Interview & Report

Layla Alshehri

Layla Alshehri ライラ・アル・シェフリ

Maison BO-M/バイヤー

「Maison BO-M」は、リヤドに2店舗、ジェッダに1店舗構えるセレクトショップ。ライフスタイルとギャラリーをショップコンセプトとし、インテリアや雑貨、レディスアパレルを取扱う。日本ブランドも扱い、店舗内でファッションショーを行うなどサウジアラビアでトレンドを発信する場として国内メディアや業界関係者からの関心が高い。

サウジアラビアの首都・リヤドに2店舗、ジェッダに1店舗を展開するセレクトショップ「Maison BO-M」のバイヤー、ライラ・アル・シェフリ氏が、JETROの招聘により、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2014 S/Sに合わせて来日した。レディスアパレルを中心に、インテリアや雑貨なども取り扱い、新進気鋭のブランドやクリエイターらとのコラボレーション企画も積極的に行うなど、サウジアラビアの流行発信基地となっている同ショップ。そのバイヤーの目に映った日本の印象や宗教、文化、慣習、またさまざまな点で異なるサウジアラビアのファッションシーンなどについて伺った。

日本に来るのは今回が初めてですか。

2008年にプライベートの旅行で来たことがあるのですが、ファッション、建築、テクノロジーなどあらゆるものが新しく、クリエイティブで、非常にインスパイアされました。今回はそれ以来の来日になりますが、JETROの招聘が決まった時は非常に喜ばしく、エキサイティングに感じました。

「Maison BO-M」のコンセプトを教えてください。

これまでのサウジアラビアにはなかった新しい体験をもたらすために、1年かけてコンセプトを考え、2009年にリヤドにオープンしました。新旧のものが出合う場所をテーマに、ファッションだけではなく、インテリアや雑貨なども扱っています。また、ギャラリースペースを設け、アラブ地域のコンテンポラリーアートなども収集しています。「Maison BO-M」は、アートとファッションが出合うクリエイティブな場所でもあり、ここに来ればすべてがかなうワン・ディスティネーション・プレイスです。ターゲットは25歳から65歳くらいまでで、8割は王族のお客様です。ショップのロケーションも宮殿に近く、80年代に建てられた静かなショッピングモールにあります。また、サウジの慣習を踏まえ、家族で買い物ができる建物の他に女性専用の建物を用意しています。マーケットが非常に特殊なので、それに合わせてカスタマイズするということは常に意識しているところです。

ギャラリースペース

店内に設けられているギャラリースペース

ギャラリースペース

バイイングではどんなことを大切にしていますか。

サウジの市場や文化に合うものということを意識しています。具体的には、ノースリーブではなく袖があるもので、丈は足首までという基準で考えていきます。世界的なファッショントレンドは非常に魅力的ですが、それらにインスピレーションをもらいつつ、サウジの文化や宗教に適合させていくことが大切になってきます。

サウジアラビアでは、どのようなスタイルやアイテムが人気ですか。

サウジの女性はフェミニンな美を追求しているので、シックで洗練されたものを望んでいます。最近は、これまでのようにビッグメゾンのものだけではなく、新しくニッチなブランドやデザインが求められる傾向にあります。サウジでは、一般の女性に車の運転が許されていないこともあり、オンラインショッピングが盛んなのですが、私たちのショップを訪れる方たちは、オンラインでは買えないような限定品やコラボレーションアイテムなどを欲しがっています。王族の方たちは常に新しいものを求め、サービス面も含め非常に要求は高いのですが、同時に国内の作り手を支えるための支援なども積極的に行っています。

サウジアラビアのファッション産業はどのような状況にありますか。

ウエディングやパーティなどが頻繁に行われることもあり、サウジの作り手には、イブニングドレスやカクテルドレスを作ることが求められます。また、国内に工場がないので、テーラーと一緒に作るか、トルコやドバイなど国外の工場で作る必要があります。このようにサウジの服作りはまだ始まったばかりの段階で、生地や素材を調達することの難しさや、コスト面の問題などがあるのが現状です。

「Maison BO-M」で今、扱っている日本のブランドを教えてください。

アクセサリーやジュエリー、革製品などが中心になるのですが、革小物ではコムデギャルソン、アクセサリーはQ-pot.やe.m.、yukie deux pointなどが多く、ギフトとしても人気です。これらのブランドはパリの展示会でもチェックすることができるのですが、今回のように東京に呼んで頂くことで、より多くのブランドを見ることができるので非常に感謝しています。

バイイングはパリでされることが多いのですか。

以前は、パリの他にミラノ、ロンドン、ニューヨークにも毎シーズン足を運んでいましたが、小さい子どもがいるので、パリとミラノが中心です。また、バンコクやイスタンブールなど新興国のファッション・ウィークに招いてもらう機会もあるのですが、面白いデザイナーが出てきていて興味深いですね。私たちのお客様は、新しいものを早いサイクルでどんどん紹介してほしいという要望が非常に強いので、そのためにハードワーカーになっています(笑)。

日本のファッションデザイナーについてはどんな印象をお持ちですか。

非常にクリエイティブで、パリやミラノ、ニューヨークとは違う新しい形をもたらしてくれる存在だと思っています。私たちは常に素晴らしいアーティストやデザイナーをサウジに連れて行きたいと考えているのですが、今回の来日をきっかけに日本のデザイナーやアーティスト、スタイリストの方たちをお招きし、日本の文化を紹介するような展示会ができないかと考えています。

東京のストリートファッションについてはいかがですか。

とても魅力的だと思います。東京というのは日本の首都でもありますし、みなさんが力強いアイデンティティを持っているように感じます。最新のモードがある一方で、対局には原宿などのストリートファッションがあり、その間にはシックでドレッシーでフェミニンなスタイルもある。そのどれもが非常にレベルが高く、街全体がファッションショーのようなものだと思います。

印象に残るショップやエリアなどはありましたか。

ショップに関しては、商品をインスタレーションのように見せているところが多く、全体的に素晴らしいと感じました。ニューヨークやパリなどと違い、単に洋服を見せるだけではなく、テーマやストーリーを語ることでお客様を魅了していることが特徴だと思います。また、インターナショナルブランドにしても、日本では独自の演出によって新しい雰囲気が創り出されていて印象的でした。エリアとしては、前回訪れた青山の他、、今回初めて足を運んだ代官山が、新しいコンセプトを持った小さなショップが多く印象深かったです。

今回の来日で新しいブランドを見つけることはできましたか。

コムデギャルソンなどともコラボレーションしているバッグブランドのカルネやアビィというブランドが気に入りました。また、サカイはパリでも見ることができますが、今回日本のショールームに行くことができて良かったです。特にアビィはサウジの市場にもピッタリだと感じています。私たちには、サウジのお客様を驚かせるという使命があるのですが、このブランドにはビックリしてもらえるんじゃないかと思っています。

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最後に、日本のファッション・ウィークの印象やご意見などがあればお願いします。

他のファッション・ウィークに比べ、ロケーションなどもわかりやすく、オーガナイズが素晴らしいと思いました。また、パリ、ミラノ、ロンドン、ニューヨークのファッション・ウィークがそれぞれ特徴を持つ中で、かつてのメディアに取って代わりつつあるブロガーなどが、新しいブランドやデザイナーについての記事を積極的に発信するなどして、東京のファッション・ウィークをアピールしていくことが大事だと思います。

INTERVIEW by Yuki Harada

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