Interview & Report

BAJOWOO

BAJOWOO バジョウ

99%IS- / Designer

1984年、韓国・ソウル生まれ。2003年、韓国のESMODに入学。その後、韓国で初となるパンクブランドを立ち上げ、ロックバンドの衣装やアートワークなどを手掛ける。また、ロンドン、パリ、東京、バンコクなどを訪れ、各都市のアンダーグラウンドパンクシーンと交流を持つことにより、自身のクリエイションのバックボーンを築く。2008年より、東京に拠点を移し、2010年、ドレスメーカー学院に入学。在学2年目となる2012年Autumn/Winterより、99%IS-を立ち上げる。

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パンク/ロックファッションをベースに、それらを現代的に解釈した上質なレザージャケットやオリジナルスタッズによるアイテムなどで人気を集めている新鋭ブランド「99%IS-(ナインティナインパーセントイズ)」。LADY GAGA、BIG BANGらがステージ衣装やプライベートウエアとして着用するなど多くのアーティストに支持される一方で、マッキントッシュ、コム デ ギャルソン、ジョージコックスなど、さまざまなブランドとのコラボレーションを展開している。まもなく開幕する、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2014 S/Sへの初参加も決定している同ブランドのデザイナー、BAJOWOO(バジョウ)に話を伺った。

ファッションに興味を持ったのはいつ頃からですか?

子供の頃からオシャレをするのが好きで、小学生くらいから洋服の簡単なリメイクなどはしていました。音楽も昔から好きで、小学校6年生の時に初めて韓国のライブハウスに行ったのですが、そのライブハウスに小学生が来るのは初めてだったらしく、バンドマンたちが遊んでくれたり、みんな優しくしてくれたんです。やがてそのバンドマンの兄貴たちから、自分たちの洋服をリメイクしてほしいと頼まれるようになり、その流れでバンドのTシャツなども作るようになりました。僕は楽器ができなかったので、音楽ではなく洋服で自分が表現したいことをやろうと徐々に考えるようになっていきました。

ファッションの専門的な勉強はされたのですか?

高校卒業後、韓国のエスモードに進学しました。しかし、2年生の時に中退してしまい、スタイリストのアシスタントや革工場の仕事などを経て、2007年にセックス・ピストルズが行った30年ぶりのライブを観るためにイギリスに行ったんです。結局、現地のストリートで知り合ったパンクスたちの家などを転々としながら半年ほどイギリスに滞在しました。その後、日本にいた知り合いのデザイナーに誘われたことがきっかけで、日本の服飾専門学校に留学することになり、現在も通っています。来年3月に卒業予定です。

なぜ日本に来ようと思ったのですか?

日本というのは、例えば渋谷と原宿でも全然スタイルが違ったりして面白いし、日本人は世界で一番ファッションを楽しんでいるように見えて、すごく良いと思ったんです。実は、ロンドンにいた時は、色んなバンドのライブを観ることができてとても楽しかったのですが、徐々にファッションと音楽の関係に違和感を抱くようになったんです。パンクの人たちはファッションのことなんて全然関係ないという感じだし、逆にファッションの人たちはパンクのことをよくわかってないのに、「これがパンクだ」と言って洋服を作っていたりする。日本にはマニアックな人が多くて、パンクや音楽のことを本当に理解した上で洋服を作っているブランドが多いし、もともとイギリスやアメリカの文化だったパンクやロックを取り入れて、それらを日本化して表現しているということも含め、色々勉強になるんじゃないかなと思ったんです。

現状のファッションと音楽の関係性に対して、憤りを感じていたところがあったんですね。

例えば、パンクファッションと言ったら、髪の毛を逆立てた人がスタッズのレザージャケットを着ているような、誰もが思い浮かべるイメージがありますよね。でも、そのこと自体がもうパンクではないと思うんです。もともと既存の音楽やスタイルに反発する形で生まれたのがパンクなのに、いつの間にか定型化されたファッションのスタイルになってしまっていて、もはやそれはパンクのコスプレをしているようにしか見えないんです。また、今パンクをやっている人たちには、自分たちの世界に閉じこもって壁をどんどん高くしてしまうところがあるように感じていて、そういう状況を内側から壊していきたいという思いもあるんです。

そのためには、パンクやロックが生まれた背景や歴史なども理解していく必要があると。

そうですね。誰もやっていないことをやりたいという思いは当然あるのですが、完全に新しいものだけでそれをするのではなく、もとの背景を知った上で、それを今の時代に置き換えて自分らしく表現していくというのがブランドのコンセプトでもあるんです。ニューヨークやロンドンのストリートで知り合ったパンクスたちに話を聞いたりして、当時の時代背景と洋服の関係などを知ることはとても面白いですし、それによって、今ならこういうファッションにした方がいいということも見えてくる。例えば、これだけスタッズが定番化している中で、自分がそれをやるならオリジナルのスタッズを作るくらいまでやらないと意味がないし、これまでチープでダーティなものとされてきたロックやパンクのファッションを、あえて良質な素材や縫製、パターンで表現したらカッコ良いんじゃないかと思ったりするんです。

自分のブランドを立ち上げたいという思いは以前からあったのですか?

あったんですけど、予想よりも早くなってしまいました(笑)。本当は専門学校を卒業してから自分のブランドを立ち上げようと思っていたのですが、1年生の時に原宿の「ベルベルジン」というヴィンテージショップに、70年代、80年代のパンクスの間で流行ったライダースジャケットの型をミックスして作った服を置いてもらったことがあったんですが、その反応が良くて、その後も自分が作った洋服をお店に置くようになったんです。その後、セレクトショップ「CANDY」のシーズンカタログなどをやっているスタイリストなどとも知り合い、その流れで今プレスをやってもらっているFAKE SHOWROOMの柳翔吾さんから、自分のブランドをちゃんとやってみないかと言われ、「99%IS-」を立ち上げることになったんです。

コレクションのシーズンテーマはどのように決めているのですか?

自分の中で表現したいと思っているネタがいくつかあって、それをその時々の気持ちに合わせて引っ張ってきて、広げていくことが多いですね。例えば、2013-14年秋冬シーズンでは、もともと好きだったアナーキーマークからスタートして、現代のアナーキーは何だろうということを考えていくうちに、「現代のアナーキーを探す」というテーマが出てきたんです。そこから連想して、「探す」といえばシャーロック・ホームズだなということになり、ホームズの時代のファッションと、自分のテイストをミックスしたコレクションに仕上げました。ホームズを取り入れるからには背景もちゃんと知らないとダメだと思い、小説や映画を全部観た上で本場のイギリスにまで足を運び、ホームズゆかりの地や古くからあるロンドンのテーラードのお店なども巡りました。

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2013-14AWコレクション

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先日はマッキントッシュのゴム引きコートをリメイクしたスタッズコートを発表するなど、他のブランドとのコラボレーションも多いようですね。

自分にはないものを持っている人たちと一緒に作れるのはすごくいいですね。マッキントッシュとのプロジェクト「MACKINTOSH remade by 99%IS-」にしても、事前に話し合いを重ねることができたし、素晴らしい形で完成したと思います。最初は、完全防水にあれだけこだわっているブランドのコートに、スタッズで穴を開けたら問題なんじゃないかと心配していたんですが、マッキントッシュ側がそれを受け入れてくれて、むしろ彼らの方がパンクだなと(笑)。マッキントッシュのコートは縫い代の処理などをすべて手作業でやっているそうなのですが、そういう部分はスタッズを全て手作業で打っている「99%IS-」と共通していたり、テイストはまったく違うブランド同士ですが、良いコラボレーションができたと思います。

MACKINTOSH

MACKINTOSH remade by 99%IS-

今回、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOに初参加されますが、より多くの人にアピールする良い機会になると思います。どのような表現をしたいと考えていますか?

今回はプレゼンテーション形式でコレクションを発表する予定です。もし、僕がバンドを呼んで発表したら、あまりにストレート過ぎ(笑)、そういう表現にはしないつもりです。自分が好きなものだけを表現してしまうとどうしても偏ってしまうので、その時々に興味を持っている要素をうまくミックスしていきたいんです。特にファッション・ウィークは多くの人たちに見てもらえる場だと思うので、自分の世界に閉じこもることなく、広く認めてもらえるような表現をしていきたいと考えています。

最後に、ブランドの今後の展望などを聞かせてください。

これからも日本を拠点にやっていきたいと考えています。もしかしたら今後、何かの機会で韓国に戻ることもあるかもしれませんが、韓国人が韓国でブランドをやるというのは普通のことですよね。日本にいると僕は外国人だし、言語の問題など大変な部分はありますが、だからこそやる意味もあると思っています。これまではFAKE SHOWROOMの人たちやスタイリストの友達などがいたから自分ひとりでもやってこられましたが、これからはスタッフもちゃんと雇って、徐々にファッションブランドらしいブランドにしていきたいなと思っています。

INTERVIEW by Yuki Harada

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