Interview & Report

今崎 契助

今崎 契助 Keisuke Imazaki

「PLASTICTOKYO」デザイナー

1983年京都生れ。文化ファッション大学院大学卒業後、
友人とともにグラフィックTシャツをメインとしたブランドを立ち上げ1年間活動
その後、アパレル会社で経験を積み、2013年春夏よりブランドスタート

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Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2016 S/Sにおいて初のランウェイショーを行い、大きな話題を集めたプラスチックトーキョー。東京ならではのミックスカルチャーを世界に向けて発信していくことを掲げ、自らが手がけるインパクトの強いグラフィックプリントなどを武器にしながら、着実にファンを増やしているブランドだ。夏フェス・ファッションのアップデートをテーマに、最新の機能素材を取り入れたストリートウエアの最新型を提案してみせたデザイナーの今崎契助氏に、初めてのショーにかけた思いや、ブランドのバックグラウンドなどについて伺った。

ファッションに興味を持ち始めたのはいつ頃からですか。

中学生の頃から制服を改造して着ていました。当時は、何か自己表現をしようと思った時に、ファッションというのが自分にとって唯一の手段でした。その頃は、W&LTやbeauty:beastなどのブランドに憧れて、地元の京都のショップに買いに行ったりしていたのですが、自分がつくったものを世に残したいという思いもあったので、高校を卒業してから上京し、文化服装学院でファッションを学ぶようになりました。

 

ご自身でブランドを始めるようになるまでにはどんな経緯があったのですか。

学生時代にコンテストなどで受賞する機会もあり、徐々に手応えを感じるようになりました。その後、文化ファッション大学院大学に進んだのですが、卒業制作でつくったヴィジュアルブックを、当時新宿2丁目にあったセレクトショップ「CANDY」に見てもらい、展示販売をすることになりました。その時につけたのが、“ブラスチックトーキョー”という現在のブランド名でした。まだ学生で右も左もわからない状態で、お店で洋服が売れる度に新しくつくった洋服をお店に持っていくということをしていました。ただ、それではビジネスとして成立しないので、一度アパレル会社に就職することにして、4年ほど生産管理の仕事などを経験してから、2012年に本格的にブランドをスタートすることになりました。

PLASTICTOKYO

PLASTICTOKYO 2016 S/S Collection

ブランド名の由来を教えて下さい。

70~80年代にかけて活動していたプラスチックスというバンドの楽曲「デジタルウォッチ」の歌詞に出てきた言葉を使っています。この曲の歌詞は、「ニューファッション, パリ」「ニューウェーブ, ロンドン」など、言葉と都市名を羅列していくようなものなのですが、最後に「プラスチック, トーキョー」という言葉が出てくるんです。また、僕は岡崎京子さんの漫画が好きなのですが、たまたまその中でもかっこ良いもの、新しいものを「プラスチックだね」と表現することがあって、言葉の響きも良いですし、世界に向けて発信していくためにも、すぐに日本のブランドだとわかる名前にしたいという思いもありました。

 

東京という街については、どんな印象を持っていますか。

僕が暮らしていた京都というのは特殊な街で、条例によって建物の高さや色などが規制されていました。それはそれで面白いところでもあるのですが、東京というのは逆に何でもアリなんだということが、18歳で上京した最初に感じたことでした。僕が通っていた文化服装学院は新宿にありますが、すぐそばには都庁があって、少し歩くと歌舞伎町のような繁華街が広がっているというのが凄いなと。ブランドを本格的に始めたシーズンは、「東京観光」をテーマに、東京タワーやスカイツリーのプリントなどを用いたコレクションを発表しました。

 

プラスチックトーキョーの洋服は、グラフィカルなプリントが大きな特徴になっていますが、ここにはどんなこだわりがあるのですか。

洋服をつくる時に大切にしていることは、わかりやすさ、オリジナリティ、そして時代を切り取れているかということです。それらを表現していくために、グラフィックというものが自分には合っています。学生の頃から、いくらコンセプトやテーマを練っても、つくった洋服がお客さんの手に渡る時に、それはあまり重要ではないんじゃないかと漠然と感じていました。コンセプトやテーマを詰め込み過ぎると洋服が重くなってしまうし、実際にバイヤーさんもテーマなどよりも、その洋服がお店のラックに並んでいる様子を想像しながらピックアップしていくところがあります。だから、なるべく説明的にならないように、ひと目見れば理解してもらえるような洋服をつくろうと考え、グラフィックを象徴的に使うようになりました。

 

ファーストシーズン以降も、東京らしさ、日本らしさというのは、ブランドのキーワードになっているのですか。

はい。プラスチックトーキョーは、日本の文化を世界に翻訳していけるようなブランドになれればと思っています。それは、「和」をテーマにするということではなく、時代の空気を反映していくことを意識しながら、自分のフィルターを通して、ルールに縛られないミックス感や柔軟さといった東京や日本の魅力を提案できるように、テーマやラインナップを考えています。

PLASTICTOKYO

PLASTICTOKYO 2016 S/S Collection

最新の機能素材も積極的に取り入れているようですね。

ストリートウエアをアップデートしていきたいという思いがあるので、日本の素材の新しい試みなどがあれば、積極的に取り入れたいと考えています。最新のコレクションでも撥水性、防水性に優れた形状記憶素材を使っているのですが、ストリートウエアとは相性が良いと感じているので、今後も継続的に使っていきたいです。

 

今回、ブランドとしては初となるランウェイショーを行いましたが、ファッション・ウィークに参加された動機をお聞かせください。

ブランドの世界進出を見据えていることや、周囲から抱かれているストリートブランドというイメージに新しい価値を加えたかったということが動機です。初のショーだったので、プラスチックトーキョーを初めて見る方たちに対して、分かりやすく自己紹介ができればと考えていました。今回のコレクションでは、日本の機能素材を用いたストリートウエアをつくりたいということがまずあり、夏フェスに着ていく洋服をアップデートするということをテーマに据えました。演出面については演出を担当していただいたkurokoの菊地啓介さんと相談をしながら、ショーの始めにバンドの生演奏を入れ、反復する音楽によって高揚していく夏フェスの臨場感を表現しました。

 

安全ピンを用いたパンク調のヘッドピースもインパクトがありました。

これはヘッドスタイリストのKUNIO KOHZAKIさんにつくっていただいたものです。今回は、デイリーウエアにプラスチックトーキョーの洋服を合わせていくスタイルを提案したかったので、ベーシックな洋服と派手なグラフィックの洋服を半々くらいのバランスになるように構成しました。だから、演出には遊びを入れたいという思いが強く、夏フェスというテーマと連動させる形で音楽的なモチーフを入れるのがいいのではないかと考えた結果、このヘッドピースが生まれました。

Kevin-House

ショー後の囲み取材の最後に、「TOKYO FASHION EXPRESS」(NHK WORLD TV)番組MCで、MBFWTオフィシャルアンバサダーのマリエさんからのインタビューに応じる今崎さん

 

 

先ほど、海外進出という話がありましたが、これまで海外の展示会などで発表する機会はありましたか。

今年7月に、初めてパリの展示会でコレクションを発表しました。ただ、時間的に余裕がなかったこともあり、型数をあまり用意することができず、自己紹介程度に終わってしまったので、来年1月にもパリで展示会ができればと考えています。海外ということを考えると、やはり東京でショーを発表してから展示会をするとタイミング的に少し遅いということもあり、次回は無理をしてでも、東京で発表する前にパリで見せられればと思っています。

 

ブランドの今後の展望をお聞かせください。

今回初めてショーをしたことで、アジアをはじめ海外から良い反応をもらい、いくつかのショップで取り扱いも決まりました。やはり、うちのようなブランドは国内だけだと置けるショップが限られてしまうので、海外にもどんどん広げていかないと先はないと思っています。ショーについては、今回が初めてだったこともあり反省点も多かったので、それを次回に活かしたいですね。また、ショーに限らず、つくった洋服をどう伝えていくかということをとても大切にしています。今、グラフィックは8割方自分で手がけており、そこがブランドの特徴ですが、今回のショーのヴィジュアルディレクションをYOSHIROTTENさんに担当していただいたように、今後も色んな人たちと組むことで新しい見せ方もしていければと考えています。

 

 

Interview by YUKI HARADA

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