Interview & Report

ケイティ・シトラコーン

ケイティ・シトラコーン Kati Chitrakorn / The Business of Fashion Senior Reporter

AmazonFWT 2018 A/W 海外ゲストインタビュー vol. 1

バンコク生まれ、香港育ち。ロンドン・カレッジ・オブ・コミュニケーションでジャーナリズムの学士号を取得。ウィメンズ・ウェア・デイリー(WWD)やインターナショナル・ニューヨーク・タイムズを経て、ビジネス・オブ・ファッション(BoF)に参加。現在はシニア・レポーターとして、アジア太平洋地域にフォーカスして、ビジネス視点でファッション業界を取材している。最近では、中国のラグジュアリーブランド企業の買収やFosun, Shandong Ruyi and Yu Holdingsによる投資についてレポート。また、ビューティー分野での取材も精力的に行い、グローバルに広げた取材活動を行っている。

Kati Chitrakorn:

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The Business of Fashion:

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Amazon Fashion Week TOKYO 2018 A/W 会期中に、「The Business of Fashion」(以下BoF)のケイティ・シトラコーン氏が来日した。BoFは2007年にファウンダーのイムラン・アーメド氏が個人ブログとしてスタートし、現在ではファッションビジネスに携わる業界人から熱い注目を集めるメディアにまで成長。そこでSenior Reporterを務める彼女に、東京のファッション・ウィークに対する印象や東京ブランドの魅力と課題、彼女が専門とするアジアのビューティー市場についてなど、さまざまな話を伺った。

 

これまでも何度か来日されているそうですね。

はい。プライベートで3、4回ほど日本に来ています。仕事としては今回が初めてなので、来日が決まった時は非常にワクワクしました。日本のファッションはエキサイティングで以前から大好きでしたし、BoFとしてもアジアのビジネスに力を入れたいと考えている時期だったので、今回はとても良い機会が与えられたと感じています。

 

日本のファッションや東京の街の印象についてお聞かせください。

日本のショップやレストランでは、細部に対するこだわりや心の配り方が素晴らしく、カスタマーサービスが卓越した国だと感じています。また、東京のファッションに関しては、トレンドの影響を受け過ぎることなく、非常にユニークだと感じますし、世界中のファッション誌やクリエイターがインスパイアされていることもよく理解できます。一方で、これは世界中で起こっている現象ですが、ファストファションなどの台頭によって、以前に比べてフラットになりつつあるような印象も受けています。

 

Angelo Flaccavento

ショーのフロントロウで、AmazonFWTオフィシャルアンバサダーのハリー杉山さんと。

東京のファッション・ウィークをご覧になって、どんな感想をお持ちですか?

これまで私はロンドンのファッション・ウィークに足を運んでいたのですが、ロンドンよりも何が飛び出してくるかわからないワクワク感があり、とても楽しいですね。ロンドンのファッション・ウィークの顔ぶれはビッグメゾンが中心ですが、東京のファッション・ウィークでは、参加ブランドのみならず、ショーの音楽や演出、モデルなどにも多様性があり、他の都市のコレクションよりも少し先を進んでいるように感じます。

 

これまでに見たランウェイショーの中で印象に残っているブランドを教えて下さい。

最初に見た韓国人デザイナーによるFREIKNOCK(フライノック)は、適度にトレンドを取り入れたデザインや色使いが素晴らしく、またそれぞれの洋服の質も高かったので、印象に残っています。また、何年も前からフォローしているMame Kurogouchi(マメ)のコレクションは、伝統的なクラフトの要素を現代女性にフィットする形に昇華させていたことが素晴らしく、黒河内(真衣子)さんはこれからの日本を代表するにふさわしいデザイナーだと思います。また、AMBUSH®(アンブッシュ)も非常に良かったですね。コレクションの内容はもちろんですが、藤原ヒロシさんや水原希子さんらの姿も見られ、会場を訪れる人たちの存在というものもファッションショーの楽しみのひとつですよね。

 

ケイティさんが所属しているBoFについてもお話いただけますか?

BoFは2007年にスタートしました。2012年の資金調達によって貴重な人材を獲得することができ、現在につながるファッションメディアとしての体制が整いました。これまでのファッションメディアというのは、『VOGUE』などのようなBtoCの商業誌か、『WWD』のようなBtoBの業界紙に分けられていましたが、私たちはそのどちらにも偏らない、中間に位置するメディアとして、これまでフォーカスされていなかった裏方の存在も含め、ファッション業界がどのように成り立っているのかということを伝えていくことを信条にしています。読者の幅は、これからファッション業界で働こうとしている若い層から、より仕事を深めていこうとしているエグゼクティブ層まで非常に広くなっています。そのため、若い読者のためのキャリアや教育関連の無料記事から、業界についてより深く掘り下げた有料記事まで、あらゆる人に興味を持ってもらえるようなつくりになっています。

 

BoFにおけるケイティさんの役割や、いま注目しているトピックなどについて教えてください。

私は2015年からBoFに参加し、現在はエディトリアルチームの一員として、主にアジアのビューティーマーケットを担当しています。その中で、資生堂のような企業が国内外で展開ブランドを変えている背景などについて取材していますが、その国の文化やトレンドにもとづいたブランド戦略にフォーカスすることは非常に興味深いです。例えば、メイクひとつとっても欧米とアジアでは考え方が大きく異なり、日本人はメイクはなるべくナチュラルに見せようとする一方で、ヘアスタイルに対しては丁寧にカールをしたり時間をかけていますよね。一方、欧米ではメイクアップをつくり込む反面、ヘアにはあまり時間をかけません。こうした文化の違いにはとても興味がありますし、ファッションビジネスを考える上でも消費者を理解するということが最も重要なことだと考えています。

 

SNSなどを通じて、誰もが簡単に多くの情報を得られる時代において、ファッションメディアにはどんな役割が求められるとお考えですか?

ユニークな視点を持つことが非常に大切だと考えています。現在BoFでは有料記事も配信していますが、当初は有料記事など誰も読んでくれないのではないかという危惧が社内にもありました。しかし、いざ蓋を開けてみるとエグゼクティブ層を中心に有料記事が人気を博していて、他では読めない掘り下げた記事が求められていることを感じます。また、BoFでは最近、求人プラットフォームが人気を集めており、現在はまだ数が少ないですが、資格まで取ることができる教育コースや、各界の有識者を招き、新しいビジネスの可能性を探っていくカンファレンスなども好評で、記事配信以外の活動が今後はより重要になってくると考えています。

 

BoFにおける日本のファッションやビューティー関連の企業、ブランドに関する記事の反応についてはいかがでしょうか?

反応は非常に良いです。読者に人気のあるブランドも多いですし、恐らく日本の方たちが考えている以上にグローバルでの認知度はあるのではないでしょうか。一方で、海外から見ると日本はまだミステリアスな部分もあるので、さらに知ってもらえる余地はありますし、私たちとしても欧米マーケットのみならず、日本をはじめ、中国やインドなどアジアの市場にも注目していきたいと考えています。

 

日本のブランドが海外にアピールをしていく上では、どんなことが大切になるとお考えですか?

謙虚でおとなしい日本人は、海外のブランドに比べて控えめなところがあります。これだけ良いものをつくっているのですから、もう少し前に出ていくことがあっても良いのではないかと思います。海外のデザイナーはInstagramなどのSNSを熱心に活用していますが、それに比べて日本のデザイナーやブランドは少し消極的なように感じますし、認知度を高めるという点では、サカイのように上手なコラボレーションをもっとしていくべきだと思います。また、日本には、芸術性に重きを置き、商業的になることを嫌うデザイナーが少なくありません。その背景には、コマーシャルであることが良くないことだという既成概念があると思いますが、まずはそれを取り払う必要があると感じます。事実、マメやハイクといったブランドが、デザイン性とコマーシャル性を両立させた素晴らしいコレクションを発表しているわけですから。一方で、日本のブランドは、古いものと新しいものを融合させることに非常に長けているので、この強みは今後もぜひ伸ばしてほしいと思っています。

INTERVIEW by Yuki Harada

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