RakutenFWT公式オリジナルエコバッグを⻑濱ねるさんがデザイン。衛生商品の製造過程で発生する端切れをリユースした作品に込めた想いとは
2022SS、2022AWの2シーズンRakuten Fashion Week TOKYOのSDGsレポーターを務めた⻑濱ねるさん。アパレル業界での取り組みを通じて様々なメーカーと出会い、2023SSにてRakuten Fashion Week TOKYO公式オリジナルエコバッグのデザインに挑戦した。タッグを組んだのは最先端の素材・⽣地への加⼯技術を持つ⼩松マテーレ。同社のマスクインナーの製造過程で発生する端切れを100%活用して作り上げたオリジナルエコバッグへの想いについて話を伺った。
⻑濱ねるさんのオリジナルエコバッグ制作に協力してくれたのは、サステナブルなモノづくりを目指し、製造過程のロスの削減、廃棄物の再利⽤などに取り組む⼩松マテーレ。2022AWシーズンにて同社のSDGs活動への取材を行った長濱さんは、今回の挑戦に胸が高鳴ったという。
「Rakuten Fashion Week TOKYOを通じて小松マテーレさんの活動を学び、さまざまな素材を再利用して商品化されていることなどを知りました。実際に私も端切れで作られたバッグを購入させていただきましたが、私生活の中で“コレ可愛いね”と声をかけてもらうことがとても多かったんです。SDGsにあまり関心のない方やいろんなジャンルで仕事をしている人たちの中で、“端切れでこんなに可愛いものが作れるんだ”ってことが自然に広がっていく感じがして、すごく嬉しかったんですよね。なので今回の挑戦には緊張や不安はまったくなく、モノ作りに初めて挑戦するということもあって、ただただ嬉しくて楽しみながら作ることができました」
エコバッグ制作にあたり、石川県にある小松マテーレの本社へ行かれたそうですが、いかがでしたか?
「まず驚いたのが工場の中の暑さですね。製品を作る過程で熱や蒸気を使っているのですが、夏場は機械の近くでは40℃近い暑さになることもあるのだそう。こういった環境の中で社員の方々が働いていらっしゃる姿を拝見して、自分の持っているものを、より大切に、長く、愛着を持って使っていこうという気持ちになりました。普段服を選んだりするときは、デザインやデザイナーさんのことを想像することが優先されがちですが、生地を作る方やデザインを形にするパタンナーさんなど、本当に多くの方が関わっているということを改めて実感するきっかけになりました」
小松マテーレの工場内にて
※安全に注意し、特別に許可を得て撮影しています。
加工後の生地が機械から流れ出る様子を見学
初めてモノ作りに挑戦されたとのことですが、マスクインナーの端切れを使うことは、ゼロからモノを作り出すこととはまた違った難しさがあると思いますが。
「今回のバッグには、マスクの内側に装着してマスクの性能を高める“マスクインナー”の端切れを活用しました。私自身、小松マテーレさんのマスクインナーを使っていたので生地の風合いなどは理解していましたが、端切れはサイズや長さが決まっているので、自由度は高くないのかな、と思っていました。ですがモノ作りの現場に行って、みなさんからアイデアをいただいたりしながら挑戦することができました。マスクインナーは大きな布から複数枚用の生地を切り抜いていくのですが、余った生地を見て、“この形を生かしたバッグが作りたい”と思い、職人の方々と一緒にどんなふうに作っていけば良いのかを相談しながら進めました。端切れの形状をそのままバッグに取り入れているので、このバッグがどうやって生まれてきたものなのか、そういった物語を感じてもらえるものができたと思います」
「SDGsなモノ作り」だからこそ気づいた点はありましたか?
「実際に端切れを手にすると、こんなふうにしたい、あんなふうにしたいという思いが湧いてきたんですが、それはSDGsじゃないかも、ということを再認識することがありました。例えば端切れであっても組み合わせによっては染色工程が増えてしまうとか。自分が作り手になることで、ファッション業界でSDGsに取り組んでいらっしゃる方々の苦労や工夫を知ることができ、より尊敬や感謝の気持ちが生まれました」
完成したエコバッグを手にしたときの感想を教えてください。
「こんなに可愛いものができたんだ!って、とても嬉しかったです。元の生地であるホワイトの他に、イエローとピンク、グリーンの全4色を作りましたが、小松マテーレさんの技術で本当に絶妙な色合いを再現してくださって。バッグ1つで主役になれる、目を引くようなバッグがいいなと思っていたので、とても良い仕上がりになったと思います」
こだわった点について教えていただけますか。
「新たな素材を追加せず、残っているものを100パーセント利用したところですね。異なる3種類のサイズにイソギンチャクのようなフワフワとした布をあしらっていますが、それもすべて端切れの形状を生かしています。また、イエロー、ピンク、グリーンは製品が仕上がってから最後に色をつける「製品染め」をすることで、必要な枚数を無駄なく仕上げました。」
バッグに用いるマスクインナーの端切れをカットする様子
「そして今回このバッグを手にされるのはプレスや来場者などファッション業界の方が多いと伺ったので、ノートやパソコンを持っていたり、荷物が多い方もいるのではと思い、機能面も考慮しながら作りました」
ミニサイズはショルダー掛けもでき、マチと内ポケットがあり収納力も抜群。縦型タイプはPCを入れるのにピッタリ。トートサイズは外側に大きなポケットが2つ。1泊2日のトラベルバックとしてもおすすめ
「すべてのバッグの持ち手は、マスクインナーを切り取った端切れをそのまま生かしたデザインになっています。使いやすさも考え、それぞれにポケットを内側や外側にレイアウトしました。このバッグを楽しく使ってもらえたり、普通の生活の中に置いておいてもらえたらと思うと、それだけで嬉しいですね。その中でこのモジャモジャってなんなんだろうとか、この生地ってなんなんだろうって疑問を持ってもらえたらいいなと思っています」
2023SSもSDGsレポーターを務められますが、3シーズン目となる今、みなさんに伝えたいことを教えてください。
「サスティナブルな商品を買う、使うと考えると少しハードルが高かったり、普通の生活で取り入れられないんじゃないかと感じてしまうこともあるかもしれませんが、最近はサスティナブルな商品でも普通のものとまったく遜色ないアイテムがたくさん増えています。むしろ、単純に可愛いと思ったものが、実はサスティナブルな商品だったということも多いかもしれません。何を買うか迷った時に、その商品が持つ背景や、どんな作り手やメーカーが作っているのかを少しだけ想像してみることが、“選ぶ”という選択肢の1つの判断材料になったらいいなと思います」
■長濱ねる プロフィール
1998年9月4⽇、長崎県⽣まれ。
TV番組『セブンルール』(カンテレ/フジテレビ系)・『離島で発見!ラストファミリー』(NHK総合)のMCや『ダ・ヴィンチ』でのエッセイの執筆、また『FRaUweb』でのSDGs連載やNHK・SDGsキャ ンペーン『未来へ17アクション』PR大使を務めるなど、幅広い分野で活躍中。趣味は読書、音楽鑑賞。
■小松マテーレ
1943年、石川県で創業。染色や機能性等を付与する加工技術を駆使し、ファッション、スポーツ衣料だけでなく、インテリア、メディカル、建材など、多岐にわたる分野で事業を展開する化学素材メーカー。