Interview & Report

“EN” Special Conversation vol.1

“EN” Special Conversation vol.1 SIWA / 一瀬 愛 × JOINTRUST / 藤田 将之

“EN” Special Conversation

一瀬 愛
SIWA|紙和 ブランドプロデューサー

藤田 将之
JOINTRUST デザイナー

[ URL ] SIWA|紙和

[ URL ] JOINTRUST

今回、登場するのは、山梨県の和紙メーカー・大直が、深澤直人氏をデザイナーに迎えて立ち上げた和紙製品のブランド「SIWA | 紙和」の一瀬 愛氏と、2011年に設立されたメンズブランド「JOINTRUST」のデザイナー藤田将之氏。3/18-20に開催されるENに向けて、和紙というデリケートな素材を用いた新たな表現方法を模索中の両者に話を伺った。

 

1 2 3 4JOINTRUST 2014 S/S Collection

まずは、それぞれの活動について教えてください。

藤田:JOINTRUSTは、2011年にスタートしたメンズブランドです。ブランド名には、JOIN(つなぐ)/TRUST(信頼)、JOINT(結合)/RUST(サビ)という二つの意味合いを持たせているのですが、前者のようなクリーンなイメージと、後者のようなダークなイメージを共存させ、見え方を一つに定めないことをコンセプトにしています。実際の服作りにおいても、上品な素材を加工して崩したり、古着を使って上品なものを作るなど、相反するものを一つの洋服に落とし込んだ時に、面白いものが生まれるのではないかという思いで取り組んでいます。

一瀬:SIWAは、山梨県にある和紙メーカー・大直が、プロダクトデザイナーの深澤直人さんと作った和紙製品のブランドです。大直は、1000年の歴史を持つ障子紙の産地である山梨県に私の祖父が創業した会社で、当時は和紙の素材と障子紙を作っていたのですが、徐々にそれだけでは厳しい状況になってきたので、跡を継いだ父の代から和紙を用いたブランドを新たに立ち上げ、百貨店等に向けて日本の歳時記をテーマにした和紙雑貨ブランドを立ち上げました。このブランドはメインターゲットが女性で、年齢層もやや高めだったこともあり、より若い層や男性にも使って頂けるものを作ることを目的に、6年前に立ち上げたブランドがSIWAで、その時から私が担当をしています。

SIWA トートバッグ
SIWA トートバッグ

SIWA チロル
SIWA チロル(帽子)

SIWA スリッパ
SIWA スリッパ

和紙という素材にはどんな特性があるのですか?

一瀬:本来和紙というのは、楮(こうぞ)、三椏(みつまた)、雁皮(がんぴ)等が主な原材料でしたが、現在では産地や素材を問わず、和紙漉きの製法を使って様々な素材や産地などで多種多様な和紙が作られるようになってきています。その中で当社は機械漉きを取り入れ、化学繊維なども使っているのですが、そうすることで手漉きのものよりもすっきりした和紙になるんです。和紙というと繊維がたくさん入っている手漉きのものを想像される方が多いと思います。もちろんそれらも味があって良いのですが、プロダクトに落とし込むことを考えると、先端の技術や化学繊維などを取り入れて強度のあるものが適していると思い、力を入れて開発しています。

藤田:今回コラボレートすることが決まり、日本に代々伝わってきた和紙という素材を使って、何か新しいものが表現できるということは非常に面白いと思いました。先ほどもお話したようにJOINTRUSTでは、ハイテクとアナログなど、相反する要素を一つのプロダクトに落とし込むということをコンセプトにしていますし、自分がこれからものづくりを先に進めていく上でも非常に楽しみな試みだと感じました。

一瀬:SIWAでは、これまでも男女両方をターゲットにしてきたのですが、デザインに関しては、サイズ感なども含め女性をイメージしている部分がありました。今回は、男性をターゲットにしたものを作ってみたいという思いがあったので、JOINTRUSTのようなメンズブランドとご一緒できるのはとてもうれしいです。普段から男性に向けてものづくりをしている藤田さんの感覚を100%出して頂くためにも、JOINTRUSTらしくやりたいように作ってほしいというお願いをしました。

藤田:SIWAの商品を色々拝見したのですが、すでに老若男女に受け入れられる完成度の高いプロダクトだと感じたので、その良さを維持しつつも、和紙を使った新しい表現方法ができないかということを考えました。また、せっかくコラボレートするのであれば、一度きりで終わってしまうようなものではなく、この先の広がりということも意識した上で、和紙を貼り付けて柄を表現することと、和紙に刺繍をするという二つの手法にトライすることにしました。

一瀬:私たちはあくまでも素材メーカーなので、紙漉きの技術はあっても、それをどう見せていくかという部分まで担うのはなかなか難しいんですね。例えば、紙の漉き方を調整することで強度を強めたり、シワ加工を施すことはできますが、そのシワ感をどう表現するかという部分はデザイナーさんの力が必要だと感じています。今回そこを見てもらえるというのは素材メーカーとしても非常に魅力的なことだと感じています。また、こうしたコラボレーションの場合、デザイナーさんからデザイン画や図面が送られてきて、その後はこちらで動いていくケースが多くなり、結果こちら側の裁量で決まってしまう部分が大きくなってしまいます。今回は、藤田さんが前職で生産管理をされていて、ものづくり側のこともよくご存知ということもあって、デザイン以降の過程も藤田さんのクリエイションを反映できることがポイントだと思います。

 

ENではどんなアイテムを発表される予定ですか。

藤田:和紙を用いたMA-1を作っています。普通に考えたら、シャツなどを作るのが定番だと思いますが、本来洋服の生地ではない和紙という素材の機能や性質を考えた時に、常に身体にフィットしていて動きの幅が大きいアイテムは、強度的に少し不安だったんです。そこで、身体から少し離れた大きなシルエットで表現できるものが良いと考え、さらにジップやリブなどを付けられるアイテムということで、MA-1を作ってみたいなと。また、これまでのSIWAさんのファンの方たちにも届けていくために、もともとの人気商品である鞄をベースに、男性が持ちたいと思うサイズ感にアレンジしたトートバックも作っています。こちらも張付けや刺繍をあしらうことで、今らしさが表現できればと考えています。

一瀬:刺繍は以前から当社でも試していたのですが、まだ商品化には至っておらず・・・。藤田さんはそれをさらにアレンジして表現しようとしているので、どうなるのかとても楽しみです。

藤田:和紙は、刺繍するにしても針数が多過ぎると破けてしまうし、貼り付けようとしても圧着時の熱によってムラができてしまったりと、非常にデリケートな素材だと感じています。また、和紙をレーザーカットしてみたのですが、どうしても端に焦げ跡が出てしまって、正直苦労しています(笑)。でも、そうした条件の中で新しい表現方法を探っていくことは非常に刺激的ですね。

 

今回のようにファッション業界関係者が多く集まる場所で、このようなコラボレートをするということについて何か意識したことはありますか?

藤田:これから先、ファッションがどう進んでいくかを考えると、やはり映像や音楽、食や住などの分野にも広げていくことが必要だと考えています。ファッションだけに特化したブランドでは面白くないですし、もっと生活スタイルレベルでの提案をしていかないといけないという思いがあります。その点、SIWAさんがやられていることは自分たちにはない部分ですし、普段とは違う新しい視点でものづくりをすることで、ブランドにも広がりが出るんじゃないかと期待しています。

一瀬:SIWAは、毎日使える和紙製品というコンセプトのもとでバッグなどを作っていたこともあり、どちらかというとステーショナリーや雑貨売り場での展開が多く、ファッション分野への進出には苦戦していたんですね。素材の面白さを感じて頂き、国内外のファッションブランドやセレクトショップからコラボレーションの話を頂く機会もあるのですが、ファッションの売場にはまだまだ展開していただけていません。以前から少し違った側面から提案すれば、ファッションが好きな方にも興味を持って頂けるのでは?と思っているのですが、まだ狭い世界でしか製品を発表できていないんだと感じることも多い。だからこそ、今回のような機会に、これまで接点がなかった業界に届けられたり、新しい出会いのきっかけがつくれたら、それはとても意味のあることかなと思っています。

藤田:ファッションというのは、先へ先へ進んでいくものですが、今回和紙という伝統的な素材と融合することで、愛着や懐かしさのようなものが伝えられたらうれしいですね。何かを突き詰めて良いものを作っている方はどのジャンルにもいらっしゃいます。その中で自分が新しい表現や味付けをしていくことで新しい化学反応が起こせればと考えていますし、商品を見てくださる方たちがそれを面白がってくれたらいいなと思っています。

一瀬:先日、海外を5ヶ国回ってきたのですが、海外では「こんな和紙で製品を作っているなんて凄い!」とシンプルに評価してくれることが多いんです。これからも和紙の特性や見た目の美しさをもっと追求していきたいと思っていますし、今回もそういう部分を国内外の方たちにアピールできる機会にしたいです。

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Text by Yuki Harada

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