Interview & Report

N/E/W/S/T/D NEW STANDARD GLOBAL EXHIBITION

N/E/W/S/T/D NEW STANDARD GLOBAL EXHIBITION KIRA

N/E/W/S/T/D NEW STANDARD GLOBAL EXHIBITION

「N/E/W/S/T/D」GLOBAL EXHIBITIONとは、トレードショー、インスタレーション、アートエキシビジョンが一体となった複合型のエキシビジョン。テーマは『NEW STANDARD』。 渋谷ヒカリエを舞台に“新しいカタチ“のエキシビジョンを通して、総勢70組以上の豪華なブランド、アーティストと共に時代の新しい価値を検証しながら『NEW STANDARD』を東京から世界へ向けて発信する。

日時 2013年3月20日(水・祝)~22日(金)
3月20日(水・祝) 15:00~21:00
3月21日(木) 12:00~20:00
3月22日(金) 12:00~20:00
※当日招待状をお持ちでない場合、名刺をご提示ください。
会場:渋谷ヒカリエ 9F ヒカリエホール ホール B 及び
8F COURT、CUBE

Mercedes Benz Fashion Week TOKYO 2013-14 A/Wの会期中となる3月20日~22日に、渋谷ヒカリエでトレードショー、インスタレーション、作品展示などが一体となった複合型エキシビジョン「N/E/W/S/T/D GLOBAL EXHIBITION」が開催される。ファッション、アート、音楽など、ジャンルや世代を超えた日本の多様なクリエイティブを、「NEW STANDARD」というキーワードでつなぐ前例のない試みを、様々な表現者たちと創り上げていったGYPSY THREE ORCHESTRAのKIRA氏に、エキシビジョンの舞台裏や見どころなどについて伺った。

「N/E/W/S/T/D GLOBAL EXHIBITION」の企画を進めていくにあたり、ポイントになったことを教えてください。

まず企画の前提として、日本のファッションを世界に向けて発信し、具体的なビジネスや流通にもつなげていくという目的がありました。ファッション・ウィーク中に開催される展示会をまわることは、メディアやバイヤーさんのルーティンワークになっていて、色んな場所に足を運ぶことに疲れているところがあると思うんですね。だからこそ、単に新作を並べた発表会にするのではなく、実際に来て触れることで何かが心に残ったり、未来につながるようなものを持ち帰ってもらえる場にしたかった。そこで、DJやアーティスト、建築家などの方も巻き込みながら、日本で活動するクリエイターの多様な表現をひとつのテーブルに乗せてお見せするということを、僕らGYPSY THREE ORCHESTRAが媒介者となり、色んな方々と相談しながら考えていきました。

エキシビジョンのタイトルにもなっている「NEW STANDARD」という言葉には、どんな思いが込められているのですか?

震災以降、従来のシステムとは違ったやり方でインディペンデントな活動をする人たちが増えてきていて、そういう新しい動きをしている人たちと一緒に新しいことをやれたらいいなと。例えば、今回のパートナーでもあるblock.fmさんやFRANKさんなどにしても、従来のネットラジオやメディアという枠組みだけでは括れない活動をしていますし、こうしたカタチとしてうまく言葉では説明ができないけれど、何か新しさや面白さを感じるチームや人たちというのが、世代を問わずこれからのスタンダードになってくるんじゃないかと考え、今回はそういう人たちにお声がけをさせて頂きました。

エキシビジョン会場ではどんなコンテンツが展開されるのですか?

会場になる渋谷ヒカリエの8Fは主にギャラリースペースになっていて、アーティストの作品展示や、「共有」という価値観をカタチに落とし込んだ「COMMON SLEEVE」の展示があり、また参加ブランドによるインスタレーションやトークセッションなども開催されます。9Fでは、各ブランドの展示ブースの他に、秋葉原や中野ブロードウェイなどでよく目にするアクリルケースの中にフィギュアなどを入れて展示販売するフォーマットを持ち込んだ「N/E/W/S/T/D-BOX」という展示もあり、ここではファッション、音楽、アート業界の方たちに、それぞれの価値を表現してもらう予定です。9Fは一般の方は入れませんが、「N/E/W/S/T/D-BOX」はオンライン上でも公開する予定ですし、会場やセレクトショップの店頭ではスペシャルブックを配布したり、Webでは出展ブランドのルック写真、オープニングパーティーやワークショップの生中継、イベントのアーカイブなども残していく予定で、様々な人が場所や時間を越えて参加できるような設計も意識しました。

会場の空間構成についてもお話を聞かせてください。

今回は、OSKA&PARTNERSさんという日本の素材などにも精通した建築家の方たちと、日本の祭りをテーマに、いわゆる合同展示会とは違うブースレイアウトを組ませてもらっています。日本のお祭りに欠かせないやぐらを作り、その上に太鼓ではなくDJブースを設置したり、日本の地形を意識できるような空間演出をしたりと、日本の個性を新しい形で表現していくことを心がけました。

日本のオリジナリティという部分にもこだわりがありそうですね。

今回の企画を始めるにあたって、アジア各国の合同展示会をいろいろと調べてみたのですが、どこも欧米の模倣の域から出られていないと感じました。同じことをやってもしかたないですし、どこかにオリジナリティを持たせようとした時に、やはり日本という国の歴史や個性が大切なんじゃないかという思いに至りました。また、今回色んな業界の方たちとセッションをしていくなかで、これまでの日本の歴史や循環システムというものを改めて見直し、従来とは異なる日本のアイデンティティやシステムを作りながら、世界にリンクしていこうとする意識を強く感じて、業界は違ってもベクトルの方向性は同じなんだなということを強く感じました。

これまでの日本のブランドや業界における海外に向けた取り組みについて、何か感じていたことはありますか?

日本市場が盛り上がっていたこれまでは、海外に出なくてもやれていたと思うのですが、経済が急速に冷え込むなかで現状は厳しくなっていますよね。でも、そこで急に外に出ろと言われても、その準備がブランド側にもメディア側にもできていない。ソフトとしてはガラパゴス化した状況から生まれるオリジナルなクリエイティブとして評価される例もありますが、実際にメイド・イン・ジャパンを海外で売っていくために必要な流通や関税などについての知識を得られる場所も少ないですし、海外でそれらを受け止めて展開してくれる存在も確立されていないのが現状だと感じています。

海外に発信していくための意識やノウハウがブランド側にも求められる時代になっているようですね。

いまはショーに限らず、映像や写真、空間などをうまく使っていけば、世界中に拡散できる環境にはなっているので、今回のエキシビジョンについても、ブランドの世界観が伝わるブース作りというものを意識してもらいながら進めていきました。また、これはブランド側の話ではないですが、合同展示会というのは、多くのバイヤーやブランドが一箇所に集まれる良いツールであるにも関わらず、いままでそれが育っていなかったことも問題だと思っています。これから自分たちがそういう場をしっかり作っていけると、ブランド側にとっても、クリエイティブに集中する時間がより多く取れるようになるんじゃないかという考えもありました。

そうした橋渡し的な役割を担う存在も、今後より重要になってきそうですね。

面白いことをやっているブランドがなかなか外に出ていけないのも、翻訳者になれる人が圧倒的に不足しているという現状によるところが大きいですし、自分個人としても、凄く面白いことをやっているのにもったいないなという思いが原動力になっています。例えば、いまは海外だけを相手にしてやっていけるようになった日本のブランドも出てきていますが、そういうブランドは海外への攻め込み方というのを経験を通してわかっているので、凄く腰が軽いんですね。だから、今回のような試みの中から、シンデレラ・ストーリー的なものが生まれることで、多くのブランドに「自分たちもできるはずだ」と思ってもらえるようになるといいなと思っているんです。

今回のエキシビジョンは、参加するブランド側にとっても大きな刺激になりそうですね。

いまファッション業界の外では凄く面白いことがたくさん起こっていて、実はそこに問題を解決するヒントもたくさんあると思っています。そもそもファッションというのは、時代の最先端をしっかりライフスタイルに落としこんで提案していくものだと思うんですね。だから、洋服、音楽、テクノロジー、飲食などライフスタイル全般を体感できるものをファッションと呼んでいいんじゃないかと。数年前、ファッション業界に閉塞感が出てきた頃から、クリエーションとライフスタイルを分けて考える人が多くなってきたように思うんですね。でも、ライフスタイルそのものを体現していくことがクリエイターには必要だと思うし、そういう『モノ作りをしている人たちが楽しいことをやっている現場』にこそ、新しい人たちが飛び込んでくるんです。そういう部分が、いまのファッション業界には足りていないような気がしています。

今回のような試みは、今後も続けていく予定ですか?

続けることが一番大事だと思っています。ファッション・ウィークというのは、ファッション業界における文化祭のようなものですし、それを業界全体で盛り上げていくことや、エネルギーを集めていくことが大切。そういう場で自分たちの表現を全力でしていくことがビジネスにもつながるようになると、作る側もだいぶ楽になるんじゃないかと思っています。また、いまはまだ日本がアジアの中心となる合同展示会を作り上げるチャンスがあるんです。アジアの中で最もブランドの力があるのはやっぱり日本だと思うし、日本人の感性で作り出しているものは確実に世界に通用する。あとは、それをうまく伝えるためのシステムを作って、海外の人たちに「東京には一度行っておかないとマズイ」と思ってもらえるような場所にしていきたいですね。

INTERVIEW by Yuki Harada

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