Interview & Report

柴田 麻衣子 Maiko Shibata

柴田 麻衣子 Maiko Shibata RESTIR クリエイティブディレクター

RESTIR クリエイティブディレクター

日本を代表するセレクトショップ「RESTIR」で長年ウィメンズのバイイング、クリエイティブディレクションに携わる柴田麻衣子氏。国内外のファッションブランドに精通し、独自の選美眼によるセレクションが高く評価されている。2021SSシーズンからは新しいファッションショーの楽しみ方を提案する楽天ファッション・ウィーク東京の人気企画「DIGITAL VOICE」にも参加し、会期を盛り上げる原動力に。そんな柴田氏に、開幕を間近に控えた楽天ファッション・ウィーク東京2023SSの期待ブランドや日本ブランドに対する印象など、率直に話を伺った。

現在のRESTIRでのドメスティックブランドお取り扱い状況を教えてください。

コロナ以降、ドメスティックブランドの取り扱い自体は増えています。今回ファッション・ウィーク東京にも参加する「FETICO」、「HAENGNAE」「BASICKS」を含めて、ウィメンズでは現在6ブランドくらいの取り扱いですが、店舗を持っていないブランドのPOP UP SHOPを開催することもあります。「MIKAGE SHIN」のPOP UPを行ったときは、ご来店されたお客様の9割が男性だったりして、新しい客層の方々にご来店いただきました。
コロナ禍でデジタルシフトが進んだことで、私たちのような卸売が出来ること、ブランドが自店舗で出来ることの棲み分けが難しくなって、ブランドが私たちに求めることも大きく変わり、お客様の欲しいものも変わりました。店舗として伝えていく意味のあるブランド、商材を求めていますし、お客様からも求められていますね。

お客様のお買い物の仕方に変化を感じていますか?

コロナ当初は、派手なアイテムの中でも地に足がついたアイテムが売れていましたが、今はチャレンジングなアイテムが売れていきます。これまでだとブランドネームでお買い物されていた方でも、モノありきで選ばれるようになっています。初回のお取り組みでまだ誰も知らなかったような時期でも唯一無二の存在感があって、心が上がるものとして、「HAENGNAE」はとても喜ばれました。お客様の見る目も本当に上がっている。だから、今回 JFW NEXT BRAND AWARD で「HAENGNAE」の受賞は嬉しいですね。

23SSシーズンは海外のコレクションへも足を運ばれる予定ですか?

はい、コロナ以降、今回は数年振りにパリ・ファッションウィークのウィメンズへ行ってきます。以前のような動き方はできないのと、ブランドのスケジュールもバラけていて正直見辛くなった印象ですね。各国とも、コロナを経てファッション・ウィークのあり方が変わってきているように感じています。

楽天ファッション・ウィーク東京に関しては、どのようなイメージを持っていらっしゃいますか?

コロナ前までは私が見たいドメスティックブランドはパリで発表していたり、独自のスケジュールでショーしたりしていたので、東京のファッション・ウィークを見る機会はあまりなくて・・・。世界的なトレンドとは違う独自のベクトルで発信されていて、懇意にしているブランドのみを見に行くような感じでしたね。会場やライティングなどが定型になり過ぎていて、パリ帰りの感覚で東京を見ると興奮できないのが正直な感想でした。
しかしコロナ禍に入り、DIGITAL VOICEを通して楽天ファッション・ウィーク東京に関わるようになって、面白いことをやっているブランドがたくさんあるなということに気づきましたね。デジタル配信のブランドも今は多くて、先シーズンだと京都の染色工場を舞台にした「9M」など、発信しているコンテンツが魅力的で驚きを感じる提案がありました。日本でしかできない技術や生産のあり方を含めたプロモーションは良いですよね。「IRENISA」も色使いが特徴的で気に入ったブランドです。「BASE MARK」や「Re:quaL≡」も趣向を凝らしたショーで記憶に残っています。また、by Rが始まったことで、消費者を巻き込めるようになったのはすごく良いなと。普段東京では見られないブランドのショーを見ることが誰もができますし、ブランドのアイテムをその場で買える体験はお祭り気分で楽しい。

日本のマーケット全体はどう捉えてらっしゃいますか?

こんなときでも装飾主義、着飾る意欲が高いですよね。ヘアカラーもそうだし。限界はあるけど、ボディポジティブな露出も増えてきています。ストレスが溜まっていることへの反動が、SNSでのフィルターをかけた発信からリアルな演出に移ってきているような印象があります。店舗でも派手なものから売れていて、今までよりも自分のために洋服を着るという感覚が世代問わず浸透していますね。ヒールの長さも5cmが売れていた時代から、5cmか11cmしか売れていない。中間が存在しない。ブランドの提案もそうで、中間的なものは売れずに残っていきます。

今注目されているブランドはありますか?

国内なら今回JFWOの ブランドサポートプログラム でも受賞した「FETICO」でしょうか。これまでに国内では存在しないジャンルで、女性性を前に出す姿勢は、海外へのアプローチもできるブランドだと思って注目しています。「SARTOGRPH」にも注目していて、国内外のマーケットをよく理解していて、ものづくりの発想が内向きじゃなくて、良い意味でゆとりを感じるファッションだと思います。
海外だとコペンハーゲン・ファッションウィークに注目していて、当たり前のように全ブランドが環境を配慮したものづくりをしているのに、攻めたデザインですよね。「GANNI」が出始めた頃はガーリー要素が強かったが、今はそれにパンキッシュさや強さのある提案が出てきて面白いと思います。最近見たブランドだと「STINE GOYA」「BAUM UND PFERDGARTEN」「Holzweiler」あたり。今までだとパリでもラグジュアリーブランドを見ることが多かったですが、今は「coperni」のような若手のブランドを見ていますね。
あとは韓国人デザイナーにも注目しています。「rokh」の他にも、ソウルで発表している「BONBOM」など良いブランドが出てきています。

海外ブランドを中心にウォッチされている立場で、ドメスティックブランドに求める要素はどんなものでしょうか?

東京で発表されているブランドは、独自の路線を走っているところが多く、着用できるシーンが限定されているように感じています。同じアジアでもソウルや上海のブランドは、一流ホテルでディナーを食べることもできるファッションなんです。必ずしも一流ホテルを想定する必要はないですが、着る人に自由度があることはもっと必要かなと。パリに出ていけるブランドがこんなに多い国は他にないので、自分たちのやりたいことをやるというコアは守りながら、もっと多くの人が着用できるような、広い視野も持てたらなと思います。

最後に、23SSシーズンの楽天ファッション・ウィーク東京で注目されているブランドを教えてください。

「FETICO」はもちろん、「AYÂME」「BASICKS」「kudos/soduk」「ANREALAGE」に注目しています!今シーズンもDIGITAL VOICEに参加させていただいてるので、様々なコレクションを拝見できることを楽しみにしています。

■「DIGITAL VOICE RECOMMENDATION」
日本・海外で活躍するファッションジャーナリスト、エディター、バイヤー達がRakuten Fashion Week TOKYO 2023 S/Sで発表したブランドルックやコレクションショーの見どころ・注目アイテム等をレコメンドします。

Maiko-Shibata

レコメンドメンバー(ABC順)
秋元 剛(AKIMOTO Inc. ディレクター)
AYANA(ビューティライター)
柴田 麻衣子(RESTIR クリエイティブディレクター)
Tracey Cheng(Vice President of Merchandising(Womenswear))
マスイユウ(ファッションジャーナリスト)

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