HEAVY Selection(デザインディレクター) M.L トリチャック・シトゥラボン
MBFWT 2015 S/S 海外ゲストインタビュー vol.2
「HEAVY Selection」オーナー / チャラームチャイ・ワジータウィーシン氏(右)
「HEAVY Selection」デザインディレクター / M.L トゥリチャック・シトゥラボン氏(左)
[ URL ] HEAVY Selection Facebook
Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015 S/S 開催に合わせ、タイ・バンコクのセレクトショップ「HEAVY Selection(ヘビーセレクション)」からオーナーのChalermchai Wajeetaweesin(チャラームチャイ・ワジータウィーシン)氏と、デザインディレクターのM.L Trichak Chitrabongs(M.L トゥリチャック・シトゥラボン)氏が来日した。デニムを中心にした日本やアメリカのメンズウエアを取り扱い、バンコクに4店舗を展開する人気ショップで内装などデザイン面のディレクションを担当しているシトゥラボン氏に、バンコクのメンズファッションの動向や、日本のファッションに対する印象などを伺った。
日本にはどのくらいの頻度でいらっしゃっていますか。
年に4回くらいは来ています。ただ、いつもはほぼ取引先のブランドとやり取りをするだけなので、今回はJETROさんに招聘していただき、新しいブランドと出会える良い機会をいただけたと感じています。私たちはメンズウエアを扱っていますが、ショップのコンセプトに合うブランドを見つけたいと思っていますし、メインの商品であるデニムに加え、小物なども仕入れらないか検討しているところです。
HEAVY SelectionFacebookより
これまでのシトゥラボンさんのご経歴と、バンコクのショップ「HEAVY Selection」について教えていただけますか。
私はもともとグラフィック関係の仕事をしていて、ステーショナリーなどのデザインもしていましたが、ずっと趣味として好きだった洋服に関わる仕事にしたいと思うようになり、現在の仕事に就きました。HEAVY Selectionは、タイ全国に200店舗ほど展開している老舗のシューズメーカー「HEAVY」が母体になっているメンズウエアのセレクトショップで、現在はバンコクに4店舗を展開しています。ショップのコンセプトは「NEW VINTAGE」で、日本やアメリカのデニム系のブランドを中心に取り扱っています。
来店されるお客さんの層を教えて下さい。
25歳から45歳くらいの社会人が中心で、経済的に余裕のある方やファッション関係の仕事をされている方が多いです。また、多くのバンコクのショップと同様に、私たちのお店もすべて大型商業施設の中に入っていますが、各施設ごとに来店するお客様の特性が異なるので、それに合わせて各店舗で商品構成を変えています。例えば、サイアム・パラゴンではご年配の富裕層のお客様、サイアムセンターではより若いお客様、エンポリアムでは日本人を中心とした外国人のお客様をターゲットにしています。
バンコクの男性の間では、どんなファッションが好まれていますか。
一般的なバンコクの男性は、女性に比べてファッションへの意識はそう高いとは言えず、トレンドを重視するような方も少ないです。スタイルとしては、デニムを中心としたコーディネートが好まれる傾向があり、日本の雑誌『Free & Easy』などはタイでも人気があります。また、国内にもメンズブランドはありますが、欧米や日本などに比べるとまだかなり遅れているというのが現状で、ファッションに関心が高い方は、海外のブランドを選ぶケースが多いです。
欧米や日本の人たちは、季節に応じて装いを変えていますが、年間を通して高温多湿の国であるタイの方たちは、どのようにファッションを楽しんでいるのでしょうか。
おっしゃる通りタイは年中暑いので、季節に応じで洋服を変えるということはありません。ただ、バンコクなどでは冷房の効いている建物の中で過ごす時間が長いので、気候的な影響はあまりなく、それぞれがデザイン性を重視して洋服を選んでいると思います。
HEAVY Selectionでは、「KAPITAL」をはじめ日本のブランドも多く取り扱っていますが、日本のブランドにはどんな印象をお持ちですか。
日本のブランドの大きな魅力は、なんといっても品質の高さと素材の良さです。私が初めて日本のブランドと出会ったのは20代後半の頃で、それまではリーバイスのジーンズなどアメリカの洋服を着ていましたが、ブランド名にこだわらず、純粋に品質という部分に目を向けた時に、日本のブランドが良いのではないかと感じました。アメリカの古いヴィンテージなどには非常に品質が高いものも多いのですが、時代の流れとともに量産化にシフトしていったことで、質が下がってしまった面があると感じています。一方で、日本のブランドというのは、古き良き時代のアメリカのオリジンを目指して商品開発をしているところも多く、非常に品質が高いと思います。
日本人のつくり手と直接コミュニケーションを取る機会はありますか。
取り引きをしているブランドによって異なりますが、直接工房に行ってお話をさせていただくこともあります。先日商談をさせていただいた鞄のブランドも、伝統的な技法で染色していて、それが非常に魅力的だったので、工房にもお伺いしてみたいと思いました。やはり工房に行くと、そのブランドの雰囲気がよく分かりますし、そこで得られるものは多いと感じます。
東京のストリートファッションについてはいかがですか。
東京の若い人たちは、自分たちが好きだと思う洋服を自由に着ていて、しっかり個性が表現できているように見えます。タイの人たちも自分の個性を表現したいという思いは持っているのですが、周囲から変わった目で見られてしまうことをおそれ、無難な洋服を選んでしまう傾向があります。その点、日本の方たちは非常に勇気があるし、自由な考え方をお持ちだと感じます。
東京で特に好きな場所があれば教えて下さい。
代官山、恵比寿、中目黒などには日本人の友人も多く、好きなエリアですね。この界隈にあるショップも色々見て回るのですが、私は店舗のデザインなども担当しているので、参考になるアイデアをたくさん得られます。東京のショップは、内装のデコレーションなどが美しく、細部を非常に重視されているように感じます。また、もともと私は日本の木材が好きですが、そうした素材が使われたシンプルでシックなインテリアを見るととても素敵だと感じますし、日本の方々がこうした伝統的な文化や技術を大切にされているということを随所から感じ取ることができます。
日本の人たちについては、何か感じることはありますか。
仕事柄、ファッション関係の方とお付き合いすることがほとんどですが、性格的にとてもチャーミングな方が多いと感じます。また、商談が終わった後にみんなで一緒にワイワイすることができたり、友人のような感覚で仕事ができる方々ですね。また、タイ人は時間にルーズなところがあるのですが(笑)、その点も日本人はしっかりしていますし、素晴らしいビジネスパートナーだと思います。
東京のファッション・ウィークの印象も聞かせてください。
参加している方たちが非常に多く、活気を感じます。また、私は、これまでにない発想を取り入れながら、常に新しいものを発信していくブランドやデザイナーが好きですが、東京のファッション・ウィークには、そうしたものがたくさん集まっていると思います。
最後に、HEAVY Selectionの今後の展望を教えて下さい。
来年2月に新店舗をオープンさせる予定で、その後もさらに店舗数を増やしていきたいと考えています。また、今後は、東南アジアの中心にあり、ファッションへの関心も高いタイ・バンコクという場所の強みを活かしながら、「KAPITAL」などをはじめ、我々が扱っているブランドを近隣の国などにも広くPRして、売り上げを向上させていければと考えています。