初参加ブランドアンケート|TOTON
TOTON
Designer
Toton Januar
Category
Women’s / Clothing
ブランドや服作りについて
―ファッションデザイナーを目指したきっかけと、ブランドを立ち上げた経緯を教えてください。
生まれたのはインドネシアの首都ジャカルタから飛行機で北へ二時間ほどの場所にあるマカッサルという町です。生後10か月のときに父親が内戦で亡くなり、母に育てられました。アートやデザインは昔から大好きだったのですが、途上国で育つ子供にとって、それを仕事にするのは良策ではなく、目指すなら医者か弁護士、そうでなければ「正統派」の仕事、という考えが一般的でした。インドネシア大学に入って一年目は土木工学を専攻しましたが、そのあとメディア放送に完全転向しました。その方がやりたいことに近いと思ったからです。同じころにインドネシアの、ある有名ファッションデザイナーの会社でインターンとして働き始めました。卒業後もファッションデザインの仕事を続けましたが、「きちんと」ファッションを学ばないといけないと感じていました。それで、2005年にパーソンズの生涯学習プログラムのファッションスタディー科に入学しようと決めました。学士を取るには時間がかかりすぎるので、当時の私にとってそれは賢明な選択でした。学校に通いながらフリーでデザインの仕事をして、2007年にプログラムを卒業してからもそれを続けました。
自分のレーベルを持つのは夢でしたが、人生をかけた重労働になるとわかっていたので、始める勇気がありませんでした。でも2008年に母親を亡くしてから、これ以上時間を無駄にしてはいけないと気付いたのです。そこで、パートナーのハリョ(Haryo)に助けてもらって、2012年初めにTOTONを立ち上げました。2012年5月にシンガポールのブループリント・トレードショーでTOTON初のコレクションを発表しました。
―ブランドのコンセプトや服作りを通して伝えたいことは?また、提案したい男性像・女性像はありますか
私は祖国への愛を思い描きながらTOTONを始めました。長い間アイデンティティーを探し続けて気づいたのは、豊かな文化、歴史、自然を持つ祖国を誇りに思うべきだということです。その要素をすべて、現代女性のためのコンテンポラリーなデザインのレディースウェアに転換したいと思いました。異なる種類の美しさや贅沢さを理解して味わったり、芸術や文化を愛して称賛したりする女性。そういう女性は、必ずしも目立って注目の的になりたいとは思っていませんが、人とは違う特別な存在でありたいという気持ちを持っているのだと思います。
―クリエーションにおけるインスピレーション源、コンセプトメイキングの方法は?
私にとって、デザインのミューズ(女神)は常に祖国インドネシアです。インドネシアの国土、人、文化、芸術、工芸は、無限のインスピレーションの源です。インドネシアを毎回、前面に押し出す必要はありませんが、出発点は常に祖国です。
今、世界は、ひとつの大きな文化の「るつぼ」です。自国の文化を尊重することは大切ですが、それをアレンジする余裕を持つことも必要だと感じます。
何かを創るという作業は、感情がきっかけで始まることが多いと思います。私は、形や色、音楽、言葉など、感動したものすべてにインスパイアされます。よく絵を描きますが、何を描こうと決めてから描くことはほとんどなく、その瞬間に感じたものをベースに描いています。それがクリエーターとしての自分のやり方なのだと思います。何かをつかんで、感じて、デザインという形で表現するのです。
―現在の取り扱い店舗を教えてください。また、ブランドのファンはどのような人たちですか?
いまはシンガポール、ニューヨーク、東京、リヤド、ジッダ、ドバイ、それからジャカルタに本拠があるオンライン店舗に商品を置いています。代表的な顧客像は、大都市に住み、教育水準が高く裕福で、芸術や文化を好む20代から30代前半の女性です。
―ファッションで影響を受けたブランドやデザイナー、スタイル、カルチャーは?また、その理由は?
私にとって、インドネシアの文化こそが無限のインスピレーションの源で、今後もそれは変わることはないでしょう。想像がつかないほど豊かな自国の文化をモダンなデザインに創り直すことは、私なりの文化の保存と世界発信の活動だと思っています。影響を受けたデザイナーはミウッチャ・プラダ、ドリス・ヴァン・ノッテン、そして今は亡きアレキサンダー・マックイーンです。ミウッチャ・プラダは大胆な視点で常に美の規範や定義に挑戦しているところが大好きです。ドリス・ヴァン・ノッテンは、世界の様々な文化を独自の控え目ながら才気あふれるデザインに転換するという手法が大好きです。そして、アレキサンダー・マックイーンはドラマとロマンスの達人で、ファッションを「身に着ける服」を超えた何かに高めることができる人でした。
2015-16 A/Wについて
―MBFWT 2015-16 A/Wへの参加の動機は?
東京(MBFWT)でブランドとコレクションを発表することは、私たちの夢でした。シーズンごとに創造力が伸び続け、新しい着想が発表され続けている、最高にクールなイベントのひとつだと思います。
―2015-16 A/Wシーズンのコンセプトやイメージを教えてください。
インドネシア文化の精神的側面からインスピレーションを得て、「超越」とつながろうとする人類の試みを探求するコレクションです。
中部ジャワ州のバティック・トゥンパルのモチーフを、抽象プリント、カットアウト、刺繍にアレンジしています。記号の要素が強いダヤク族のタトゥー模様を参考に、シルエットでは隠遁主義、アクセサリーではバリの木彫りを取り入れて、TOTON FW15というひとつの考察を創り上げています。
―ショーもしくはインスタレーションの構想を差し支えない範囲で教えてください。
2015年秋冬コレクションのテーマは「精神性」です。ショーと展示は、静かで落ち着いた中にも、ちょっとしたサスペンスの要素が加わったものになると思います。
今後
―ブランドとしての展望を教えてください。
世界に市場を展開することと、商品やデザインを向上させることです。インドネシア内外でより多くの人たちと接点を持つ努力をしつつも、自分たちの主張からぶれないようにしたいです。
TOKYOについて
―あなたにとってTOKYOとはどんな街ですか?
創造性と文化がテクノロジーと融合して、より良い未来のために新しい発想を探っている街です。
―東京で好きな街もしくはスポットと、その理由を教えてください。
東京のほぼ全部が大好きです。一番好きな場所のひとつは上野です。動物園以外にも美術館や博物館がたくさんあって、定期的に特別展が開かれています。美しいお店と隠れた宝物が建ち並ぶ表参道・青山エリアも大好きです。
―お気に入りもしくはオススメのショップ(ファッション、インテリア、飲食などジャンル問わず)、施設、スポットなどを教えてください。
ビンテージものやアンティークに再び命を吹き込むというパス・ザ・バトンのコンセプトがとても好きです。アップサイクルやリサイクルを非常にオシャレにやっていますし、間違いなく環境にもやさしいでしょうから。コム・デ・ギャルソン・トレーディング・ミュージアム、オープニング・セレモニー、ドーバー・ストリート・マーケットなど厳選された品を扱うショップも好きです。