Interview & Report

Miyuki Omichi / Ayumi Kita

Miyuki Omichi / Ayumi Kita 大道 みゆき / 喜多 あゆみ

plumpynuts

大道みゆき 4/12生まれ。おひつじ座、O型。喜多あゆみ 7/9生まれ。かに座、A型。2005年にfoundation addict を立ち上げ、2008 S/S コレクションまでデザイナーを務める。1年半の充電期間を経て2009年にあらたにブランドplumpynutsを設立し、神宮前にショップ SHOW CASE by plumpynutsをオープン。2011年4月末にはショップを移転オープンした。2011 A/Wより アーカイブのコレクションを再利用した、スペシャルピースで構成される限定ライン“TOKYO REWORKERS by O.K”(トーキョーリワーカーズ バイ オー・ケー)をスタート。

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foundation addict(ファンデーションアディクト)を立ち上げ、瞬く間に東京の女性を虜にしたデザイナーズデュオ、大道みゆきさんと喜多あゆみさんが、約1年半の充電期間を経て新たにスタートさせたplumpynuts(プランピーナッツ)。卓越した時代感覚やコーディネートセンスを武器に、遊び心や驚きにあふれるリアルクローズを創り続ける同ブランドは、つい先日、「SHOW CASE by plumpynuts」を移転リニューアルし、同ショップ限定のニューライン「TOKYO REWORKERS by O.K」もスタートさせた。ブランド設立2年目に入り、新たなチャレンジをスタートさせたふたりにお話を伺った。

2011年秋冬シーズンから、新ライン「TOKYO REWORKERS by O.K」(以下 REWORKERS)がスタートするそうですね。

大道:「REWORKERS」は、プランピーナッツのアーカイブをベースに、スペシャルな1点物を作っていくラインです。以前からショップの在庫やサンプルが残ってしまうことがもったいないと思っていて、それらを使ったラインをやってみたいと思っていたんです。ブランドも2年目に入って時間も少しできたので、今シーズンから始めることにしました。

喜多:ふたりでああだこうだ話し合いながら、1点の洋服に対して相当力を注いで作っています。メインラインとはまた違うテンションで、作り手としてかなりスペシャルな気持ちで取り組んでいるところがありますね。

大道:「リメイク」ではなく、あえて「リワーク」と言っているのは、今まであったものに自分たちが手を加えることで、まったく違う服に作り変えたいという思いがあるからです。特に「エコ」や「リサイクル」ということを目指して始めたわけではないのですが、結果としてそういうことにもつながっているし、お客さんにも1点しかないという喜びを感じてもらえるとさらにうれしいですね。

「TOKYO REWORKERS by O.K」

「REWORKERS」に限らず、服作りはすべておふたりで話し合いながら進めていくのですか?

喜多:そうですね。よく役割分担について聞かれるのですが、それが全然ないんです(笑)。ふたりでイメージやその時の気分を話し合うところから始まって、興味を持っているものをスクラップしたり、古着屋を回ったりしながら気持ちを高めてからデザインを出し合って、徐々に濃くしていくんです。

大道:もともとファッションの好みがとても近いんです。これだけ近い人には出会ったことがないくらい自然に好きなものが合っていて、それがブランドを一緒に始めた理由でもあるんです。ファッション以外の部分は、人間性も含めてだいぶ違っていて(笑)、お互いに好きなことや得意分野はあるけど、重なる部分もとても多くて、それをプランピーナッツとして出していっている感じですね。

ファンデーションアディクトを辞められてから、プランピーナッツを立ち上げるまでの間は、それぞれどのように過ごされていたのですか?

大道:月並みな言い方ですが、充電期間でしたね。前のブランドを始めてからは、お蔭様ですぐに評判を頂けて、そこからずっと駆け抜けていったような3年半だったんです。ファンデーションアディクトを辞めた後は、一旦立ち止まってリセットするじゃないですが、お互いに連絡を取らずに、洋服からも一切離れて、好きなことをする生活を1年半くらいしていました。

喜多:その時期は、ふたりでまた新しいブランドをやるということすら意識していませんでした。今までしたことのないくらいゆっくりした生活を送っていましたね(笑)。

大道:それはそれで楽しかったんですけど、1年くらい経って自然とまた洋服を作りたいと思うようになってきたんです。それで彼女に話をしたら、同じような気持ちだったことがわかって。本当に自然な形で、自分たちが自分たちらしく、無理なく楽しんで作れるのであれば、今度は自分たちで会社を立ち上げて、ブランドをやろうということになったんです。

充電期間を経て、おふたりのクリエーションに変化が出たところはありましたか?

喜多:前のブランドの最後のコレクションの頃は、もっとキメキメの気分で、ラグジュアリー感のあるものを作っていたんですけど、久々にデザインをしてみると、ふたりとも力の抜けたものが出てきたんです。それまでのゆっくりした生活が影響していると思うんですけど、完全に別々に過ごしていたのに、同じような方向性のデザインが出てきたのが、個人的にはすごく面白かったですね。

大道:オフの期間に、ちょっと外出する時にカジュアルだけどオシャレに見える洋服というのを意外に持っていないことに気づいたんです。それまでずっとファッション業界で仕事をしてきて、偏っていたんだなって。基本的に私たちが好きなものは今も変わっていないのですが、ゆっくりした時間を過ごしてきた中で新しい発見があって、自分たちが作る洋服の幅が広がった気がします。

デザインをする上で、大切にしていることを教えてください。

喜多:ふたりの中に共通した女性像のようなものがあるんです。私たちがグッと来るカッコ良さやセクシーさがあって、それをイメージしながらデザインしています。また、1着だけで考えるのではなく、必ずコーディネートを意識するようにしていますね。

大道:私たちなりのコーディネートの提案は、求められればいつでもできるようにデザインしています。自分たちや周りのスタッフがプランピーナッツを一番愛している人たちでいたいと思っているくらい、自分たちがリアルに着たいと思う服を作るということを大前提にしているんです。かと言って、うちの服だけでしかコーディネートできないようなものではなく、その人のクローゼットにプランピーナッツの洋服が1着入ることで、幅が広がっていくようなものが作れればいいなと思っています。

2011-12年秋冬コレクションについて教えてください。

喜多:私たちはいつもデザインに入る前に生地を考えていくんですけど、今回は気づいたらチェック柄などクラシックな生地ばかり集まっていたんですね。その結果、60年代の伝統的なブリティッシュスタイルを中心にしたコレクションになりました。ロングコートやバギーパンツなどボリュームのあるシルエットが多くなっているのですが、全体としてクラシックに寄りすぎず、ダンディでありながら、プリティさも出していくように意識しました。

大道:ポンチョやダッフルコートなどのクラシックなアイテムにも、遊び心やモード感をプラスして、カラーや素材にもこだわりながら、女性らしさを出すようにしています。

plumpynuts 2011-12 A/Wコレクションより
*2011-12 A/Wコレクションは こちら

シーズンテーマは毎回どのように決めているのですか?

喜多:その時々のふたりの気分を大切にしているので、ピンポイントにひとつのテーマを掘り下げていくことは、基本的にはしないんです。

大道:テーマやコンセプトを設定すると、そこに向かって作ってしまいがちになりますよね。でも私たちは、特定のテーマにしばられることなく、その時にいいと感じるものを作っていきたいので、最初に明確なテーマは決めないようにしているんです。

「Maison BO-M」

今年4月に「SHOW CASE by plumpynuts」が移転リニューアルされましたね。
このショップについてのお話も聞かせてください。

大道:内装は、パリのアパルトマンのような雰囲気をイメージしているのですが、洋服だけにこだわるのではなく、絵の展示やCDの販売など、自分たちが興味のあるものをどんどん取り入れていけるような空間にしたいと思っています。今は、リニューアルオープンのイベントの時にライブペイントをお願いした大分在住の北村直登さんというアーティストの作品を展示しています。北村さんには、「LOVE FOR NIPPON」のフリーマーケットにも出品していただいたり、その後も色々協力してもらっています。

このショップは、今後も色々な分野の人たちと知り合う場にもなっていきそうですね。

喜多:そうですね。異業種の人たちとは色々やりたいなと思っています。例えば、私は料理が好きで、彼女はコスメが好きなので、そういう分野とコラボレートできるかもしれないし、カルチャーだけに限らず、生活に密着したものとかも作っていけたらいいですね。

「ピーナッツチャーム」

先ほど少しお話に出た「LOVE FOR NIPPON」についても教えてください。

大道:今回の震災を機に、Candle JUNEさん、MINMIさん、若旦那さん(湘南乃風)らが中心となって立ち上げられたプロジェクトで、私たちはスターターとして声をかけていただきました。チャリティ・フリーマーケットに参加したり、現地に炊き出しに行ったり、「ピーナッツチャーム」を作って、その売上を寄付したりしています。お蔭様で、すでにかなりの募金が集まっていて、自分たちの小さな呼びかけでも大きな力になるんだということを実感することができました。今回のことについては、それぞれに色んな考え方があると思うのですが、私たちは私たちらしく、無理なく続けられる方法で協力していければと思っています。

喜多:ちょうどショップのリニューアルが1ヶ月後に迫っていた時期の震災だったんです。震災後、ショーなどを自粛するブランドも多い中、自分たちはどうすればいいのかを色々考えました。結局、チャリティを兼ねたショップのオープニングイベントをやったのですが、多くの人たちが来てくれました。イベントに来て元気になってくれた人も多かったし、東京の人たちが一緒になって暗くなるのではなく、自分たちはビジネスをしっかりやって、経済を回していくことこそが大事なんだと強く思いました。(イベントを)やって本当に良かったと心から思いましたね。

今後ブランドとしてやっていきたいことなどを教えてください。

大道:海外にも自分たちの洋服をもっと出していきたいと思っています。今回からスタートする「REWORKERS」も自己満足で終わるのではなく、ビジネスとして回していきたいと思っているのですが、こういうものが海外に出ていく良いきっかけになればいいなと思っているところもあるんです。

喜多:ふたりで自分たちの会社を作って始めたプランピーナッツを、一過性のもので終わらせるのではなく、地に足の着いた活動として、生涯楽しめるものにしていければと思っています。

大道:10年後もプランピーナッツと言えば、すぐにみんなに分かってもらえるようなブランドであったらうれしいですね。

INTERVIEW by Yuki Harada

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