Interview & Report

エイトリアム(メンズバイヤー)

エイトリアム(メンズバイヤー) エイタン・ブラハム

MBFWT 2014-15 A/W 招聘バイヤーインタビュー vol.3

ATRIUM
Eitan Braham

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2014-15 A/W会期中に、ニューヨークの人気セレクトショップ「ATRIUM(エイトリアム)」から、エイタン・ブラハム氏が来日した。新進気鋭のクリエイターズブランドを積極的に取り扱い、ニューヨーク随一のデニムセレクションを誇ることでも知られている同ショップ。そのメンズバイヤーとして、メンズファッションの動向を追いかけ続けているブラハム氏に、日本のブランドや東京のストリートファッションについての印象などを伺った。

 

来日は今回で何回目ですか。

2回目で、前回の来日は半年前でした。今回は、これまでに知らなかった新しいブランドとたくさん出会えましたし、毎日探検するような気持ちで色々なものを見ることができました。日本のブランドの洋服は非常にクオリティが高く、デザインからスタイリングまで群を抜いてレベルが高いと思いますし、ATRIUMの顧客からも非常に人気があります。アメリカでは、日本のブランドを受け入れる準備ができていて、需要も高まっているタイミングなので、今回JETROさんの海外バイヤー招聘プログラムでこうした環境を与えて頂いたことにはとても感謝しています。

 

ATRIUMのショップの紹介をお願いします。

ATRIUMはニューヨークですでに20年もの歴史を持つショップですが、メンズファッションにおいてはひとつの震源地と言えるほど重要なショップになっていると思います。特にデニムには力を入れていて、もしニューヨークの街中で最高のデニムを穿いている人を見かけたら、かなりの確率でATRIUMで購入されたものだと言えるほど素晴らしいセレクションを誇っています。我々は常に進化を求めていて、今最も新しく優れているファッションを探すために世界各地を回り、主要な展示会のほぼすべてに足を運んでいます。また、ニューヨークとラスベガスで定期的に開催している「Liberty Fashion & Lifestyle Fairs」という大規模な展示会をパートナー会社が主催していることもあり、非常に幅広いコネクションを持っていることも強みです。

 

エイタンさんが現職に就くまでの経歴を教えてください。

ファッション業界で仕事をするようになったのは2008年からで、しばらくはニューヨークにある展示会専門の会社で、主に新しいブランドの発掘や紹介をする仕事をしていました。ATRIUMに移ってからは2年くらい経ちますが、最新のメンズファッションの動向を常に追いかけることができるのは自分にとって大きな喜びです。特に今メンズファッションの世界では、ワクワクするようなブランド、特筆すべきショップがどんどん出てきています。それに加え、アメリカの景気が上向いていることもあり、ここ数シーズンで売り上げは爆発的に伸びていて、マーケットとしてはかなり良い状況です。

 

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ATRIUMを訪れるお客さんにはどんな方が多いですか。

メインとなるのは、18歳から34歳くらいまでのお客様です。私たちの顧客は、ホットなもの、プログレッシブなものを常に求めていて、それは同時に私たち自身が目指していることでもあります。私たちが最も重視しているのは「差別化」というキーワードで、他のブランドとの違いは何か、その洋服のどこが面白いのかということを常に意識しています。また、ブランド全体のコレクションはもちろん大切ですが、買い付けの際にはお客様が何を必要としているかを考えた上で、ピース単位で吟味するようにしています。お店に入ってきた際に、「これは見たことがない!」と思ってもらいたい。そのためにも、ボタンやジップなどのディテールひとつとっても、他にはない特徴があるか、ということが重要です。

 

日本のブランドはどのくらい取り扱っていますか。

以前、非常に多かった時期もありますが、関係を持続させていくのはなかなか難しいことで、日本のブランドから少し離れていた時期もありました。ただ、今は会社の方針として、日本のブランドを積極的に取り入れていこうという流れになっています。我々のグループ会社が主催している展示会にも10以上の日本のブランドが参加してくれていますが、バイヤーからの非常に良い反応を目の当たりにしています。今、日本ブランドの需要は明らかに高まっていると感じています。

 

日本のストリートファッションについてはどのような印象をお持ちですか。

私は世界中のファッション・ウィークに足を運んでいますが、東京のストリートファッションは地球上で最も素晴らしいと思っています。特に男性の着こなしは、カラーやコンビネーションはもちろん、ヘアスタイル、アクセサリーにいたるまでエネルギーにあふれていて、非常に刺激を受けています。それぞれがファッションを自分のものにしていますし、とてもワクワクさせられます。

 

セレクトショップや百貨店などについてはいかがですか。

やはりメンズに関しては、東京がベストと言えるのではないでしょうか。すでにたくさんのショップを見ましたが、どこもしっかりとしたビジョンやアイデンティティを持っているところが素晴らしいと思いますし、伊勢丹やユナイテッドアローズなどの大型店は、まるで完璧なクローゼットのようにすべてが網羅されているように感じました。

 

来日してからいくつかショーもご覧になりましたか。

打ち合わせや展示会回り、リサーチに時間を割いており、実はまだショーを見ていません。もちろん、ショーは楽しいものですし、東京のショーもクオリティが高いことは知っていますが、私にとってそれ以上に実際のプロダクトを見せてもらうことが大切なんです。

 

ショーをいくつかご覧になられたと思いますが、何か感じられたことはありますか。

これまでに5、6のショーを見たのですが、オーバーサイズ、キャメル系のカラー、ブルゾンなど、先日ヨーロッパで行われたファッション・ウィークで見られたトレンドと共通しているものが多かったように感じました。ショーというものは自分も含めみんな興奮状態で見ているので、これからショールームなどで改めて冷静に見てみたいと思っています。

 

展示会などでは新しい日本のブランドを発掘できましたか。

はい。今回は短い期間にたくさんのブランドを見ることができたのですが、その中にはすぐにでも私たちのショップに置きたいと思うブランドがいくつかありました。それぞれのプロダクトはもちろん素晴らしかったのですが、今回はその背景にあるコンセプトを理解することができたことに、何よりも価値があったと思っています。

 

今後日本のブランドに求めることがあれば教えて下さい。

日本のブランドをアメリカに紹介する際の課題は、常にサイズとデリバリーです。また、これもシンプルなことなのですが、ラインシートにUSドルで卸売価格を表示して頂けると、こちらが色々な計算をする必要がなくなりますのでありがたいですね。これらはすべて、アメリカの市場にどれだけコミットするかということにかかってくることだと思います。例えば、海外に出てショーや展示会をする場合、ショー会場を探す必要がありますし、ディストリビューターやセールスエージェントをどうするかということも考える必要が出てきます。これらのことは、どれだけシリアスに海外進出を考えているのかということを示すものでもあります。今、アメリカの景気はうなぎ上りで良くなっていますし、日本のブランドに対する大きな需要があるので、ぜひこの機会を逃さないで頂きたいと思っています。

 

INTERVIEW by Yuki Harada

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