Interview & Report

砂川 卓也

砂川 卓也 mister it. (ミスターイット)

mister it. デザイナー

大阪府出身。Ecole International de Mode ESMOD Parisを首席で卒業。
2012年から、Maison Martin Margielaでメインコレクションとオートクチュールライン 「Artisanal」のデザイナーチームの一員となる。パリにて「Collection Zero」を発表。
その後、帰国し、2018年に「mister it.」を立ち上げる。

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パリで経験を積んだアーティザナルなクリエイションとパーソナルなアプローチによって発表されるコレクションが毎回話題となり、東京で独自のポジションを確立しているmister it.。2024年3月にはブランド初となるランウェイショーをRakuten Fashion Week TOKYOにて開催し、海外でのショールームも経験した。ブランドとして着々と海外を見据えるmister it.のこれまで、これからについて、ショールーム開催中のパリでデザイナーの砂川卓也に話を聞いた。

ご自身でブランドを立ち上げた経緯を聞かせてください

父親がスカーフを作っていて兄もスニーカーやファッションが好きだったこともあり、幼少時代からファッションに自然に興味を持っていて、学生の頃から自分のブランドをやりたいという想いがありました。専門学校を卒業後渡仏しブランドを始めると決めたときに、パリで一緒に働いていた同僚や友人たちのためだけに洋服を作って感謝の気持ちを返したいと思い、「コレクションゼロ」を製作しました。この人はこういう服を作ったら喜んでくれるかなと一人一人想像しながら制作し、お世話になった10人を会場に招待してプレゼンテーション形式で発表しました。一人のために作った洋服だったにも関わらず、欲しい、買いたいと言ってくださる方が結構いて。この経験が出発点となり、「誰か一人のために作られた洋服」という今のデザインアプローチ、ブランドコンセプトに繋がり、その姿勢を今も変えずにものづくりしています。

クリエイションにおけるインスピレーション源は?

最初に作った10人とその後新しく出会った人たちからインスピレーションを受けて、今もその人たちに向けてコレクションを作り続けています。パリでクチュールに携わっていたので、人の顔を思い浮かべながら作る」というプロセスが好きで楽しいですし、自分に合っている作り方だと思います。

mister it.で提案したいファッションについて教えてください

クチュールメゾンのデザイナーとして働いた実体験とクチュールが好きという想いがあるからこそ、綺麗で美しい、遠い存在であるオートクチュールを身近なものにしていきたいと「身近なオートクチュール」というコンセプトを掲げています。重厚感を軽やかにしたり、クチュールテクニックを日常使いに落とし込んだり、さりげないクチュールを提案したいと思っています。

ブランドとしての見せ方にも独自のスタイルがあるように感じます。2024年3月にRakuten Fashion Week TOKYOで発表されたランウェイショーにはどのような狙いがあったのでしょうか?

ブランドとして初めてのランウェイショーだったので、世界観をしっかり表現することを最も意識しました。直球でシンプルなランウェイ形式のショーにおいて、ブランドらしさをどう見せるかに集中しました。ショーを行ったことで、今まで反応が無い方からもアクションがあったり、自分自身が伝えたいと思っていたことを実際に言葉にしてくれる方も多く、このショーで伝えたいことがしっかり伝わったと実感できました。

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mister it. 2024 A/W collection

25SSコレクションはオープンフィッティングというプレゼンテーション形式で発表されましたね。

前シーズンが世界観を表現したショーだったので、今回はブランドが何を考えてものづくりをしているのか丁寧に伝えたいと思いました。そこで、このタイミングにブランドが大事にしていることを伝えるために、コレクションゼロとしてパリで発表したときと同じ手法を選びました。

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coutesy of brand

現在開催中のパリショールームは手応えいかがですか?

初回のショールームは次回も継続して見たいという方が多かったので、今まだ2日目で最終オーダーがどうなるか分かりませんが、しっかりコレクションを見てもらうことが出来ていて反応は良いように思っています。mister it.を狙って来場してくださるバイヤーの方も増えました。

ブランドとして、今後の展望を聞かせてください

手を動かして洋服を作るのが好きです。これからも真摯に服作りに向き合い、身近な人のために向けて服を作り、そこに共感してくれる誰かに届け続けたいと思っています。

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Photography by Kazumi Miyamae

 

デザイナーとして挑戦してみたいことはありますか?

いろんなことにチャレンジしたい。デザイナーだからこう、とか縛られることなく、面白いと思うことは何でもやってみたい。

作ってみたいものはありますか?

今季は自転車を包みましたが、いろんなものを布で包みたいと思っています。包むことには自分としてのクチュールの考え方が現れています。人の身体に沿うように立体裁断がありますが、それをあえて皆が日常的に触れているポテトやドリンクなど身近なものを包んでいます。mister it.ではそれをラッピングと呼んでシリーズ化もして、いろんなものを包んでいます。プレゼントとして何かをラッピングすると、皆喜びますよね。同じように日常にあるものを布でラッピングして誰かに喜んでもらう、そういうことを続けて行きたいです。

Interview by Tomoko Kawasaki

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