Interview & Report

ローラ・ラーバレスティア

ローラ・ラーバレスティア Laura Larbalestier

AmazonFWT 2019 A/W 海外ゲストインタビュー vol.2

Harvey Nichols Group Fashion Buying Director

1831年創業で、香港、ドバイなど国外にも複数店舗を持つイギリスの老舗百貨店、ハーヴェイ・ニコルズ。海外百貨店の中でもファッションカテゴリーの品揃えに定評があり、世界中のセレブを顧客に抱えている。今回、ハーヴェイ・ニコルズのバイイング責任者、ローラ・ローラバレスティア氏がJETROの招聘で来日し、Amazon Fashion Week TOKYO 2019 A/Wの視察や日本ブランドのアトリエ訪問、商談を行った。
グローバルな顧客層に向けて最先端のファッションを提案し続けるローラ氏に、ハーヴェイ・ニコルズについて、日本ブランド、ファッション・ウィークについて聞いた。

ローラさんは初来日ということですが、初めてご覧になる東京の街や人々のファッションはいかがですか?

日本、特に東京はクリエイションにインスピレーションを与えてくれる場所というイメージで、訪れてみたい場所の一つでしたので、ご招待いただき大変感謝しています。
来日してまず強く感じたのは、ヨーロッパとは文化が全く異なるという点です。それから消費の仕方も違いますね。街の人々はファッションにとても気を遣っているように見えますし、ファッションに対して、とても丁寧なアティチュードを保っているように思います。トレンドよりも、自己表現を優先し、パーソナルなものとしてファッションを纏っているように感じました。

今回の来日で足を運んだショップやスポットを教えてください。

SUPER A MARKET、BEAMS、UNITED ARROWS、DESPERADO、Saturdays NYC、OKURA、HOLLYWOOD RANCH MARKET、代官山蔦屋書店など、代官山と青山を中心にたくさんのショップを回りました。これからsacaiの青山のショップと百貨店を回る予定です。あと、ビューティー系ですがukaには必ず行きたいと思っています。
今回訪れたショップでは、同じ商品やブランドが陳列されていても、見せ方のテイストやストーリーが異なっていて、それぞれに美しいプレゼンテーションがあり、日本のショップはどこもディスプレイが上手だなと感じました。

 

来日に向けて、どのような情報収集をされましたか?

インスタグラムや知人からのリコメンドなど、とにかくたくさん情報を集めて、その中から見たいブランドやショップについてリサーチをしました。しかし、実際に街を歩くと見たいものが変わっていき、予定も変わってしまいましたが(笑)。海外バイヤーは、もっと日本のファッションシーンや消費行動をチェックすべきと強く感じましたね。

初めてご覧になったAmazon Fashion Week TOKYOは、他都市のファッション・ウィークと比較していかがでしたか?

東京のファッション・ウィークは、スケジュール通りにオンタイムで進行する、とても組織的で整備されたファッション・ウィークですね。そして、世界市場を視野に入れているブランド、日本市場向けのブランドと、展開されるブランドのミックス感が特徴的でした。また、印象に残ったのは、ブランドのものづくりに対する姿勢や、ディテールへのこだわりですね。ファッション・ウィークとして、ブランドのプレゼンテーションをサポートする体制にも感銘を受けました。物足りない点としては、ショー会場としてロケーションのバリエーションがもっとあると良いかなと思いました。

今回ご覧になったショーで、気になったブランドはありましたか?

HYKE(ハイク)Children of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)が良かったと思います。HYKEはリアルクローズなのにとてもエレガントですね。確固たる個性があり、着ている人を見たら、HYKEだと分かります。ヨーロッパでも共感を得られ、マーケットに落とし込みやすいと感じました。ヨーロッパですでに独自のポジションを築いているsacaiに近い存在感があるのではないでしょうか。Children of the discordanceはとにかく力強く、日本のメンズブランドらしい、クールでモダンなプレゼンテーションでした。ショーを見に来ている人たちの顔ぶれが様々で、それがブランドとしての多様性やミックス感覚につながっているのかなと興味深く感じました。

ヨーロッパ市場への進出を考えた時、日本ブランドの強みと課題はどこにあると思いますか?

日本ブランドの強みは「個性」にあると思います。創造的でありながらウェアラブル、リアルクローズであることですね。課題はヨーロッパにおいて価格が高額になってしまうことと、こちら側が要求するデリバリー時期に間に合わせてくれるかという点です。Harvey Nicholsでは、現在は日本ブランドの取り扱いはありませんが、常に日本ブランドを探しています。今回ショールームで見たBIGOTREやDAIRIKUには可能性を感じているところです。

Harvey Nicholsは世界中に店舗がありますが、バイイングシステムや各店舗の状況について教えてください。

Harvey Nicholsのバイイングは46名のチームで行っていて、ウィメンズ、メンズ、アクセサリーで700~800ブランドを扱っています。私たちはイギリス国内だけでなく、香港、ドバイなど、世界中に多くのストアを抱えていて、幅広いお客さまにご利用いただいています。ロンドンの店舗でも、ドメスティックカスタマーと世界中から訪れる観光客のお客さまがいらっしゃいますし、オンラインストアにおいても、イギリス国内のお客さまが6割、その他エリアのお客さまが4割を占めています。そうした幅広い客層に対して、季節データと各バイヤーの勘によってバイイングし、店舗内でキュレーションしています。現在メンズの売上が好調で、BALENCIAGAのようなハイエンドメゾンからデザイナーズブランド、スニーカーまで売れています。

 

ここ数年で、消費者のモノの選び方や買い方に何か変化を感じていますか?

人々は消費に対して、とても慎重で、注意深くなっていると思います。その結果、あまりモノを買わなくなってきていますよね。ロンドンでいうと、ファッションのカジュアル化が顕著です。ゴージャスさは抑えられて、リアルクローズとして日常的に着用できるファッションであることが求められています。また、流行ではなく、ブランドの個性やオリジナリティを重視する人々が増えています。日本ブランドで挙げればISSEY MIYAKEやJUNYA WATANABEがヨーロッパで人気を集めていますが、2ブランドとも非常に個性があり、ひと目でそのブランドだと分かるアイデンティティがあります。モノを買わない時代でも、そうした強い個性を持ったブランドは幅広い客層にリーチするのではないかと思います。

Interview by Tomoko Kawasaki
Interpretation by Aiko Osaki

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