Interview & Report

マリア・レモス

マリア・レモス Maria Lemos

AmazonFWT 2019 A/W 海外ゲストインタビュー vol.3

Rainbowwave Showroom Owner

パリを拠点に、日本ブランドを含め、世界各国の人気ブランドのショールーム運営とプレス業務を行うRainbowwave。日本文化やブランドにも造詣が深く、大の親日家であるRainbowwaveオーナー、マリア・レモス氏がAmazon Fashion Week TOKYO 2019 A/Wの会期に合わせて来日した。
ショールームオーナーとして海外市場を熟知した上で、日本ブランドのファンだというマリア氏に、Rainbowwaveについて、日本ブランド、ファッション・ウィークについて聞いた。

マリアさんは日本好きで、来日経験も豊富とお伺いしました。今回はJETROの招聘で来日されましたが、前回東京にいらした時と何か変化は感じましたか?

まず、大好きな東京にご招待くださったJETROに感謝します。このような機会をいただき、とても嬉しいです!
来日は今回で12回目になると思います。なぜ頻繁に日本に来ていたかと言うと、ロンドンで運営しているセレクトショップmouki mouのバイイングをしていたためで、当時は年2回来日していました。今回は2年ぶりの来日になりますが、前回よりもモダンで近代的な印象を強く受けました。また、アジアからの観光客が増えて、彼ら向けのバイイングやサービスが増えているように感じます。世界中がコネクテッドになり、便利になっていく一方で、いろいろなものを失くしている時代なので、変わらない伝統的なもの、文化、クラフトマンシップ、日本らしさに触れるために、今回は直島や沖縄のような地方にも行きたいと思っています。

今回のリサーチ先を教えてください。

弊社で取り扱っているブランドと取引のあるバーニーズニューヨーク、日本橋高島屋、UNITED ARROWS、GARDEN、吾亦紅(ワレモコウ)、あとRINKANというセカンドハンドショップにも行きました。RINKANでは10年以内に発売されたアイテムを取り扱っていて、1階はメゾンブランド、2階はSUPREMEのみが並んでいました。2階にはエクスクルーシブなアイテムが揃い、1階のメゾンブランドよりも高く値づけされていて、若い人たちは発売当時の3倍くらいの値段でそれらを買っていました。若者にとってのラグジュアリー観が垣間見られて面白いショップです。また、個人的には、キュレーションもプレゼンテーションも素晴らしいARTS&SCIENCEがお気に入りです。代官山の新しいお店にも早く行きたいですね!

東京のファッション・ウィークは初めてとのことですが、実際に体験されていかがですか?

海外のファッション・ウィークとは違って、組織的でスムースなサービスが行き届いていて、ショーがスケジュール通りオンタイムで始まるという点は素晴らしいと思います。ただ、気になった点が2つあって、まず、ISSEY MIYAKEやCOMME des GARCONS、sacaiのような海外でも知られているビッグブランドが不在ということです。若い才能のあるブランドが多いようですが、ビッグブランドと若手のバランスはファッション・ウィークとして重要ではないかと思います。もう一つは、開催時期の問題です。欧米都市のファッション・ウィークを経て、バイヤーたちが皆疲れてしまっているこの時期の開催は、タイミングがあまり良くないように感じます。ソウルファッション・ウィークとバッティングするのは避けた方が良いかもしれません。東京のファッション・ウィークはメンズのクリエイションが強い印象があるので、メンズコレクションが終わった時期が良いのかもしれませんね。バイヤーたちはパリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンのファッション・ウィークへの出張日数をカットしている状況のため、バイヤーに来てもらうにはタイミングがとても大切です。

マリア・レモス

海外ゲストの方々。一番左がマリアさん

今回ご覧になったショーで、印象に残っているものを教えてください。

最も気に入ったショーはSHUSHU/TONG(シュシュ/トング)です。HYKE(ハイク)もビジネス戦略的な見せ方が上手で、ブランド側が伝えたいことが明確に伝わってきました。Children of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)ANREALAGE(アンリアレイジ)も良かったと思います。そして、弊社で取り扱っているKOCHÉ(コーシェ)は、言うまでもなくとても素晴らしかったです。

ショールームを運営されているマリアさんの視点で、海外市場への進出を考えた場合に、日本ブランドの強み、逆に課題はどこにあると思いますか?

日本ブランドの強みは、クリエイティビティと世界でも飛び抜けている品質にあると思います。縫製技術とテキスタイルは本当に素晴らしいですね。日本ではインポート生地の方が優れているイメージがあるからなのか、インポート生地をわざわざ使用しているブランドもあるようですが、日本の生地を使った方がクオリティもプライスも満足いくものに仕上がると思います。
一方で、日本ブランドの弱みは、価格とブランド側が提供できるデリバリー時期が海外市場での販売時期と合致していないことではないでしょうか。

Rainbowwaveについてご紹介いただけますか?

弊社はショールームとPRの両側面でブランドをサポートしている会社です。全体で50名程のスタッフが在籍しており、特にジュエリー部門が大きいです。以前ステディスタディに所属していた日本ブランド担当の日本人スタッフもいますよ。
弊社が取り扱うブランドを決める際には、第一印象で得られたクリエイティビティに対するフィーリングをまず重視します。ブランドの提案がどのように心に響くかが重要です。次に価格です。どんなに素晴らしいクリエイションでも、価格が見合わない場合は取り扱うこと自体がやはり難しいです。最後にMDです。商品を並べた時にストーリーが完結しているかどうか、品揃えの面で市場にマッチしているかという点です。若いデザイナーでは、このMDの観点が不足していることが多いですね。また、若いデザイナーやブランドに限って言うと、海外市場へ進出する際のマーケティング戦略やPRを行う資金や体制の不足、シッピングやデリバリーを確実に行う機能不足など、課題が多い現状が続いており、とても残念に思うことがあります。

日本ブランドの取り扱い状況についても教えていただけますか?

現在弊社で取り扱っている日本ブランドはoomaru seisakusho 2 inc のOVERCOAT(本社はNYですが)、ジュエリーブランドのSHIHARA、今季からスタートしたhumの3ブランドです。OVERCOATは売上が倍増していますし、SHIHARAもバーニーズニューヨークやドーバーストリートマーケットなど、取扱店が安定してきています。ジュエリーの場合、市場に展開しすぎないことが重要なので出店計画によるコントールが大切です。弊社はショールームをパリ、ロンドン、ニューヨークに構えており、それぞれの市場に応じてブランドの見せ方を変えています。パリはショールームとして最も重要な場所であるため、一番多くのブランドを見せています。ロンドンはNET-A-PORTERやMATCHESFASHIONなどECビジネスの拠点であるので、オンラインセールスに適したブランドを展開します。ニューヨークは例えばデニムが強いなど、他市場とは異なる動きを見せるアメリカ市場に向けて、RE /DONEを見せるなど、ニーズに合わせてブランドを編集して見せるようにしています。私たちは取り扱いブランドの売上を伸ばすことを使命としているので、カテゴリー、ブランド、市場に合わせて、最適な戦略を組み立てています。

 

ブランドを市場に拡げていくためには、消費者の動向もウォッチされていると思いますが、最近の消費者のモノの選び方に何か変化を感じていますか?

世の中は、大量消費の時代ではなくなりました。クオリティが求められる時代です。そうした時に、海外市場から高品質と同義とされている“MADE IN JAPAN”はとても強みになると思います。だからこそ、使い方がグローバル基準であったり、現代的になったとしても、日本らしいクラフトマンシップを失くしてはいけません。
また、私自身、クリエイションのインスピレーションを旅行から得ることが多いのですが、最近訪れたヨルダンがとても興味深い場所でした。自国の人口よりも多い避難民を喜んで受け入れる国民の姿勢に感銘を受けました。4年前にスタートしたPIPPA SMALLというジュエリーブランドがあります。このブランドは、イギリス王室のヘンリー王子の妻メーガン妃をはじめ多くのセレブから人気を集める美しいブランドですが、ヨルダンの避難民に仕事を与えるためにボランティアで彼らにトレーニングし、ものづくりを担ってもらっています。こうした社会的な意義に関しても、人々の関心は今後より高まっていくと思っています。

Interview by Tomoko Kawasaki
Interpretation by Aiko Osaki

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