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DEC. 28, 2015

MBFWT 2016 S/S | Models.com Tokyo Report

インタビュアーのModels.com編集長Stephan Moskovic(ステファン・モスコビッチ)氏

右:ステファン・モスコビッチModels.com編集長/左:信田阿芸子JFWO国際ディレクター

MBFWTオフィシャルアンバサダー マリエさんと

JFWO国際ディレクター信田阿芸子インタビュー

*本記事は、MBFWT 2016 S/S海外ゲスト「Models.com」のサイト内「Of The Minute」に掲載された、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)国際ディレクター信田阿芸子へのインタビュー記事の和訳で、一部編集・割愛しております。


東京・渋谷で行われたMercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2016 S/Sの最終日に、Models.comは信田阿芸子さんに話を伺う時間をもらった。小柄ながらも、一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)の国際ディレクターとして、強い熱意を持って役務に取り組んでいる。日本のファッション業界に貢献している人物の一人である彼女にインタビューするまで、1週間という長期にわたる東京のファッション・ウィークを終えることはできないと感じていた。
信田さんは、デザイナーが予定通りコレクションを発表できるように伴走したり、有能な若手デザイナーを支援するため育成プログラムを実施したり、日本人デザイナーの海外でのプレゼンス向上を目指した企画実施のための資金調達などまで手掛けている。
東京のファッション・ウィークの歴史や、どのように新しいデザイナーを発掘し、コレクション発表をさせているのか、また、なぜファッションが日本にとって必要不可欠と考えているかなどを尋ねた。

 
東京のファッション・ウィークはいつ頃始まったのですか?

東京のファッション・ウィークそのものは、川久保玲氏、山本耀司氏、三宅一生氏によって80年代前半に立ち上げられました。しかし、彼らがパリに発表の場を移した後は、東京のファッション・ウィークのオーガナイザーが不在になってしまいました。そうなると、デザイナーたちは各々都合の良いタイミングでコレクションを発表することになり、その期間が1ヶ月近く続くこともありました。この事態を改善し、東京におけるファッション・ウィークを再構築するために、約10年前に経済産業省出資のもとJFWOが立ち上がり、私はその2年後に国際ディレクターとして参加しました。当時はまだ、東京のエッジーな若手デザイナーたちは、世界に知られる状況ではありませんでした。

 
MBFWT会期中、何ブランドのコレクション発表があるのですか。

2016 S/Sは50ブランドで、毎シーズンやはり50ブランド前後です。メンズ・レディス両方を含みます。

 
そのうち、若手デザイナーはどのくらい参加しているのでしょうか。

今回は13人です。毎回大体10人前後の成長株の若手が参加してくれています。

 
どのようにして若手を選ばれるのですか?いつもそういう新しい才能を探している感じですか、それとも招待するのですか?

会期によって内容が異なりますが、支援プログラムがあります。そのひとつとして、公式会場のヒカリエホールBを午前中枠に限り、無料で提供しています。今シーズンこの枠で参加したのは、DRESSEDUNDRESSEDMotohiro TanjiPLASTICTOKYOsulvamUjohで、参加ブランド含め支援ブランドはJFWコミッティで審査の上、決定します。

 
支援は継続的に行っているのでしょうか。また、ブランドに対して、資金面での援助も行っているのでしょうか。

MBFWTは年2回ですが、それ以外にも不定期ですが国の支援を受けて、海外のファッション・ウィークで発表したり、海外でイベントを実施したり、東京ブランドのPR施策を行っています。5年ほど前には、イタリアのピッティ・ウオモとコラボレーションし、21人のデザイナーがピッティ・ウオモで発表しました。その他にも、サウジアラビア、シンガポール、モスクワのファッション・ウィークにも参加し、ショーを行いました。毎年、内容や行く国は違いますが、東京ブランドの発信につながるような企画を実施しています。
今年1月には、世界でも権威あるデパートのひとつ、ロンドンの「Selfridges(セルフリッジ)」でポップアップストアを展開しました。2階のメンズ・フロアに良いスペースをご提供いただき、まだあまり有名ではない5、6人のデザイナーの商品を展示販売しました。大変好評でした。

 
世界に出て発表することは素晴らしい方法ですね。

はい。ただ、こういった海外施策のために資金を得ることはとても大変です。年に何回も、こういった施策がファッション産業において重要ということを詳細に書面にまとめ、国に提案する必要があります。また、補助期間が半年間や1年間のため、良い施策でも継続的に実施することは難しい状況です。

 
これまで山本耀司さんや川久保玲さん、三宅一生さんといった世界的に有名なデザイナーを輩出し、彼らによって日本ブランドのデザイン力の高さが周知のものになっている今、そのようにご苦労されているというのは驚きです。今後も日本ブランドの礎を築いた大御所ブランドのように、世界へ飛躍するような日本の若手デザイナーの登場に期待したいです。

日本において、ファッションは大変重要な産業だと思います。
海外の人たちから、「あの国はファッションに長けている」「おしゃれ」という印象を持たれると、ファッションアイテムに限らずその国が作り出すモノすべてに影響し、そのモノの価値と同時に値段も上がりますよね。観光産業にも大きな影響を与えると思います。東京はファッションにおいて、本当に素晴らしい街だと思いませんか。パリやニューヨークに観光客が多いのも、ファッション産業が盛んで、それを目当てにしている人が多いからだと思います。その一助となっているのがファッション・ウィークではないでしょうか。だから、東京ももっとファッションに力を入れるべきだと考えています。
日本のファッション産業は個人事業主など中小企業がほとんどで、LVMH やケリングのように産業で強い勢力を持っているようなオーナーはいませんよね。

はい。例えば、sulvamの藤田さんのアトリエには、アシスタントもインターンもおらず、すべて彼一人でやっています。

 
それはすごいですね。ニューヨークでは、CFDA主催の支援メニューを通して、ブランドを立ち上げるデザイナーはたくさんいます。それに近い方法かもしれませんね。

そうですね・・・むしろ、ニューヨークの場合は、マネージメント、財政、ものづくりをサポートしてくれる信頼のおけるパートナーを見つけるほうが得策かもしれませんね。

 
JFWOが共催している「TOKYO FASHION AWARD」とは、どういう取り組みなのでしょうか。

日本にも古くから、いくつかのアワードやコンテストが存在していました。国内では知られていましたが、受賞者を世界に向けて発信するものはありませんでした。そこで、たくさんいる有望な東京のデザイナーたちを世界に発信するために「TOKYO FASHION AWARD」を立ち上げたのです。日本にはsacaiやvisvimのように、世界でも人気のあるブランドが多数あります。彼らに続くデザイナーを発掘し、次の段階に進めるように手助けするのが私たちの役目です。具体的には海外でのビジネス展開につなげることを目的としているため、本アワードの審査員の全員が、トップの百貨店やセレクトショップのバイヤーのみです。

 
パリの「ANDAM Fashion Award」やニューヨークの「CFDAファッションアワード」とはまったく異なるアワードですね。これらはビジネスよりデザイン面に焦点を当てています。「TOKYO FASHION AWARD」では、この点は今後強化されますか。

日本人デザイナーに足りないのは、ビジネスマインドだと思っています。海外のバイヤーとの交渉力がまだまだ足りない。日本の若いデザイナーに必要なのは、ビジネス面での強さと判断力です。日本には、才能あるデザイナーはたくさんいて、プレスには高く評価されています。しかし、バイヤーとのつながりが弱いのが、彼らの課題として大きいのではないかと考えています。

 

*「Models.com」内の記事(原文)はこちら

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