Interview & Report

アンナ チョイ

アンナ チョイ HAENGNAE (ヘンネ)

HAENGNAE デザイナー

1992年生まれの韓国国籍を持つ日本育ちのデザイナーanna choi。ニューヨーク、日本でファッションデザインを学び、2017年に文化服装学院在学中に神戸ファッションコンテスト特選を受賞後、特待生としてイギリスのノッティンガム・トレント大学へ留学。 卒業後、Graduate Fashion Week(GFW) で発表したオートクチュールコレクションがVogue Taiwan等業界紙へ掲載され注目を集め、メゾンから複数オファーを貰うも、自身のブランド立ち上げを志し日本に帰国。
2021AWコレクションを皮切りにブランドをスタートさせる。

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2021AWコレクションでのデビュー以降、類を見ないスピードで成長を続けるブランドHAENGNAEを率いるデザイナー アンナ・チョイ。多様な文化を吸収した経験に培われた表現力と確固たるアイデンティティによって生まれる彼女のコレクションは唯一無二の世界をつむぎ、世代問わず多くの女性の心を掴んでいる。TOKYO FASHION AWARD 2024を受賞し望んだパリショールームでは新ブランドANNA CHOIをローンチし、今後の展開も期待される彼女にパリで話を聞いた。

デザイナーを志したきっかけは?

小学校卒業時に祖母が初めてパリに連れて来てくれて、「今は分からなくても良いからとにかく本物を見なさい」とメゾンの本店や美術館に案内してくれました。日常で着用するファッションとは異なるオートクチュールという世界があることをそこで知りました。そうした経験と、幼少期から洋服が好きで、絵を描いたり、何かを作ったり表現することが好きだったこともあって、自然とファッションデザイナーになりたいと思うようになりました。

キャリアの積み方もユニークですよね

4年制の女子大に進学したのですが、在学中に自分の手を動かす仕事がしたいと強く思うようになり20歳でNYのアートスクールへ留学しました。語学学校とアートスクールに通った後、ファッションスクールへ進学するつもりだったのですが、アメリカのファッションスクールは縫製員の方が縫うので自分で縫わないことが多く、ゼロからイチまで自分で手がけられる人になりたかった私はミシンや細かな作業工程までしっかり学びたいと文化服装学院に進むことにしたんです。NYでは自身の考えを理解して周囲に説明するというコミュニケーションを叩き込まれ、装苑賞を始めとしたコンテスト受賞に結びつきました。受賞した中の一つに神戸ファッションコンテストがあり、英ノッティンガム芸術大学へ1年間留学する権利をいただきヨーロッパの文化を肌で感じながら卒業制作しロンドンで発表させていただきました。

卒業後、HAENGNAEをすぐ立ち上げられたんですね

ヨーロッパのメゾンブランドで働きたいという考えもあったのですが、ちょうどコロナ禍で日本を離れることができず、それならという思いでHAENGNAEを2021AWシーズンから立ち上げました。ブランド経験はそれまでありませんでしたが、ブランドビジョンが自分の中に明確にあったので、それを一つずつ丁寧に形にすることで今に至っています。着てくださる方の気持ちを大切にしたものづくりを行い、自分でも何度も着用してトライ&エラーしたり店頭に立って直接お聞きしたお客様の声を反映させたりと着心地の良さ、手入れのしやすさ、体型を問わないフォルムメイキングなど細やかなこだわりを追求しています。

順風満帆に見えますが、ブランドスタート後ここまでの3年半で戸惑うことはありませんでしたか?

戸惑うというより、ブランドはデザイナーとしての自分の思いだけではなく、多くの方が関わってくださってこそ成立するものと始めてみて強く感じましたね。サポートしてくださる周囲の方々のためにも、先陣を切って真摯に自分の描いたビジョンを走っていかなければならないと感じています。

2024年3月に開催された初めてのランウェイショーについて、今振り返ってみていかがでしたか?

本当にやってよかったと思うし、またやりたいと思う魅力がショーにはあります。演出家 若槻善雄さんを筆頭に素晴らしい方々に関わっていただくことが出来て、当時出来る最大限の表現を行えたと思います。

ショーはキャットウォークではなく一つのルックに集中してもらえる正方形のステージ構成とし、香り、チェロの生演奏を加え、視覚、聴覚、嗅覚を刺激できる舞台のようなクラシックでもありモダンなショーにしたいと考えました。観た方からは「好きなものを詰め込んだ、らしいショーだったね」と言っていただきましたし、ショーをきっかけにビジネス面にも良い影響がありました。

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HAENGNAE 2024 A/W collection

今回パリではご自身の新ブランド「ANNA CHOI」を発表されました。この狙いを教えてください

これまでも一点物の制作は続けてきたのですが、オートクチュールコレクション「ANNA CHOI」として発表させていただきました。目指しているビジョンは同様ですが、HAENGNAEの場合はピースを作った先にお客様がいらっしゃり、ANNA CHOIは お客様と共にお客様のためだけに作っていくというアプローチの違いがあります。

ファーストコレクションとなる今回は、6月にパリ・オペラ座で観たバレエ「Giselle」をコンセプトとしました。一見華やかでウェディングドレスのようにも見える純白なドレスが実は死装束だったというストーリーで、私の考えと共鳴する部分を感じました。軽やかに見えるファーストコレクションの中にも、新しくスタートするという強い覚悟や意志を込めています。パリで仕入れたシルクチュールやパール刺繍素材など、プレタポルテではどうしてもこだわりきれない仕様、ディテールも注力して制作しました。

実際に新ブランドを発表されて今日で3日目ですが、今後のブランド展開についても展望を聞かせてください

発表してみて、日常で着用できるプレタポルテも好きだし、相手の顔が見える中での手の込んだオートクチュールも好きだと改めて思いました。今回はオートクチュールに専念した発表としましたが、次シーズンはプレタポルテとオートクチュールを融合させたものづくりをしたいと考えています。ヨーロッパとNYはパーティシーンも多いですしエリアとしても挑戦したいですね。生活の中で影響を受けて来た思い入れの深いお店、バーグドルフグッドマン、リバティ、ボンマルシェなどで選んでもらえるように、これから更に勉強を重ねて経験を積み成長し続けていきたいですね。

デザイナーとして挑戦してみたいことは?

オートクチュールの世界はとても深く、求めているところはまだまだ先にあり、技術の習得をしていきたいと思っています。チャンスがある限り多くのことを学びクチュールの糧にしていきたいですね。

世の中は洋服含めて素敵なもので溢れているので、誰かの真似をしたようなものづくりは必要なくて、私にしか出来ないクリエイションをすることが重要で、デザイナーにはその責任があると思っています。

Interview by Tomoko Kawasaki
Photography by kazumi Miyamae

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