Interview & Report

YOSHIROTTEN ヨシロットン

YOSHIROTTEN ヨシロットン グラフィックアーティスト/アートディレクター

MBFWT 2015 S/S & 2015 A/W Key Visual Creator

【 プロフィール 】
1983年魚座生まれのグラフィックアーティスト/アートディレクター。 東京を拠点にしながら、NY、BERLIN、SYDNEYなど世界中にクライアントを持ち、NY ACEホテルの内装やスティービーワンダー、TIGA,BOYSNOIZE、DJ HELL、m-flo等のアーティストのジャケットデザイン、ZINE制作、パリコレコクションに参加するブランド等へのデザイン提供、OPENING CELEMONYのハロウィンコスチュームデザイン、JAXAとの商品企画や様々なブランドとコラボアイテム制作など幅広く活動中。2013年GASBOOKより自身の作品集を発売し、伊勢丹やギャラリーでの作品展を開催。デザイン誌GRAPHIC DESIGN2014では表紙のデザインを手がける。2014年7月にベルリンで作品発表も行った。

あるモデルが妄想するシュルレアリスム的世界を、東京を象徴するファッションとともに表現したMercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015 S/Sのキービジュアル。このアートワークを手掛けたのは、グラフィックアーティスト、アートディレクターとして、ファッションや音楽関連のデザインを中心に国内外のさまざまなプロジェクトを手掛けているYOSHIROTTEN(ヨシロットン)氏だ。グラフィックデザインのみならず、内装やコスチューム、プロダクトなどのデザイン、さらに作品集の出版や個展の開催など精力的な創作活動を続ける彼に、今回のキービジュアルのコンセプトや、ファッションへの思い入れなどについて伺った。

 

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015 S/Sのキービジュアルのコンセプトを教えて下さい。

最初にお話をいただいた際に、自分の得意なグラフィックを活かした表現をするべきだと考え、そこからいくつか案を出していきました。その中から、「ファッションは夢である」というテーマを、日本人デザイナーの洋服を着たモデルと、月や雲、雷などの自然、クルマや造形物などが超現実的な世界観の中で混ざり合っているビジュアルで表現したいと思いました。

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3パターンのビジュアルをつくられていますが、それぞれにはどんなテーマがあるのですか?

ファッションには、「この服を着て、どこかに行きたい、誰々のようになりたい」というような妄想をかきたてる力があります。その妄想にはさまざまな種類のものがあるので複数のビジュアルをつくったのですが、今回は「クラシック」「ストリート」「ニューエイジ」というテーマを設定し、それぞれのイメージに合う日本人デザイナーの服でスタイリングしています。また、ファッション・ウィークの会場周辺に掲出されるため、それぞれの背景色を変えながら、カラフルで楽しいファッションのイメージを表現することも意識しました。

ビジュアルを制作する上で「東京」というテーマは意識されましたか?

東京を表現するのはスタイリングだけで良いと考えました。普段のファッションや音楽の仕事にも言えることですが、あまり日本、東京ということを意識してデザインすることはなく、むしろ世界中のどんな人が見ても無条件にカッコ良いと感じてもらえるようなものにしたいという思いで取り組んでいます。

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上:BOYS NOIZE BNR 100 incl. remixes by chemical brothers & JUSTICE 12inch
下:Wall Art for ACE HOTEL NY
Yoshirotten.comより

これまでにもファッションのお仕事は多く手掛けられていると思いますが、どのようなことを大切にしていますか?

ファッションブランドというのは、デザイナーやディレクターそれぞれが、自分なりの絶対的なイメージや世界観というものを持っています。それを尊重した上で、今の時代において新鮮に映る見せ方を提案していくことが自分の仕事だと考えています。また、ファッションと音楽に関してはもともと自分が好きな分野なので、今カッコ良いと思えるものを自信を持って提案できると思っています。

ファッションに興味を持つようになったのはいつ頃ですか?

鹿児島県出身ですが、高校時代に地元でストリートのファッションショーを見たことがきっかけです。それまでも古着を買ったりはしていましたが、そのショーを見てからは、作り手の存在が見えるような服に興味を持つようになりました。一時期はファッションデザイナーになりたいと思っていたくらいで、自分でグローブなどをつくったりもしていましたね。

その頃に影響を受けたブランドやデザイナーを教えて下さい。

当時の東京モードを牽引していた「ビューティー・ビースト」や「20471120」を見たときは衝撃を受けましたし、海外デザイナーではウォルター・ヴァン・ベイレンドンクなどを面白いなと思っていました。また、スケートボードをやっていたこともあって、スケーターブランドやストリートブランドなどもよく着ていました。他にも、やはり音楽と関連が強いブランドや洋服が好きでしたね。

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TRUMP Design for SEVEN SATRS(Yoshirotten.comより)

音楽はどんなものを聴いてきたのですか?

パンクロックから入り、80sを聴くようになり、上京してからはテクノなどにも興味を持ってクラブに行くようになりました。70年代のパンクや90年代のテクノをはじめ、あるムーブメントが時代を変えてしまうほどの力を持つというのが音楽の好きなところなんです。だから、あまりジャンルにはこだわらず、これまでに聴いたことがないものをどんどん掘り下げていき、やがて東京でイベントを企画して自分でもDJをするようになりました。そこから一気に友達が増えて、当時イベントで知り合った友達の中には、その後ファッションブランドを立ち上げてコレクションデビューしたり、セレクトショップの社長になった人などもいます。最近は当時の友達と仕事でもつながるようになり、それはとてもうれしいことですね。

グラフィックデザイナーを志したきっかけもファッションや音楽からの影響ですか?

そうですね。高校生の頃に、自分が好きな音楽のレコードジャケットやTシャツのデザイン、スケボーデッキなどのビジュアルを、すべてグラフィックデザイナーが手掛けているということを知り、これが自分のやりたいことなんだとわかったんです。その後、東京の専門学校の体験入学に参加し、そこで初めてPCを使って作品をつくりました。その時の講師が松浦弥太郎さん(『暮しの手帖』編集長/COW BOOKS代表)だったのですが、自分の作品が松浦弥太郎賞に選ばれたんです。当時松浦さんは、恵比寿で移動本屋をされていたのですが、その一方でファッションブランドのアートディレクションなどもしているということをその時に知り、一見バラバラなことを一人の人がやっているということがとても魅力的に感じ、自分もこういう方向に進みたいと思うようになりました。

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PUDDLE EXHIBITION(Yoshirotten.comより)

専門学校を出てからはどのような仕事をされてきたのですか?

専門学校にいる頃にレコード会社のデザイン部でインターンをしていて、いろいろなデザイン事務所に届け物などをしていましたが、その中で僕が好きだった音楽関連のデザインなどを多く手掛けていたポジトロンという会社にも出入りしていたんですね。それが縁となり、学校を卒業してからポジトロンで働くことになりました。当時、平日は事務所で仕事をして、週末になると友達から頼まれたTシャツやイベントフライヤーのデザインをしたり、自分たちでクラブイベントを開催したりということをしていました。ポジトロンで5年間働いた後、学生時代の同級生だった我妻晃司と共にRALPHという事務所を立ち上げ、現在に至ります。

独立されてからは個性というものがより大切になってくると思いますが、ご自身の方向性が固まったのはいつ頃だったのですか?

かなり早い段階からある程度固まっていたのですが、2000年代前半にまだ「ニューレイブ」「エレクトロ」という言葉が日本に浸透する前から、そういうジャンルの音楽イベントを開催したり、それに関連したアートワークをしていました。その頃は、ニュー・ウェイヴ的なカルチャーがファッションの分野ともつながり出していた時期で、そこに立ち会えたことはとても大きかったと思います。やはり僕は音楽にインスパイアされることが多いのですが、パンクをはじめ、既存のものを作り変え、まったく新しいものとして表現するようなことが好きなので、自分がつくるビジュアルに関してもそういうものを出していきたいと常に思っています。

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上:m-flo Album “NEVEN” CD JKT SPECIAL ARTBOOK
下:GASBOOK 28 YOSHIROTTEN
(Yoshirotten.comより)

展覧会の開催や、作品集の出版などもされていますが、こうした活動と普段のお仕事のバランスはどのように考えていますか?

普段の仕事は、依頼に対して応えていくものなので、既存の作品や参考となるイメージを見せ、クライアントに納得していただいてから進めていくことが多いです。一方で、自主的につくる作品にはそのプロセスが必要ないため、自分自身がこれまでに見たことがないもの、新鮮だと思えるものを形にしていくことができます。また、そこでつくったものが、次の仕事のリファレンスになることもあります。先日ベルリンで展覧会を開催した時も、その様子を撮影した僕のInstagramを見た方が、ファッション雑誌の仕事を依頼してくれたのですが、このようにつながっていくのは楽しいですし、普段とは異なる環境で制作できることもとても新鮮なので、年に1、2回は自主制作に取り組む機会をつくるようにしています。

今後取り組んでみたいことなどがあれば教えて下さい。

今お話したベルリンの展覧会では、アートワークをプリントしたフィルムシートを天井から吊るし、それらが重なり合うことで立体的に見えるようなインスタレーション形式の作品を発表しましたが、年末くらいに都内でも展示しようと計画中です。また、これまでもミュージックビデオなどは制作していますが、映画やCMなど映像の仕事をもっとやってみたいですね。最近は、海外ミュージシャンの仕事も徐々に増えてきましたが、今後はファッションの分野でも国内外問わず幅広くやっていきたいと思っています。

 

YOSHIROTTEN
INTERVIEW by Yuki Harada

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