Interview & Report

ティルダ・スウィントン&ハイダー・アッカーマン

ティルダ・スウィントン&ハイダー・アッカーマン

ティルダ・スウィントン/女優・ハイダー・アッカーマン/「ハイダー・アッカーマン」デザイナー

ティルダ・スウィントン(Tilda Swinton)/女優
彼女の映画デビュー作である、デレク・ジャーマン監督の『カラヴァッジオ』(1985)で世間を感動させて以来、『オルランド』『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』を含む数多くの作品に出演し、記憶に残る演技で魅了し続けている。『ナルニア国物語シリーズ』や、最近の作品である『スノーピアサー』や『グランド・ブダペスト・ホテル』では、現代映画において感動的で優れた才能を持つ女優として、彼女の存在を確固たるものにした。

ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)/「ハイダー・アッカーマン」デザイナー
2013年の秋冬のパリコレクションにて、ハイダー・アッカーマンが自身の名を冠したブランドを発表して以来、流星のごとくファッション業界の中でも最も評価の高いデザイナーの一人となった。彼の特徴であるドレープフォームで複雑なデザインの美しさは、世界中のファッション関係者から絶大な支持を得る。コロンビア生まれのフランスデザイナーである彼の作品は異文化の国境で作られ、洗練されすっきりした女性らしさが特徴のブランドとなり、パリのファッション・ウィークで最も憧れのブランドの一つとなった。

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015 S/S開催に合わせ、メルセデス・ベンツのグローバルキービジュアルのモデルを務めた女優のティルダ・スウィントン氏と、彼女を「ミューズ以上の親友」と語るファッションデザイナーのハイダー・アッカーマン氏が来日した。『グランド・ブダペスト・ホテル』や『ナルニア国物語シリーズ』をはじめ、記憶に残る演技の数々で世界を魅了してきたティルダ氏と、パリのファッション・ウィークを代表するデザイナーとして世界的に注目を集めるハイダー氏に、日本のファッションや文化についての印象などを伺った。

 

まずは、ティルダさんがモデルを務めたメルセデス・ベンツのグローバルキービジュアルについて聞かせてください。

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メルセデス・ベンツ グローバルキービジュアル

ティルダ:このビジュアルは、同時に撮影したファッションフィルムがベースになっています。フィルムの舞台となった風景をバックに撮影したもので、衣装を手掛けたハイダー・アッカーマンさんの世界観が表現されています。非常に才能のあるクリエイターたちが形にしてくれた作品で、素晴らしい仕上がりになっていると思います。

ハイダー:イメージしていた通りの作品になりました。撮影現場は非常に寒かったのですが、作品の中のティルダさんからはそうした現場の厳しさはまったく感じられず、さすがにプロフェッショナルだなと感じました。

お二人ともこれまでに何度か来日されているということですが、日本についてはどんな印象をお持ちですか。

ティルダ:私が初めて日本に来たのは1981年で、その時は映画監督のデレク・ジャーマンと一緒でした。それからすでに7、8回ほど来日していますが、日本は私が暮らしているスコットランドと同じ島国ということで関心を持っています。以前に、小豆島を舞台にした日本映画『二十四の瞳』を観ましたが、非常に心に響く風景が映し出されていて、スコットランドの島と共通するものを感じました。日本とスコットランドは距離的には非常に隔たっていますが、古代から続く文化には共通性を感じますし、非常に親しみを持っています。

ハイダー:今、我々が生きている世界というのは非常に慌ただしいですが、日本に来ると伝統的な着物で街を歩いている女性を見かけることがしばしばあり、そのコントラストは私にインスピレーションを与えてくれます。多くの日本人は自分のファッションに自信を持って歩いていて、非常に優美な印象を受けます。日本のどの街に行っても、行き交う人々を観察することは大きな楽しみですが、特に東京の若い人たちからは自由さを感じます。ヨーロッパには、ここまで自分のイメージを表現できる場所は少ないですし、東京の人たちは素晴らしい表現力を持っていると感じています。

 

東京のファッション・ウィークや、ストリートのファッションについてはどのように感じられますか。

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オープニングレセプションのフォトセッションにて(2014.10.13)

ハイダー:川久保玲さんや高橋盾さんをはじめ、これまで日本は次々と素晴らしいデザイナーを輩出してきたわけですが、一体この小さな島のどこから、これだけのエネルギーが出てくるのかと不思議に思ってしまうほど、創造力にあふれていると感じます。また、ファッションデザイナーとストリートを歩いている若い人たちとの間につながりを感じますし、ファッションデザイナー以外でも、ヘアメイクアップ・アーティストの加茂克也さんをはじめ、素晴らしい才能を持ったクリエイターが数多くいることも素晴らしいですね。

ティルダ:東京のファッション・ウィークを訪れるのは今回が初めてですが、ブランドごとにそれぞれ雰囲気が異なるので、すべてがとても新鮮に感じられますね。

ハイダー:欧米のファッション・ウィークに比べると、東京は非常に落ち着いた雰囲気があり、気品を感じます。パリやニューヨークはもっとクレイジーな雰囲気ですが(笑)、東京はすべてがきちんと整頓されている印象です。

お二人は異なる立場からファッションに関わられていると思いますが、それぞれにとってファッションとはどのような存在ですか。

ティルダ:私にとってファッションは、人とのつながりと言えると思います。まさに、ここにいるハイダーさんのように、デザイナーと友情を持ち、特別な関係性を築いていくことが私には非常に大切です。私は、ハイダーさんと知り合う前から、彼がデザインする洋服が大好きで着ていましたが、実際に触れ合える関係を持つことで初めてファッションというものを感じることができるのです。私は、ファッションを専門の仕事にしている方々に比べると、まだまだ子供のように何も知らない存在ですが、ある意味ファッションに対して無知でいられる非常に贅沢なポジションにいると感じています。

ハイダー:私は幼少期をアフリカで過ごしたのですが、12歳までファッションというものが仕事になるということを知りませんでした。私がいたアルジェリアでは、女性たちはチャドルというイスラム教特有の全身を黒い布で覆う衣装を身に着けています。それが私にとっては非常にミステリアスであり、インスピレーションを与えてくれる存在で、この下にはどんな人たちが潜んでいるんだろうとずっと観察していました。この布の中に潜んでいるものを理解したいという思いが私のファッションにおける原点であり、この世界に入ったきっかけになっています。ただ、いつまで経っても、それは理解できそうにないですが(笑)。

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INTERVIEW by YUki Harada

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