Interview & Report

KORI-SHOW / SSAW directed by 山口壮大

KORI-SHOW / SSAW directed by 山口壮大  

スタイリスト・ファッションディレクター

【 プロフィール 】
1982年愛知県常滑市生まれ。文化服装学院卒業。2006年3月、下北沢にある戦前の雑居ビルにミキリハッシンをオープンする。2009年1月、原宿キャットストリートへ移転し、現在までハッシン中。また、2006年よりスタイリストとして活動開始。カルチャー、モード、ストリート系のマガジン、広告、CD、PVなどでスタイリングを手掛ける。

[ URL ] KORI-SHOW http://kori-show.com/

2014年2月、パリでデビューしたライフスタイルブランド「KORI-SHOW」。
国内のものづくりメーカー、気鋭デザイナーと組んで「日本の未来のものづくり」を通して『未来のくらし』を提案するプロジェクトである。
2014年10月、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2015 S/S会期中に渋谷ヒカリエ 8F COURT / CUBEにて、国内初となるコレクションを発表。「歳時記」をテーマにウルトラテクノロジスト集団「チームラボ」による映像の投影、クリエイティブユニット「マグマ」による空間演出と共に、先進的なテクノロジーと職人の手仕事が織り成すものづくりの数々が初披露された。九華、ひなや国枝アートランド北星鉛筆ケイテーテクシーノ、トーホー、真多呂人形高田紙器製作所といったものづくりメーカーが出展し、ハトラエタブルオブメニーオーダーズニッティングバードモトS.NAKABAなどのデザイナーもプロジェクトに参加している。
KORI-SHOWのクリエイティブディレクターを務める山口壮大氏に、凱旋展となった今回の展示受注会やクリエイティブチームについて、また日本のものづくりについても語っていただいた。

 

デビューとなった2013年2月のフランス・パリでのインスタレーションと、その直後に行ったドイツ・フランクフルトでの展示会での反応はいかがでしたか。

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上:渋谷ヒカリエ 8F COURT会場
下:着るこたつ/ハトラ

パリでは初の発表で、単独展という形でした。
会場となった「シャングリ・ラ ホテル」はナポレオンの甥が食堂として使っていたという、西洋の生活様式の匂いが残る空間でした。そこに東洋の文化的背景の宿るものづくりを、言わばぶつけるような形式でのインスタレーションを仕掛けたため、ストーリーの面白さが際立ちました。
一方で見せ方は、異なる要素が絶妙に調和するよう工夫したため、馴染み易くも特異な空間に仕上がり、ヨーロッパの方々にも良い反応をいただくことができました。
フランクフルトでは、アンビエンテというライフスタイル見本市に出展しました。
アンビエンテでは商品をより見やすく展示するよう心掛け、8畳ほどのスペースの真ん中にこたつを設置しました。
靴を脱ぐ習慣が無いにも関わらず靴を脱いでこたつに入る来場客が相次ぎ、ブースに人だかりができて面白いインスタレーションになりました。現地のインテリア関係のお店から、こたつのリース依頼がくるなど良い反応もありました。
この時はインスタレーション性が強かったのですが、輸出面をクリアして数字につなげていくことが次の課題です。

国内では初の発表でしたが、反応はいかがですか。

ファッションビルや百貨店からの問い合わせもあり、良い反応をいただいていると思います。
特にインターネットでこたつが話題になり、数多くのテレビ番組にも取り上げられるなど、話題性は実証できたと思います。提案方法について、今後はプロダクト系の見せ方から着想を広げて、ファッションというフィルターを外さずに、より商品にフォーカスを当てる見せ方をしたいと思っています。

 

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マグマによる空間演出とチームラボによる映像投影
画像左上から時計周りに春夏秋冬

今回のテーマを「歳時記」にされた経緯を教えてください。

グローバリゼーションが謳われる一方で、ローカリゼーションが話題になる今、世界に対しての日本という意味でも、東京に対しての地方という意味でも、歳時記はとても効果的な見せ方ができるのではと思いました。また、デジタルとフィジカルの関係は今特に気になっている分野でもありますので、売り場では未来の歳時記の過ごし方まで提案したいと考えています。

 

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上:ギフトカード(花輪)/高田紙器製作所
下:御座/国枝

各プロダクトはどのような流れで制作されたのでしょうか。

生産背景を担う参画企業が先に決まりましたので、そこからこんなインスタレーションにしたいとイメージが広がり、そのインスタレーションにつながるものづくりを考えていきました。
会社の規模感や異業種での常識の違いという「ずれ」を乗り越える苦労も大きかったですが、ものづくりはなんと言っても現場を担当する人間だと思うので、会社の大きさなど関係なくマインドのある方々と取り組んでいきたいと思っています。

 

今回の展示受注会を経て、今後の展開をどうお考えですか。

商品を一点ずつセレクトしていただく「点」としての広がりより、コレクションの世界観も併せて「面」として広げていきたいと思っています。
春・夏・秋・冬という展示構成も、各社のものづくりを季節や伝統文化という背景と結び付けて、「面」として季節のセクションをセットで提案していますが、今後、店頭などでも「面」として展開していただけたらと思っています。

チームラボの映像とマグマの空間演出についてもお聞かせください。

チームラボの映像はまずコンセプトにすごく共感しました。
リアルをデジタルに置き換える面白さと、それをリアルにもう一度持って来た時の旨味を熟知されているので、空間のイメージを決定づける映像はチームラボ以外考えられませんでした。

マグマには、「東洋の文化と西洋の文化が混ざり合っていくようなミックス感を出してほしい」とリクエストし、色味はフラットに統一感を出しながら、什器それぞれの背景には様々な文化がミックスしているような表現をしていただきました。

チームラボの映像と、ハズシながら混ざり合い、自分の思い描いた感覚にマッチしていたと思います。

 

KORI-SHOWチームにデザイナーとして参加しているNO DESIGNについてお聞かせください。

担当していただいたNO DESIGN代表の武藤将也さんは、「デザインしないデザイン」を目指されていますが、物の本質をシンプルに力強く表現できる、稀有なデザイナーだと思います。
今回は、文化的な背景や歴史についてコンセプトとしては提示しつつも、ぱっと見た際、感覚的にお客さまに訴えかけられる、強いグラフィックを表現していただきました。

 

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左:カッパ/ケイテーテクシーノ
右:夜着/ひなや

「日本の未来のものづくり」とは、職人とデザイナーが近い距離にいることなのでしょうか。

今の感覚を大切にした文化的背景を損なわないデザインと、それを形にするために必要になる技術や製法を、昔ながらの手作業や最新のテクノロジーを同等に駆使しながら、実際の暮らしをイメージしながら落とし込んでいくものづくりのことを指しています。
そのために両者が近い距離感にいることは大切だと思いますし、自分がその距離を縮められる存在でありたいと思っています。

KORI-SHOWの展望を教えてください。

今後の方針は参加企業の皆さんと相談して決めていくつもりです。産地も、加わっていただくデザイナーも、プロジェクトチームも、二人三脚で進んでいけるスキームを作り上げることが必要だと思っています。
海外での展開も視野にありますが、見せるだけでなく、数字を伴えるように当面は国内で実績を積んでいくことも必要だと考えています。
だからこそ、近い未来の瞬間的な売り上げだけなく、参画いただいている企業が築いてきたものづくりを見つめて、チームで一歩ずつ階段を上がり、未来に残る取り組みになることを意識していきたいです。

 

チームラボ株式会社代表取締役猪子 寿之氏

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開催初日に駆け付けたチームラボ代表
取締役・猪子氏。山口氏とともに取材に対応

モノの歴史的背景を直感的に体感できる場に
山口さんとは「ぱりゅこ」立ち上げからのお付き合いになりますが、いつも物事を深く考えていて、時代の空気をすごく感じている人だと思います。
今回は日本の四季ごとのシーンに分けた展示をしたいと聞いていたので、それぞれのモノと切り離すことのできない風土や環境や自然など、歴史的背景の魅力を直感的に体感しながら観てもらいたい、と思い映像を制作しました。
モノ自体はネットでも他の場所でも見ることができますが、この場所に来ることがエンターテイメントであったり、何かを考えるきっかけになったり、オンラインにはない体験となる場所になったらいいなと思います。

チームラボ株式会社 http://www.team-lab.com/

 

INTERVIEW by Shinya Miyaura (Secori Gallery)

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