Interview & Report
Interview & Report

河村 康輔 Kosuke Kawamura

河村 康輔 Kosuke Kawamura コラージュアーティスト/グラフィックデザイナー/アートディレクター

Rakuten Fashion Week TOKYO 2020 S/S & 2020 A/W Key Visual Creator

グラフィックデザイナーとして 多数のアパレルブランドにグラフィックを提供、コラボレーションTシャツを制作している。他にもライブ、イベント等のフライヤー、DVD・CD のジャケット、書籍の装丁、広告等のデザイン、ディレクションを手掛ける。
コラージュアーティストとして、様々なアーティストとのコラボレーションや国内海外での個展、グループ展に多数参加。
代表的な仕事に、2012年「大友克洋GENGA展」メインビジュアル、グッズデザインを担当、2017年大友克洋氏と共作で「INSIDE BABEL」(ブリューゲル「バベルの塔」展)を制作、オランダ・ロッテルダムのボイマンス美術館に収蔵。2019年まで不定期で更新される渋谷PARCOアートウォール企画「AD 2019」で大友克洋氏とAKIRAを使用したコラージュ作品を発表。
2018年S/S adidas Originals and United Arrows & Sons collaborative collectionのグラフィックを担当。
2018年adidas Originals flagship store原宿3周年記念店舗デザイン。
2018年渋谷PARCOアートウォール企画「AD 2019」で2018年度グッドデザイン賞を受賞。
2019年『アディダスブランドコアストア 渋谷』とコラボレーションし、店内デザイン担当。
2019年PARCO MUSEUM(池袋)にて過去最大の個展を開催。
2019年Royale Projects (Los Angeles)にて「AKIRA ART WALL PROJECT × nana-nana KOSUKE KAWAMURA Exhibition」を開催。他多数。

数々のアパレルブランドへのグラフィック提供やコラボレーションTシャツの制作、書籍、DVD・CDジャケットのデザインなどを広く手がけている河村康輔氏が、Rakuten Fashion Week TOKYOにおいて、2シーズンにわたってキービジュアルの制作を担当した。 『AKIRA』の大友克洋氏とのコラボレーション作品などを通して、コラージュアーティストとして世界的に注目されている同氏に、クリエイターとしてのこれまでの歩みや、新たな表現にチャレンジしたキービジュアル制作の舞台裏などを聞いた。

河村さんがグラフィックデザインに興味を持ったきっかけを教えてください。

高校生の頃に、原宿のショップ「バウンティ・ハンター」のヒカルさんと、「ア・ベイシングエイプ」などのグラフィックを手がけていたスケシンさんの対談を雑誌で読んだんです。当時田舎の高校生だった自分からすると、自由なファッションをした大人たちが好きなことについて楽しそうに話をしているのがとてもかっこ良く見えて、自分もこんな仕事をしてみたいと思ったのが最初のきっかけです。

こどもの頃から何か表現をすることは好きだったのですか?

小4くらいまでは絵が描けないことにコンプレックスがあったのですが、5、6年の担任の先生が日本画家としても有名な人で、初めて自分の絵が表彰されたこともあり、そこからは絵が好きになりました。2年ほど前に実家に帰った時に6年生の頃に描いた地元・広島の原爆ドームの絵が出てきたのですが、完全に今のコラージュに通じる作風でした(笑)。当時からそういう絵を描いていたからか、小学校を卒業する時に担任の先生から絵を続けた方がいいと言われました。結局中学では絵は続けず、ずっと遊んでいましたが、コピー機を使って色々つくってはいました。

それが河村さんの原点になっているのですね。

はい。コラージュというのは、さまざまな素材を組み合わせて、あたかもそこに本当にあるかのような世界をつくれる手法だと思うのですが、そういう意味では今つくっている作品と当時つくっていたものは、自分の中でほぼ同じとも言えます。

コラージュの作品を本格的につくるようになったのはいつ頃からなのですか?

高校に入る前後からコラージュをするようになりましたが、卒業後に上京し、デザインの専門学校に通っている友人の家でMacやPhotoshopの存在を知ったことをきっかけにデジタルコラージュを始め、DVDパッケージのデザインなどを少しずつするようになりました。当時は、70年代前後の映画や新作のインディペンデント映画のパッケージの仕事が多かったのですが、予算が少なかったこともあり、映画のキャプチャ画像などを提供してもらい、そこにこちらで集めた素材をコラージュしてビジュアルをつくっていました。これらを見てくれていた知り合いのアーティストから声がかかり、グループ展に参加したことを皮切りに、ほぼ毎年のように個展などでも作品を発表するようになりました。

シュレッダーを使ったコラージュなど、アナログの手法はどんなきっかけで取り入れるようになったのですか?

以前から好きだったコラージュアーティストで、グリーン・デイのCDジャケットやシュプリームのTシャツなどにも作品が使われているウィンストン・スミス氏とのコラボレーションがきっかけです。彼はサンフランシスコ在住で、20代前半の頃に知り合ったのですが、ある時、コラボレーションをしようという話になり、半年後くらいに突然大きなダンボールが届いたんです。開けてみると、彼の作品の中でも最も有名なモチーフが大量に入っていて、これをベースに作品をつくってくれとのことでした。その作品が完成した時の感動や愛着というものがデジタルコラージュでつくった作品の比ではなかったんですね。また、デジタルよりも偶然性が入り込む余地が多かったことも面白くて、そこからどんどんアナログで作品をつくるようになりました。

最近はどんな仕事が多いのですか?

圧倒的に多いのは、洋服のアートワークですね。20代前半から裏原宿でお店を開いていた人たちに遊んでもらっていたこともあり、友人のブランドのテキスタイルやTシャツ、プロダクトなどに落とし込まれるグラフィックなどを長く手がけていました。また、最近はこれまで接点がなかったブランドからの仕事も増えていて、海外から依頼も多いですね。

今回のファッション・ウィークのようなシューティングはこれまであまりすることはなかったのですか?

そうですね。コラージュの素材を提供してもらってアートワークをつくることがほとんどなので、今回は考え方も全然違いましたね。僕に声をかけてくださったということは、おそらくコラージュ表現が求められているのだろうと思ったのですが、2シーズン継続してビジュアルをつくる機会があると聞いたので、せっかくなら一度はこれまでにない表現をしてみたいと考えました。そして、1回目の春夏シーズンは紙によるコラージュではなく、空間の中でコラージュをしていくような感覚でビジュアルをつくることにしたんです。

「空間の中のコラージュ」について、もう少し詳しく教えてください。

まず、このシーズンは、「Virtual / Reality」というテーマを設定しました。自分が子どもの頃は、2000年くらいにはタイムマシンが使われているような世界になっていると漠然と想像していましたが、実際にそんな未来は実現していないですよね。一方で、この20年の間に想像もできなかったようなテクノロジーもたくさん生まれていて、もはや進化の速度が速いのか遅いのか、そしてそこに人間は追いつけているのかがよくわからないなと。そこで、昔のビデオテープやブラウン管テレビを置いたり、自分が手がけた最新のモーション作品を古い技術を使ってプロジェクションしたり、時代感覚がわからなくなるようなものを空間にコラージュのように配置していくことで、テクノロジーの劇的な移り変わりと、人間の進化の速度のズレのようなものを表現しようと考えました。

一方で今シーズンのキービジュアルには、河村さんらしいアナログコラージュの手法が取り入れられていますね。

コンセプト重視だった前シーズンに対し、今回はシュレッダーを使ったコラージュの手法に主眼を置いていたので、フォトグラファーの佐野方美さんに、表現の手法と、東京というテーマを伝え、ビジュアルのアイデアを提案してもらうことにしました。佐野さんに宇宙的なビジュアルのイメージがあり、またシュレッダーによるコラージュが、特撮などでタイムスリップする際に画面を横断するノイズを思わせるところがあったので、今回は「Space (Time) travel」というテーマになりました。2シーズンともモデルさん以外は同じ制作スタッフでしたが、以前から面識があった佐野さんやスタイリストの小山田孝司さんをはじめ、自分が表現したいものをすぐに汲み取ってくれるチームだったので、とても気持ち良く仕事が進められました。

東京というワードも出ましたが、河村さんにとって東京はどんなイメージがある場所ですか?

高校生になって初めて東京に来た時に色々な場所に行ったのですが、最も印象的だったのが、渋谷から原宿にかけて続くキャットストリートの夜の風景でした。20時くらいにショップが閉まり、そこからわずか1時間くらいで人気がなくなり、街頭だけが光っている感じがとても好きだったんです。今も夜から明け方にかけてのキャットストリートが東京で最も好きな場所で、バーチャルな自然の中にいるような感覚になるんです。地元に帰れば、リアルな自然が今も多く残っていますが、自分にとっては東京のバーチャルな自然の方が心地良く、このイメージを表現できたらいいなという思いも少なからずありました。

2シーズンにわたるキービジュアルの制作はどんな経験になりましたか?

僕がファッション・ウィークのキービジュアルを担当することが決まった時に、自分のことを知ってくれている人たちの多くはやはりコラージュによる表現を想像したようで、最初の2020 S/Sのキービジュアルが出た後は驚きの声をよく耳にしました。自分としてもこれまでにトライしたことがない表現を通して広がった部分がありましたし、その後に自分らしいコラージュの表現も見せることができ、2回の機会をうまく活かせたかなと思っています。

最後に、今後トライしてみたい表現などがあればお聞かせください。

昔から、自分がつくったコラージュ作品を立体化してみたいという思いがあるんです。造形のプロの方などとタッグを組んで作品を立体化することで、「この人の横顔はどうなっているのか?」「パーツ同士の距離感はどうなのか?」といった平面のコラージュではわからない部分を見せられたら面白いなと考えています。

毎シーズン数着はオーダーしているという「フィンガリン」のアイテム。着用しない時はバックパックのように背負えるアウターや顔が半分以上隠れる防寒に優れたアウター、拘束感がなく穿きやすいボンデージパンツなど、遊び心があるだけでなく機能性が高いこともお気に入りとのこと。

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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