Interview & Report

インターナショナル・ウールマーク・プライズ 2014 / 15 アジア地区大会

インターナショナル・ウールマーク・プライズ 2014 / 15 アジア地区大会 審査員コメント

2014.7.17 アンダーズ東京

ザ・ウールマーク・カンパニーが主催する国際的なファッションコンテスト「インターナショナル・ウールマーク・プライズ(The International Woolmark Prize)」のアジア地区大会、審査員のコメントを紹介いたします。

【審査員
アンジェリカ・チャン/中国版『VOGUE』編集長
鈴木 健彦/株式会社三越伊勢丹
中川 一/株式会社三越伊勢丹
ジェシカ・ゴメス /モデル兼デビット・ジョーンズ代理人
鈴木 正文/GQ japan編集長
タクーン・パニクガル/「タクーン」オーナー兼デザイナー

アンジェリカ・チャン/中国版『VOGUE』編集長

angelica

ファッションにおけるアジアの位置づけは、これまで買い手(市場)とされてきましたが、最近では日本をはじめとするアジアのデザイナーのレベルが上がってきており、新しいクリエイションを生み出す作り手(デザイナー)を輩出するエリアとしても注目されてきていることを感じます。そういう背景から、世界の市場に出ることを念頭に置いたものづくりをしているか、さらに継続的かつ戦略的なビジネス構想を持っているか、ということを重視し、審査しました。日本を筆頭に、近年では中国や韓国、香港にも力のあるデザイナーが増えてきていることを実感しています。今後、アジア全域から世界にはばたくようなデザイナーが生まれてくることに期待しています。


株式会社三越伊勢丹

紳士・スポーツ統括部 紳士第三商品部 部長 鈴木 健彦
私は紳士服の担当ですが、今回はメンズ、ウィメンズともに審査する機会を頂くことができ、非常に良い経験となりました。IWPではウールを使ったクリエーションがテーマになりますが、素材にフォーカスする方から特徴的なデザインを展開する方まで、さまざまな解釈がありましたし、同時に自国のアイデンティティや文化を発信されようとする各デザイナーの熱意も感じられました。このアジア予選をステップに自分たちのブランドを世界に広めていきたいという強い意思表示が感じられる方も多かったですし、我々小売店の立場としても、こうした機会を通じて若い才能を支援していくことに使命感を持ち、業界全体を盛り上げていきたいと考えています。

婦人・子供統括部付部長 中川 一
今回は、ウールをテーマにしたユニークなコンペティションの審査をさせて頂き、非常に有意義な時間を過ごすことができました。各国のデザイナーが参加するコンペティションということもあり、それぞれのデザイナーがブランドの強みを表現するだけでなく、自らのアイデンティティというものを強く意識されているようでした。我々はリテールパートナーとして、消費者が買ってくれるかというところに審査のポイントを置きましたが、すべての審査員が、世界の舞台でビジネスができる人材を育てるというビジョンを共有していることを感じました。近年は、新しい才能を世に紹介し、支援していくことができるこのような機会が増えていますが、非常に良い傾向だと思います。


ジェシカ・ゴメス /モデル兼デビット・ジョーンズ代理人

ジェシカ氏

今回の出品作のクオリティの高さには感心しましたし、アジアがファッションの中心地になりつつあることを示して余りあるエネルギーや将来性を感じることができました。最初に審査員の依頼があった時は非常にエキサイティングでしたが、同時にデザイナーでもエディターでもない、モデルという立場である私に何ができるのかということを考えました。審査を通じて徐々にわかってきたことは、私自身がどんな洋服を身に着けたいと思うのか、私の友人たちはどう考えるのかということを基準にジャッジすることが自分の役割だということでした。他の審査員の視点を知ることができたことも良かったですし、審査員の一員として参加することができ、とても幸せに感じています。


鈴木 正文/『GQ japan』編集長

gqsuzuki

各国のデザイナーが自国の文化への思い入れを感じさせる表現をしていて、全体を通して独特のアジア感のようなものがありました。コンテストという場だからこそ、デザイナーたちも「自分が何者なのか」ということを深く考えたでしょうし、世界的なファッショントレンドとはまた違う次元のクリエーションだったと思います。洋服に制度的な意味がなくなっている現代において、かつて西洋の主流だった男女の性差や肉体美をアピールする服作りから、「ワンジェンダー」とも言えるような性差の意識が希薄な服作りへのシフトが始まっています。これはもともと日本人が行ったことですが、アジアのベースにあるこうした考え方が、洋の東西問わずスタンダードになりつつあるように感じています。


  タクーン・パニクガル/「タクーン」オーナー兼デザイナー

タクーン氏

IWPが他のコンテストと異なる点は、ウールを革新するという具体的なタスクがデザイナーに課せられていることです。また、ビジネスとしての持続性やグローバルマインドを持っているのかということが問われる点も特徴です。私自身デザイナーのため、有名な編集者や百貨店などが集う審査の場で、自分の情熱をプレゼンテーションすることがいかに大変かはわかっているつもりですが、その中で参加デザイナーたちは、非常に高いクラフトマンシップというものを伝えてくれたように感じます。近年、アジアのデザイナーたちが次々と表舞台に現れていますが、大きな人口を抱えるアジアは市場としても非常に大きな可能性を持っていると感じています。


INTERVIEW by Yuki Harada

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