Interview & Report

Souta Yamaguchi

Souta Yamaguchi 山口 壮大

ミキリハッシン代表 / スタイリスト

1982年愛知県常滑市生まれ。文化服装学院卒業。2006年3月、下北沢にある戦前の雑居ビルにミキリハッシンをオープンする。2009年1月、原宿キャットストリートへ移転し、現在までハッシン中。また、2006年よりスタイリストとして活動開始。カルチャー、モード、ストリート系のマガジン、広告、CD、PVなどでスタイリングを手掛ける。

特定のジャンルやスタイルにこだわらず、国内の新進ブランドとヴィンテージウェアを独自の視点で紹介する原宿の人気セレクトショップ「ミキリハッシン」。同店を手がける山口 壮大氏はスタイリストとしても活動し、さらに今年5月には、渋谷パルコにオープンした「ぴゃるこ」のディレクターにも抜擢された。”ウルトラテクノロジスト集団” チームラボによる内装や、週末に開催されるイベントやスクールなど、セレクトショップの定義をゆるがす実験的な試みで、ますます注目を集めている山口氏にインタビューを行った。

ミキリハッシンを始めた経緯を教えてください。

2005年まで3年間、下北沢にあった「NORTH」という古着屋で働いていました。このお店がやむなく閉店を迎えることになったのですが、慕ってくれていたたくさんのお客さん達と、また一緒に集まれるような場所を作りたいと常々思っていました。そんな折、下北沢を自転車で走っている時に、空き物件の張り紙を見て、その場で手続きをしたんです(笑)。その後、古着を買い付けにアメリカに行きました。4畳くらいのスペースに、僕らの周りの面白い人たちが作った1点ものの洋服と古着を、ごちゃまぜに置いていました。

当時から古着とデザイナーが作った洋服を両方置いていたのですか?

はい。僕が古着を好きな理由とも繋がる話なんですけど、その服をもともとどういう人がどんな着方をしていたかといったストーリーの部分に興味があるんです。単純に年代や希少価値といった、誰もが分かるような価値ではない。デザイナーが作っている洋服も同じです。単なるモノではなく、デザイナー本人の個性や思想が表れる物として捉えている。セレクトする時も作った人のアイデンティティや、共感できる部分を、コンセプトから縫製まで、すごく見るようにしています。

古着にしてもデザイナーズ・ブランドにしても、その服に関わる人の思想や物語を大切にされているんですね。

そうですね。今はイメージや世界観を高めて洋服を売る時代ではなくなっていて、ストーリーの方が大切になってきていると思います。ファッションを判断する基準が、洋服自体のカッコ良さから、自分がカッコ良いと思う人が着たり、作ったりしているかどうかというところに移ってきている気がします。僕自身そういう形でファッションやカルチャーに触れてきたし、よく知らない海外のメゾンが作った洋服をカッコ良いと言われても、あまりピンと来ないんです。

2009年からショップを原宿に移転されましたが、それによって変化はありましたか?

銭湯帰りの人なんかも来ていた下北時代と違って、原宿にいるのは皆ファッションに触れに来ている人たちなので、僕らもファッションの体現者として、だいぶ意識を持つようになりました。あとは、移転してから気づいたことでもあるんですが、基本的に僕らは最初からショップの方向性を決め過ぎないようにしています。それを先に決めてしまうと、その場で起きている現象を受け入れられなくなってしまうから。ファッションを創っているのは僕らではなく、あくまでもお客さん。お客さんから良いブランドを教えてもらうこともあるし、お客さんの反応に合わせて少しずつお店を変えていくというスタンスでやっています。

ミキリハッシン店内

ショップとお客さんとの関係性がとてもフラットなんですね。

ショップとお客さんは共に歩んでいくものと思っています。もちろん、自分たちなりにこういうファッションが良いんじゃないかという提案はしますが、それに対するお客さんの反応を参考にしたり、お互いのやり取りを通して成長しているところがあります。うちは顧客制度がしっかりしていて、例えば一番上の「ブラックカード会員」になると、お店に来た日数に応じて割引率が上がったりします。単純に毎日お客さんの顔が見たいという想いもあるけど、お客さんが毎日足を運ぶ「言い訳」になるじゃないですか。そうやってなるべく足を運ぶ理由を作るように心掛けています。また、取り扱っているブランドのデザイナーさんとお客さんが直接交流出来るイベントも月1回程度行っています。

ミキリハッシンがある原宿は、山口さんにとってどんな街ですか?

憧れの街ですね。90年代後半はまだホコ天もあったし、インディペンデントな動きから面白いものが生まれるんじゃないかという期待感があったと思います。今も若い世代が少しずつショップを始めたりはしていますが、当時に比べるとなかなか難しいところがあると感じています。もっとファッションに力があればと思うんですが、今は時代に対してファッションがすごく遅れてしまっていると思います。そこにもっと不満や危機感を持った方がいいし、街にいる若い世代にも、自分たちが原宿を作っているんだ、ファッションを背負っているんだという自覚を持って欲しいなと思います。お洒落な人が格好良くないと、悲しいじゃないですか。街とショップの関係というのはずっと考えていることで、まだやれることはたくさんあると思います。自分たちも意識的に行動していきたいですね。

渋谷パルコにオープンした「ぴゃるこ」についても話を聞かせてください。

パルコの方からお誘いを頂いたのですが、最初は丁重にお断りをしたんです(笑)。もともと僕らは、ファッションビルや百貨店とは違うことをやりたいというところからスタートしているので、単純にパルコという場所で何をやればいいかわからなかった。それでも何度も熱心にお誘い頂いたので、以前から興味があったチームラボと一緒にやりたいことなど、こちらの条件をパルコ側に提案したところ、折り合いをつけてもらえたので、やることになりました。「ぴゃるこ」というネーミングも、パルコという存在に対して批評的な立ち位置のショップがパルコの中にあること自体が格好良いという想いで提案しました。全然批評させてもらえませんけどね(苦笑)。せっかくこういうショップを開いたので、もっと連動する心意気を持ってもらえたら嬉しいですね。

ぴゃるこ店内

パルコという場所でショップを運営する上で、どんなことを意識しましたか?

ミキリハッシンとは違って、ここには僕らのことを全く知らない人たちも不意に入ってくるわけですよね。だから極端な話、赤ちゃんからお年寄りまで、あらゆる人にプレゼンテーションできないとダメだなと思っています。もともと僕は、難しいことを難しいやり方でプレゼンテーションされてもあまり共感できないんです。日常にありふれているものがベースにあって、それを独自の形でファッションに昇華できているものにこそ共感できるので、「ぴゃるこ」でも身近にあるけど誰もがその美しさに気づいていないようなものを、しっかりアウトプットしていきたいと考えています。おもちゃや駄菓子を置いているのも同じ理由で、例えば、ゴム鉄砲に特別な遊び方なんてないですよね。でも、それがおもちゃになり得るのは、買った人それぞれが工夫して遊ぶことができるから。それはファッションにも言えることで、ただ服があるだけでは面白くなくて、それを着てファッションにできるからカッコ良いと思うんです。

今後はどんな展開を考えていますか?

デジタルとアナログの結びつけ方など、この場所ならではの発信の仕方を模索していきたいですね。例えば、店の入り口にある、チームラボプリクラ。撮影する人は記念撮影感覚で楽しめるし、見ている人はファッションスナップ感覚で楽しめる。その場でぱりゅこのサイトに上がるので、マメにチェックしてくれている人は、今、誰がお店に来ているのか知ることが出来る。
また、土曜日に「ここのがっこう」というファッションスクールを、日曜日にイベントやワークショップをやっているのですが、なるべく映像に残し、翌週店で流したりしています。普段慣れ親しんでいるはずの場所が、目を離している隙に全然違うことをやっている。デジタルを通してその痕跡を公開することで、もっとお店に興味を持ってもらいたいですね。もっと面白いことが出来るので、もっと楽しんでもらいたいです。

話は変わりますが、東京のファッション・ウィークについて、何かご意見や感想があれば教えてください。

誰に向けて、何のために見せていくのかというところを、もう少し明確にすると良いかもしれません。僕らもショップをやっている中で、ブランドのための業界に向けたアプローチと、お客さんのためのストリートに向けたアプローチという、ふたつの側面を意識していますが、分散して中途半端になってしまうくらいなら、どちらかに絞った方が成立すると思います。資金的に難しい部分もあるかと思いますが、今はお金がないということが前提になっている時代でもあるので、その中でいかにプレゼンテーションしていくかということは、ブランド側も含めてもっと考えていかないといけないんじゃないでしょうか。

もしショップという立場でファッション・ウィークに関わるとしたら、何かやりたいことはありますか?

今はブランドよりもショップの方が発信していきやすい時代だと思います。同じブランドで全身コーディネートすることはほとんどないですし、ブランドが作ったルックが丸ごとセレクトショップに入ることもあまりないですよね。だからこそ、ショップ主導でスタイルを見せていくというやり方がいいんじゃないかなと。例えば、セレクトショップごとにテーマを掲げて、各ブランドに別注した洋服を組み合わせてショーをするのもいいかもしれない。別注が単に売るための擦り合わせでは無く、ショップの考え方や、ブランドに対する捉え方を知る良い機会にもなると思います。まぁどういう形であっても、一般のお客さんにも楽しんでもらえるやり方を考えてみたいですね。

INTERVIEW by Yuki Harada

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