Interview & Report

Kang Segoo

Kang Segoo カン・セゴー

HANWHA GALLERIA LUXURY HALL, womens fashion team, Buyer

2006年2月 高麗大学校文科大学日語日文学科 卒業
(2004年4月~2005年2月 日本へ交換留学を経験)
2008年4月~2012年8月「Lie Sang Bong(イ・サンボン)」のパリオフィスにて、海外営業マネージャーを務める
(2009年4月〜7月 東京で当ブランドのPRとセールスを行う)
2012年9月~ HANWHA GALLERIA LUXURY HALL(ハンファギャラリア ラグジュアリーホール)のレディスのバイヤーに就任

カン・セゴー

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2013-14 A/Wの開催に合わせ、韓国・ハンファギャラリア ラグジュアリーホールのバイヤー、Kang Segoo氏が、JETROの招聘により来日した。世界各地のラグジュアリーブランドや、トレンドを担うデザイナーズブランドをいち早く国内に紹介し、韓国ファッション界を牽引してきた百貨店に身を置き、日本とも強い繋がりを持つ彼が、日本のファッションに対する印象や、韓国ファッションシーンの状況、さらに日韓交流の未来などについて語ってくれた。

今回はJETRO招聘バイヤーとしての来日になりますが、日本にはよくいらっしゃるのですか?

大学生の時に、交換留学生として1年ほど日本に住んでいたことがあります。その後、社会人になってからも、東京に約3ヶ月間滞在していた時期がありました。当時は、韓国のトップブランドで、パリのファッション・ウィークでコレクションを発表し続けている「イ・サンボン」で働いていて、ブランドを海外に広げる仕事をしていました。

ハンファギャラリア外観

ハンファギャラリアに入社されたのはいつ頃なのですか?

2012年の9月です。バイヤーとしての仕事を始めたのはその時からなのですが、前職でも欧米の展示会などを回り、色んなブランドを見ていましたし、それまでブランド側の人間として働いてきて感じたことや学んできたことを、今度は逆の立場で活かしてみたいという思いがありました。現在は、ヨーロッパのラグジュアリーブランドなどを扱っているハンファギャラリアのEAST HALLで、レディスのバイイングを担当しています。

ハンファギャラリアを日本の読者の方たちに紹介して頂けますか?

パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークをはじめ世界各地のラグジュアリー/デザイナーズブランドを取り扱っている百貨店です。ふたつのHALLに分かれていて、EAST HALLはルイ・ヴィトン、グッチ、シャネル、エルメスなど世界的なラグジュアリーブランドを、WEST HALLは若いトレンドセッターに向けて、コンテンポラリーなインポートブランドと、韓国のブランドを7:3程度の割合で展開しています。それぞれのHALLには、各ブランドがブティックのように並び、また私たちの自主編集売り場もあります。ハンファギャラリアは、ブームになりそうなブランドをいち早く見つけて韓国国内に展開する百貨店として知られていて、そういう意味では韓国ファッション界におけるインキュベーターのような役割も担っていると思います。

EAST HALLとWEST HALLでは、お客さんの層や店内の雰囲気にどのような違いがありますか?

空間の構成自体はほとんど変わらないのですが、置かれているブランドが違うため、やはり印象はだいぶ違うと思います。EASTの方は、30代中盤以上の経済的にも余裕のあるお客様がほとんどなのですが、WESTの方は年齢層も若く、EASTより気軽に入れる雰囲気になっています。また、ギャラリアがあるアックジョン地区は、流行に敏感なファッション好きの人たちが集まる日本の表参道のようなエリアで、最近はガイドブックなどでも紹介されていることもあり、日本や中国からのお客様も結構いらっしゃいますね。

最近の韓国の人たちのファッションに対する意識についてはどう感じていますか?

以前は、新しいものに対してあまり心を開かないところがあったのですが、最近は海外から入ってくるものなどにも、かなりオープンマインドになっていると思います。若い人たちには、色んなファッションスタイルを吸収しながら、自分の個性を活かしていこうという姿勢が感じられますし、最近はインターネットで海外のコレクション情報などもすぐに得られるので、誰かに教えられるのではなく、自ら動いてリサーチをしている人が多いですね。まだ日本ほど大衆に浸透しているわけではないですが、ファッションに対する意識はかなり高まってきていると思いますし、これまでは数えるほどしかなかったセレクトショップなども増えてきていて、最近は韓国ブランドのみを取り扱うショップなども出てきています。

国内のファッションブランドやデザイナーも増えてきているのですか?

そうですね。最近は国や自治体などによるファッションへの支援も大きくなっていますし、新人デザイナーにとってはやりやすい状況になっていると思います。そういう背景もあって、海外に進出するデザイナーも増えています。また、ソウル ファッション・ウィークも毎回50~60ブランドが参加していますし、みんなが盛り上げようとがんばっていますね。

今回の来日が決まった時、どんなことを考えましたか?

東京のファッション・ウィークに来るのは今回が初めてなのですが、これまでずっと日本と韓国をつなげる架け橋のような役割を担いたいと思っていたので、今回のJETROの招待は凄くうれしかったですね。

日本のファッションについてどんなイメージをお持ちですか?

韓国などに比べると、デザインやスタイリング、配色などがとても大胆で、個性あふれるブランドが多いと思います。ファッションに対してとても寛容だと思いますし、それぞれの個性が尊重されていますよね。先ほど、韓国の人たちも徐々にオープンマインドになってきているという話をしましたが、日本ではそれがすでに熟成している気がします。

日本のファッションは、韓国でも受け入れられると思いますか?

例えば、ZUCCaなどのように、すでに韓国でも人気のあるブランドはいくつかあります。ただ、個性的なファッションが受け入れられにくい韓国で、日本のブランドを浸透させるには難しい面もあります。日本で当たり前のように受け入れられているデザインを自分たちも取り入れてみたいとは思うのですが、いざそれをそのまま韓国に持っていった時に、ちゃんとセールスにつながるか、という懸念があります。やはり、すでに世界的に評価を得ているブランドの方が安心できるのは事実です。バイヤーとしては、日本のローカルなデザインをそのまま取り入れるというよりは、グローバルを意識して作られているブランドやデザイナーを見つけ、それを韓国にも浸透させていくという考え方が大切なのかなと思っています。

その辺りのお話は、日本のブランドやデザイナーが海外に展開していく上でもひとつの課題になっています。

そうかもしれないですね。例えば、ジャケットやブラウスなどアイテム単位で見た時に、韓国の人たちにも受け入れられそうなものはたくさんあるのですが、ブランドの世界観というものもありますし、アイテムを単品で買い付けることはなかなか難しいんです。とはいえ、異なるアイテム、素材、パターンのものを一緒に買い付けても、それらはセールスにつながりにくい。その辺の難しさは感じています。ただ、韓国の人たちもこれからさらにオープンマインドになっていくことは間違いないと思いますし、自分としては、韓国と日本の間に様々なブランドを流通させていくような仕事をしていきたいと思っています。

そうした役割を果たしていくために具体的に取り組んでいることや、今後やっていきたいことなどがあれば教えてください。

例えば、パリやニューヨークで有名にならなくても、韓国で通用する日本のブランドはあるはずですし、逆に、ちょうどこのインタビューを受ける前にショーを見たばかりなのですが、FLEAMADONNAなど韓国本国よりも、むしろ日本で受け入れられているブランドもすでにあります。今後は、日本でブレイクしてから、韓国に逆輸入のような形で広がっていくようなこともあるでしょうし、自分としてもそういう提案はしていきたいなと思っています。実は、私の妻は日本人で、東京で長くファッションの仕事をしていたのですが、現在は韓国ブランドを日本にディストリビュートするエージェントをやっています。自分もギャラリアの中では日本のことをよく知っている人間ですし、妻とも力を合わせながら、自分たちの持っている日本との繋がりや人脈を活かしていけたらと思っています。

INTERVIEW by Yuki Harada

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