ジャンルカ・カンターロ Gianluca Cantaro/L’Officiel Italia、L’Officiel Hommes Italia編集長
AmazonFWT 2018 S/S 海外ゲストインタビュー vol. 5
『L’Officiel Italia』と『L’Officiel Hommes Italia』両誌の編集長
[ Website ] L’Officiel Italia https://www.lofficielitalia.com
[ Facebook ] L’Officiel Hommes Italia https://www.facebook.com/lofficielhommesita/
[Instagram ] https://www.instagram.com/cantaro_san/
Amazon Fashion Week TOKYO 2018 S/Sの会期に合わせて、海外の有名ファッションメディア関係者も多数来日した。そのうちのひとりで、『L’Officiel Italia』と『L’Officiel Hommes Italia』両誌の編集長を務めるGianluca Cantaro(ジャンルカ・カンターロ)氏にインタビューを実施した。 彼は日本のカルチャーの大ファンで、現在、週に一度、忙しい合間を縫ってミラノで日本語を学んでいる。そんな親日家の彼に、東京の街やファッション、またファッション・ウィークについて伺った。インタビューは流暢な日本語の自己紹介から始まった。
大変な親日家と伺っていますが、来日は何回目ですか?
20回近く来ていると思います。2006年に初めて来日して、10日間滞在しましたが、それでとても日本が好きになりました。特に下北沢が好きです。友達が住んでいますが、二子玉川も良いところですね。2020年のオリンピックまでには東京に住みたいです。
初来日から10年以上経ちますが、当時と比較して、東京の街や人、ストリートファッションの変化について、何か感じることはあります?
初来日のきっかけは、当時グウェン・ステファニーのミュージックビデオに登場していた4人組のダンスグループ「Harajuku Girls(原宿ガールズ)」を見てみたいと思ったことです。しかし、実際に原宿に行っても出逢えなかったので、知り合いに聞いたら「あ~2年前のやつね」と言われ、トレンドの移り変わりが早い街だなと感じました。毎年変化を感じますが、特に表参道や渋谷にいるティーンネイジャーたちのファッションが、その頃と比べると、海外のトレンドに敏感になっているような気がします。10年前は、スマホも無く、テクノロジーが発達していなかったので限られた情報でトレンドが形成されていましたが、今は、リアーナやカニエ・ウェスト、Supreme(シュプリーム)もSNSで簡単にフォローできる時代ですから。
好きな日本ブランドはありますか?
最近でしたらパリのファッション・ウィークでもショーを行っているようなsacai(サカイ)やUNDERCOVER(アンダーカバー)、TAKAHIROMIYASHITATheSoloIst.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)、kolor(カラー)などですね。80年代から活躍しているCOMME des GARÇONS(コムデギャルソン)やJUNYA WATANABE(ジュンヤ ワタナベ)、Yohji Yamamoto(ヨウジヤマモト)など、単に衣服を見せるのではなく、脳に刺激を与えてくれるようなパフォーマンスをみせてくれるブランドも好きです。
東京のファッション・ウィークについてお伺いしたいのですが、今回ご覧になったショーの中で、特に印象に残っているブランドはありますか?
HYKE(ハイク)はとても好きです。クリーンで、鋭く、新鮮に感じます。パッと見て、すごく印象的です。今回のコレクションでは、THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)とコラボレーションしてスポーティな面も出せるし、それでいてエレガントです。海外に進出する日も近いのではないでしょうか。あと、5-knot(ファイブノット)も印象的でした。僕のインスタグラムにもポストしましたが(右画像参照)、このルックのボレロに象徴されるロマンティックさと、光沢のある素材から感じさせる未来的なシャープさ、まったく異なる2つの要素を併せ持っている点が特に魅力的です。
ファッション・ウィーク全体の雰囲気はいかがでしたか?
もはや東京は、多様なカルチャーを発信し、世界に影響を及ぼすビッグな街です。世界中のデザイナーやジャーナリスト、リサーチャーが、東京で新たなトレンドを探しています。しかし、ファッションについてはその影響力が少し弱いように感じます。東京のファッション・ウィークは、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークに続き、世界で5番目に入るべきイベントです。日本で実力のあるブランドが世界へ進出するのは自然なことですが、東京でファッション・ウィークをオーガナイズすることを考えれば、そういった実力があり、ビジョンもしっかりしているブランドを集結させて、東京から発信することを目指した方が良いと思います。洋服が売れることも大切ですが、プレゼンテーション自体のクリエイティビティに焦点を当て、独自性を生み出すことが今の東京のファッション・ウィークには必要だと思います。コマーシャルというよりは、クリエイティブを追求すべきです。
例えば、どういった方法が考えられますか?
インスピレーションを与えてくれるようなショーです。クレイジーである必要はなく、会場や構成など、ベースがしっかりしていることが必要です。例えば、今年1月にPitti Immagine Uomoで行われたsulvam(サルバム)のショーは良かったですね。会場は古い駅でしたが、大変雰囲気があり、ストーリー性もあって、感情が動かされました。ロケーションは非常に大切ですね。僕たちは毎シーズン多くのショーを見ているので、ワクワクさせてほしいのです。これからは「東京ファッション物語」と名前を変えてしまってもいいのではないかと思うくらい(笑)、ストーリー性は大切だと思います。
ファッションにおいてもウェブサイトやSNSを活用した海外発信の重要性がますます高まっています。日本ブランドが海外のメディアにアプローチするためには、どのような工夫が必要だと思いますか?
それはファッションに限らず、様々な業界でも言えることですね。僕がよく比べるのはインスタグラムのフォロワー数で、例えば、日本最大のファストファッションブランドと海外の大手ファストファッションブランドでは、前者のフォロワー数の方が1桁も少ないくらい、大きな差があります。今はインスタグラムがECサイトに直結していますし、自分もインスタグラムを見て買い物をすることがあるので、もっとSNSを活用すべきだと思います。日本はテクノロジー先進国ですが、それを活かしたコミュニケーションが少し弱いという印象です。 DNAや国民性、文化の違いもあるかもしれませんが、世界の移り変わりは激しいので、その点を変えていかなければならないと思います。僕が日本に住むとしたら、そこにチャンスが潜んでいそうなので、新しいビジネスを始めるかもしれません(笑)。
「L’ Officiel Italia」、「L’ Officiel Hommes Italia」の両媒体の編集長として、今注目している人やトピックスはありますか?
ディオールのコレクションで発表された「私たちはみんなフェミニストになるべきだ」と書いてあるTシャツと同名の本も出しているナイジェリア人ライターのChimamanda Ngozi Adichieや、写真家兼映画監督のAlex Prager、女優のBeatrice VendraminとStacy Martin、スーパーモデルのLuca Gajdusなどですね。彼女たちには「L’ Officiel Italia」の5周年記念号に寄稿してもらいました。とても素晴らしい女性たちです。
Interview by Akane Fujioka
Interpretation by Hiroyuki Takagi