ニック・ウースター Nick Wooster/WOOSTER CONSULTING ファウンダー、クリエイティブ・ディレクター
AmazonFWT 2018 S/S 海外ゲストインタビュー vol. 4
Calvin Klein(カルバンクライン)、Barney’s New York(バーニーズニューヨーク)、Neiman Marcus(ニーマン・マーカス)、Bergdorf Goodman(バーグドルフ・グッドマン)のファッションディレクターを経て、現在はさまざまなブランドのアドバイザーを務める。
[ Website ] http://www.nickwooster.com/
[ Instagram ] https://www.instagram.com/nickwooster/
[ Twitter ] https://twitter.com/nickwooster
ニーマン・マーカスやバーグドルフ・グッドマンなどでメンズファッションディレクターとして活躍した後、現在はさまざまなブランドやショップにアドバイザーやディレクターとして関わっているメンズファッションシーンの重要人物・Nick Wooster(ニック・ウースター)氏。今回、Amazon Fashion Week TOKYO 2018 S/SとTOKYO FASHION AWARDの審査及び第4回受賞者発表式の開催に合わせて来日していた彼を取材し、日本のファッションの特徴やファッション・ウィークの印象、東京でのお気に入りスポット、さらに興味深い来日時のエピソードまでさまざまな話を伺った。
ニックさんは継続的に日本にいらっしゃっているそうですが、最近の東京のファッションについて何か変化を感じることはありますか?
ファッションというものは常に3年から5年の周期でシフトしていくものなので、当然東京のファッションにも年々変化が伺えます。特に最近は、しっかり仕立てられたテーラードスタイルは影を潜め、“スーパーストリート”とも言えるほどカジュアルにシフトし、世界的な潮流でもあるオーバーサイズのファッションが東京でも確実に増えていると感じます。
来日される際に必ず足を運ぶエリアやスポットがあれば教えてください。
東京の街はそれぞれのエリアに魅力があり、日本に来た際はそれらをすべて網羅しないと気が済まないくらい(笑)。例えば、銀座であればドーバーストリートマーケット、六本木ならユナイテッドアローズの新しい旗艦店、新宿ならビームス ジャパン、恵比寿はキャピタル、代官山はオクラといったようにエリアごとにお気に入りの店があり、それらをルーティーンのようにコンプリートしていかないと満足できないんです。
前回の来日時には、ドーバーストリートマーケットがある銀座で、大島紬の着物も仕立てられたという噂を聞きました。
その通りです。今回も2回目のフィッティングのために銀座もとじに伺い、出来上がったものをニューヨークに送ってもらうようにお願いをしてきたばかりです。今は、例えばスーツを仕立てようとするなら、ロンドンのサヴィル・ロウはもちろん、イタリアであろうと香港であろうと世界中どこでもできてしまう時代ですが、着物に関しては、やはりその文化が根づいている日本で仕立てるのが最も理に適っていると思ったのです。着物のことはそれほど詳しくないのですが、伝統的な手法でしっかり仕立てていただいているはずです。
着物など日本の伝統的な衣服の文化や技術などにも興味があるのですか?
特に伝統的なものだから関心があるということではなく、純粋に美しいものへの興味が強いんです。だから今回も着物の伝統は踏まえつつも、切りっぱなしにするなど普通ならしないような仕立てをお願いしました。こうしたオーダーにも柔軟に対応していただけたので、モダンで自分らしいスタイルの着物になったのではないかと思っています。具体的にどんなシーンで着るかを決めているわけではなく、帯をちゃんと締められるかも心配ですが(笑)、ニューヨークやヨーロッパでパーティがある際に着ると面白いかなと考えています。
現代の日本のファッションについてもお聞きしたいのですが、日本のブランドのクリエーションにはどんな特徴があるとお感じですか?
まさに今お話したような日本ならではの衣服やものづくりの歴史や伝統と、現代的なエッセンスがうまく融合している点が日本のファッションの特徴だと感じています。例えば、コムデギャルソンのような非常にアヴァンギャルドなブランドが世界的に知られている一方で、伝統的な手法にこだわり、職人的な生地づくりを行っているブランドもあり、これらが共存し、しのぎを削っている環境こそが日本の独自性であり、大きな魅力になっていると思います。
東京のファッション・ウィークについてはどのような印象をお持ちですか?
回を重ねるごとに進化しているように感じます。オーガナイズの面では、Instagramがこれだけ普及している状況の中で、それに対応するかのようにショー会場も1ヶ所に固定せず、バラエティに富んでいて良かったと思います。インターナショナルブランドの参加が増えていることも、海外メディアからの注目度という点ではプラスになります。今回は、sacai(サカイ)やUNDERCOVER(アンダーカバー)、HYKE(ハイク)、TAKAHIROMIYASHITATheSoloist.(タカヒロミヤシタザソロイスト.)などの参加が、ファッション・ウィークにインターナショナルな雰囲気を与えているように感じました。
最近、ニックさんが携わっているプロジェクトについてもお話しいただけますか?
小さなプロジェクトは並行していくつも動いていますが、現在のメインの仕事になっているのは、アメリカ・テキサス州にある「フォーティ・ファイブ・テン」というセレクトショップのメンズファッションディレクション、イタリアのスポーツウエアブランド「ポール&シャーク」のアートディレクション、さらにアメリカのプレミアムスニーカーブランド「グレイツ」のサポートの3つになります。
これまで、さまざまな経験をされてきたニックさんですが、今後ファッション業界に対してご自身が果たす役割や、将来的にしてみたいことなどを教えて下さい。
自分の大きな役割は、常にお客であり続けることだと考えています。もちろん私は洋服やショッピングが大好きですし、そうしたユーザーの視点を維持しているからこそ、自信を持ってリアルな意見や批判が言えるのだと思っています。これからも自分が好きなブランドやショップ、あるいは尊敬できる人たちのことを、あくまでもお客の立場から応援し続けたいですね。また、具体的なプロジェクトというわけではありませんが、数ある世界の都市の中で、私が働きたいと思っているのは東京とロンドンなんです。しかし、今のところどちらの都市にも足を運ぶ機会はあまり多くないので、今後、何かのプロジェクトなど良い機会があればぜひ関わりたいですね。
Interview by Yuki Harada
Interpretation by Aiko Osaki