情報などをすぐにアップできる強みがありますし、同時にサイトを閲覧しているユーザーの国籍から閲覧時間まで、さまざまな情報を細かく収集することができます。これらのデータを分析しながら、読者のニーズに応えていくということが大切だと考えています。

 

近年は、ブランドやショップ側もインターネットやSNSなどを通じて、情報発信ができるようになっていますが、自分たちのファンにアプローチをしていく上では、どんなことが大切になると思いますか。

やはり大切なことは、自分たちのブランドやショップがターゲットとしている顧客やファンがどんなことに興味を持っているのかをしっかり把握すること、そして、自分たちが発信をしていく目的をはっきりさせることだと思います。インターネットのユーザーは、次のページに進むかどうかの判断を一瞬で下します。その短い時間でユーザーを惹きつけるためには何が必要なのかということを考えなくてはなりません。

 

東京のファッション・ウィークについてもお話を伺いたいのですが、これまでにご覧になったショーの中で、特に印象に残っているものがあれば教えてください。

プラスチック トーキョー」のショーが印象に残っています。マスクやピンを用いたパンク調のスタイルがとても好きでした。また、「ミントデザインズ」「ファクトタム」「ミハラヤスヒロ」などのショーも非常に美しいと感じました。演出面についても、ライティングやセットのデザインにクリエイティブなものが多く、全体的に非常に良い印象を持っています。

 

ファッション・ウィーク全体の雰囲気はいかがですか。

来場者たちが、ショーの開始をとても静かに待っていることが印象的でした。ニューヨークなどではショー直前はカオス状態なので(笑)、このような静寂は素晴らしいと感じましたし、ただ静かなだけではなく、来場者たちの期待感の高まりも同時に伝わってきました。

 

東京のファッションを世界に向けて発信をしていく上では、どんなことが大切になると思いますか。

個人的な意見になりますが、この地で生まれた才能をしっかり育てていただきたいと思いますし、そうした人たちの存在を世の中に広められるような環境をつくることが大切です。アメリカの「CFDA(Council of Fashion Designers of America=アメリカファッション協議会)」は、若い才能の育成から、ネットワークを活かしたビジネス面のサポートやアドバイスなどをしているのですが、そのような形で才能ある若い人たちが道に迷ってしまわないように誘導してあげることが大切だと感じています。

Instagram

東京滞在中のInstagramの投稿

日本の若いデザイナーは、海外に出て発表をする必要があると感じますか。

必ずしもその必要はないのではないかと思います。もちろん、パリやニューヨークなどのショールームやイベントに参加し、バイヤーや編集者に自分を売り込むということは少なからず必要かもしれませんが、頻繁に海外に出なくても、東京のショップで販売したり、ブログやSNSなどをきっかけに、評判を広めることは十分可能なのではないでしょうか。

 

今回、東京のショップをいくつか回りましたか。

来日中のスケジュールがかなりタイトで、ほとんど足を運んでいません。ただ、日本のショップを見たいがために海外から来る方もいらっしゃるように、魅力のある百貨店、セレクトショップ、古着屋が数多くあるように思います。また、世界的に有名なブランドが東京限定のアイテムを展開していることも、海外からショッピングに来る人たちにとっては、非常に魅力的なことですよね。

 

海外の各ブランドは、日本の市場をどのように捉えていると思いますか。

どのブランドも日本の市場を非常に魅力的なものとして捉えていると思います。日本の消費者は高価な商品を受け入れてくれるだけでなく、商品のクオリティを非常に重視されているように感じます。だからこそ、多くのブランドが日本というマーケットを重視し、店舗を出しているのだと思います。

 

最後に、今回の来日でやり残したことなどがあれば教えて下さい。

やっぱり次は、もっとショッピングをしたいですね(笑)。ファッション以外では、写真でしか見たことがない日本の庭園を実際に見てみたいです。あと、いつかジブリ美術館にも行ってみたいと思っています。やり残したことがたくさんあるので、また日本に来たいと思っています。

 

 

Interview by YUKI HARADA

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