Interview & Report

Misha Janette

Misha Janette ミーシャ・ジャネット

ファッションジャーナリスト / エディター

1983年米国・ワシントン州生まれ。アメリカ人が東京でファッションを勉強するという意外性に惹かれ、2004年より来日し、文化服装学院入学。現在は英字新聞「The Japan Times」、「共同通信」、「装苑」、「ヌメロ・トーキョー」、「VOGUE girl」、「RACKED」、「CNNgo」、「花椿」をはじめ、多数媒体でファッション記事を寄稿。また、2011年4月にスタートしたブログ「東京ファッションダイアリー」は3カ国語で東京のモード界の「今」を配信し、国際的に注目を浴びる。スタイリストやプロデューサーの顔も持ち、マルチな才能の持主。それらを生かすために、会社「Totteoki Inc」を今夏に設立。個性的なモードファッションの達人として、話題も起こす。

[ 東京ファッションダイアリー ] http://www.tokyofashiondiaries.com/

自国アメリカとは大きく異なる日本独自の感性に興味を抱き単身来日、新聞、雑誌、テレビ、Web等さまざまな媒体で、ファッションジャーナリスト、スタイリストとして活躍しているミーシャ・ジャネットさん。今年4月には、自身のブログ「Tokyo Fashion Diaries」を正式スタートさせ、有名無名問わず独自の美意識でピックアップされる豊富なトピックスは、国内外で大きな注目を集めている。来日して8年、その個性的なファッションスタイルで、東京を代表するファッションアイコンとしても存在感を強めている彼女に話を聞いた。

日本で仕事をするようになったきっかけを教えてください。

ミーシャ:私はアメリカのワシントン州出身なのですが、小学4年生の時に担任だった日系人の先生が、折り紙を教えてくれ、和菓子をくれたり、ペンパルを紹介してくれたりしたんです。日本のペンパルから届く手紙は、デコレーションがとても可愛くて、いつも楽しみにしていました。日本という国があることを意識したのはその時が初めてです。高校生になると、テレビで「セーラームーン」や「ポケモン」なんかが放送されるようになって、それらのキャラクターのカラーリングは独特だし、発想も全然違うなと感じ、さらに興味を持つようになりました。それで、高校3年の時に、交換留学生として日本に来たのですが、それが今の仕事の最初のきっかけになりました。

アメリカにいた頃からファッションの勉強はしていたのですか?

ミーシャ:アメリカでは、グラフィックデザインを学んでいましたが、ずっとファッションの勉強をしたいと思っていました。日本に留学していた時は関西にいたのですが、心斎橋やアメリカ村で人間観察をしていると、クレージーに思える色使いのコーディネートを、みんな平気でしていたりするんですよね(笑)。そういうものをもっと理解したいと思ったし、日本に友達もできたので、あえて日本でファッションの勉強をしてみようと思い、文化服装学院に入学したんです。

当時からファッションジャーナリストを目指していたのですか?

ミーシャ:最初はスタイリストを目指していました。でも、学生の時に、英字新聞の「Japan Times」でファッションの記事を書いていた人を紹介され、アシスタントをするようになったんです。学校を卒業してすぐに、その人が「Japan Times」を辞めることになり、代わりにやってみないかと誘われて。自信は全然なかったんですけど、断ることもできず、引き受けることにしたんです。それをきっかけに色んな媒体から依頼が来るようになり、気づいたらファッションジャーナリストとしての仕事が多くなっていました(笑)。

「Maison BO-M」

Tokyo Fashion Diaries http://www.tokyofashiondiaries.com/

今年4月にスタートしたブログ「Tokyo Fashion Diaries」についても教えてください。

ミーシャ:最初は、海外向けに日本のファッションを紹介するブログにしようと思っていました。でも、私がブログに書いているような若いデザイナーの情報などは、日本の雑誌にも出ていないものが多く、日本人にも知って欲しい情報がたくさんあるので、バイリンガルで配信していくことにしました。中国語もありますが、それはブログのファンの方が翻訳してくれています。写真の編集やサイトのデザイン、プログラミングも自分でやっているので大変ですけど、とても楽しいですね。

 

普段の仕事とブログでは、取り組み方に違いはありますか?

ミーシャ:新聞などの仕事では分析的に書いていくことが多いですが、ブログはひとりごとのような感覚でやっています。特に計画を立てて記事をアップしていくわけでもなく、純粋に私が面白いと感じたものを、それこそ日々のファッションのように、その時々の気分で発信しています。そういうことはブログだからできることだし、知名度などの面で新聞などにはなかなか載せられないようなブランドを紹介できるのもいいですね。

ブログにはフレッシュなニュースやデザイナーの情報などが満載ですが、どのように見つけてきているのですか?

ミーシャ:私は出会いやタイミングに恵まれているんですよね。人づてに紹介してもらうこともあれば、たまたまその時その場に居合わせたというようなことも多いです。私自身が個性的なスタイルで目立つから、向こうから声をかけてくれることも多いのかもしれない(笑)。もちろん、自分でもアンテナを張っているので、面白いと思った人にはこちらからコンタクトを取ったりもしています。

国内外の読者からかなり反響があるようですね。

ミーシャ:初めて会う人に「ブログ見てます」と言われて、ビックリすることもありますね。Twitterなどで海外から応援のメッセージをもらうこともあって、それも更新していくモチベーションになっています。ただ、海外の人が日本に持っているイメージというのは、まだまだ古いと思います。日本のファッションを海外に紹介するブログはたくさんあるのですが、その多くは外国人から見た日本のポップカルチャーのヘンなところを強調しているんですね。でも、日本にはもっと色んなファッションがあって、リアルな日本のファッションの“今”を伝えたいというのが、このブログを立ち上げた大きな理由でもあるんです。

国内のファッションの現状を批評し、国内外に向けて発信していく役割を担う人材が、日本には少ないように感じます。

ミーシャ:日本のファッション業界では、雑誌などで批判的なことを書いたりすると、ブランド側から縁を切られたりすることも多いので、なかなか批評ができないという状況があります。私自身もブランドを批評するのは怖い部分もありますが、今は自分のブログもあって、若い人達の応援もあるので、批評も継続してやっていけると思っています。デザイナーはみんな大好きで応援していますが、有名で力のあるブランドも、若くて新しいブランドも平等に見て、シーズンごとにその時の気分に合っていると感じるものを、フラットにピックアップするようにしています。

日々の仕事を通して、日本のファッションについてどんなことを感じていますか?

ミーシャ:若い人達が挑戦して色んなブランドを立ち上げているし、良いブランドも多いと思います。今回の震災よって海外からの注目度も高まっている中で、ファッションが好きな人達に、いかに話題を与えていけるかということが、より大切になってくるんじゃないかと思います。これまではファッションウィークも、業界内で注目を集めることを皆が考えてきたけれど、これからはバイヤーやジャーナリストだけではなくて、お客さんも楽しめて、憧れを抱いてもらえるようなものを提供していかないといけないと思います。ファッションというのは、人にファンタジーを与えたり、気分を変えたりできるもの。そういうファッションに潜んでいる刺激を大事にしていきたいですね。

最近、東京で注目している動きやブランドなどはありますか?

ミーシャ:アートとファッションの融合というのが、最近は増えているように感じます。例えば、アーティストのスプツニ子さんなどは、ファッションも大事な面として考えていて、「何か面白いことをやりましょう」と声をかけてくれたりします。そういうことはとても刺激的だし、東京だからこそ生まれるものなのかもしれません。それに、今はインターネットもあって、グローバル化はどんどん進んでいるし、マスもアンダーグラウンドもなくなっているので、面白いアイデアさえあれば、何かを始めることができる状況になっていると思います。その中で私も色々とコラボレーションをしていけたらいいなと思っています。注目しているブランドもたくさんあるので絞るのは難しいですが、まだブログでアップできていない記事も60本くらいあるので、そちらをぜひチェックして欲しいですね。

Tokyo Fashion Diaries」の今後の展開も楽しみです。

ミーシャ:シンガポールで人気のある女性向けのオンラインマガジン「Carte Blanche X」に連載をすることが決まりました。あと、先日上海に行ってきましたが、6月に創刊したばかりのコンセプチャルなハイファッション誌「NOT magazine」でも、日本のファッションニュースを届ける連載が決まりました!
日本のファッションに興味を持っているアジアの人はとても多いので、今後もアジア圏にもしっかり情報を届けながら、日本がアジアのファッションをリードしていく存在になれたらいいなと思っています。また、新しいプロジェクトを続々と展開させるために、会社「Totteoki Inc.」を設立しました。こちらもぜひ、ご期待ください!

シンガポールの女性向けオンラインマガジン
Carte Blanche X

今年6月に創刊された、中国のハイファッション誌
NOT magazine」のHP

最後に、ミーシャさんのようにファッション業界で仕事をしたいと考えている人たちにメッセージをお願いします。

ミーシャ:ファッション業界は、才能と運の両方が必要な世界だと思います。才能があっても、運やタイミングが悪ければ仕事は来ないし、逆に運や出会いだけに恵まれていても、才能がないと継続しません。だから、特に若いうちは、部屋でネットばかりやるのではなく、できるだけ色んなところに出かけていって、出会いを作ったりしていくことが大切だと思います。

ミニドレスは「Takumi Yanazaki」、帽子はNobuki Hizume、シューズはオンライン上でオリジナルのシューズをデザインし、購入することができる「Shoes of Prey」の「ファッションリーダー」企画でオーダーしたもの

INTERVIEW by Yuki Harada

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