Interview & Report

モニカ・キム Monica Kim

モニカ・キム Monica Kim VOGUE US(Vogue.com)エディター

AmazonFWT 2019 S/S 海外ゲストインタビュー vol.1

VOGUE US(Vogue.com)エディター
2014年からU.S. VOGUE.com 勤務。過去にはWired、New York MagazineやThe Atlanticなどにも寄稿。

Amazon Fashion Week TOKYO 2019 S/S開催期間中に、「U.S. VOGUE」のエディター、モニカ・キム氏が3シーズンぶりの来日を果たした。数多くのランウェイショーやショールーム、ショップなどに足を運んだ彼女に、今回のファッション・ウィークから受けた印象や前回からの変化、東京の街にまつわるエピソードなどについて話を伺った。

 

Monica Kim

2017年3月の2017 A/Wシーズン以来、東京のファッション・ウィークは3シーズンぶりになりますが、全体の雰囲気や参加ブランドの顔ぶれなど、何か変化を感じるところはありましたか?

全体のムードや環境自体はそれほど大きく変わっていないように感じましたが、前回よりも大きなプロダクションのショーが目立つような気がしました。特にANREALAGE(アンリアレイジ)N.HOOLYWOOD(エヌ.ハリウッド)など、すでに海外で成功しているブランドにその傾向が強かったようですが、これらのブランドが日本に戻り、ファッション・ウィークに参加しているのは良いことだと思います。また、ファッション・ウィーク全体で、次世代にフォーカスし、若手デザイナーを育てていこうとする流れも感じました。

 

すでに海外で活躍しているブランドが、自国でショーをすることにはどんな意義があると思いますか?

まず、原点に立ち返るというのはとても大切なことですし、若手の登竜門という側面もあるファッション・ウィークにおいて、彼らが若いブランドに向けて、自分たちの姿勢ややり方を示すことには大きな意義があると思います。また、海外で知られているデザイナーが参加することは、海外の人たちの目を東京のファッション・ウィークに向けさせる良い機会にもなるはずです。

 

今回ご覧になったショーで特に印象に残っているものがあれば教えてください。

BED j.w. FORD(ベッドフォード)CHRISTIAN DADA(クリスチャンダダ)のコラボレーションショーが印象的でした。2つの異なる美意識の組み合わせが新鮮で、非常に面白かったですね。また、malamute(マラミュート)のショーも得意としているニットウエアはもちろん、持っているヴィジョンも素晴らしいと感じました。そして、今回がデビューショーだったFumiku(フミク)のコレクションにも強さがあり、今後も注目していきたいと感じるブランドでした。

 

Monica Kim

左から、ニック・ウースターサラ・マイノ、モニカ・キム

 

 

特に若いブランドのショーをご覧になる際には、どんなところに着目されていますが?

やはり第一はクオリティで、洋服のつくりがしっかりしているか、良いファブリックを選んでいるか、というところに注目しています。良いファブリックを使うと当然コストもかかり、若いブランドには大変なことですが、良いものを見極める目を持っているか、ということも大変重要です。若いブランドというのは、とにかくまずは何でも出してみるという傾向が強いですが、要素を凝縮させて明確なメッセージや独自の視点、世界観を表現することも大切だと思います。もちろん、そう簡単なことではないのですが(笑)。

 

今はインターネットなどを通じて、一般の人たちもリアルタイムでショーが見られる環境にありますが、今後ファッションショーはどのような方向に進んでいくとお考えですか?

ショーをするためには時間もお金もかかりますし、どんなブランドにとっても大変なことです。デジタル技術が発展している中で、今後ショーをするブランドというのが減っていくことは明らかですが、正しいスタイル、プロダクションのもとで行われたショーは本当に美しいもので、これに代わる表現はありません。一つのアートフォームとして今後も残っていってほしいですし、ライブでショーを見る時の高揚感や会場の空気感、布の動きなどはやはりその場に足を運ばなければ感じ取れないものだと感じています。

 

今回の東京のファッション・ウィークについて、VOGUEではどのような形で発信していきたいと思っていますか?

『VOGUE RUNWAY』のレビューは、ショー後から随時更新しています。特に若いブランドにとっては、VOGUEという訴求力が高い媒体に出ることによって認知されるケースもあると思うので、来日中はレビューの配信に注力しています。また、今回は若いエネルギーに感銘を受けたので、そうした部分も含めたファッション・ウィーク全体の感想や、今後の日本のファッションの方向性などについても今後まとめたいと考えています。

 

日本のブランドやデザイナーなどの記事に対する読者の反応や、アメリカにおける日本のブランドの認知度などについてはいかがですか?

山本耀司や川久保玲らの時代と比べると、日本ブランドの認知度や人気は低下していると思いますが、アンダーカバーやサカイなどが出てきたことで少し持ち直しましたし、最近はさらにその下の世代のデザイナーも出てきています。特にアメリカには日本のファッションの熱烈なファンがいて、その数も徐々に増えています。全盛期には及ばないとはいえ、日本や東京への興味は上向いていると感じています。

 

東京を歩いている人たちのファッションに関しては、前回の来日時から何か変化を感じましたか?

大きな変化は感じませんでしたが、ベーシックでミニマルなスタイルが多いと感じた前回に比べ、ストリート系のファションが若干増えた印象を受けました。また、海外の都市に比べると、パンクファッションからカラフルな洋服に身を包んだ人まで、さまざまなスタイルの人たちがひとつの場所に混在していることが大きな特徴で、そのコントラストの強さが東京の面白さだと感じています。

 

Monica Kim

東京の中で好きなエリアやショップなどはありますか?

まず、私にとって東京は世界で最も好きな街のひとつです。東京にいる時によく時間を過ごしているのは渋谷ですが、代官山も好きなエリアですね。私はよくヴィンテージショップで買い物をしますが、LAILAというショップには非常に美しいヴィンテージウエアが揃っていて、本当はお店の名前も教えたくないくらい気に入っています(笑)。また、私はショッピングとともに食べることも大好きですが、東京はこのふたつにおいて世界でもトップクラスの街だと思っています。

 

最後に、今回の来日にあたって個人的に楽しみにしていたことや、これからしてみたいことなどがあれば教えてください。

これも本当はあまり言いたくないのですが(笑)、Archive Storeという新しく渋谷にできたヴィンテージショップに行くことを今回の楽しみの一つにしていました。すでにお店に行ってきましたが、コムデギャルソンやメゾンマルジェラなどのレアなアイテムが、まるでアート作品のように展示されているすばらしい場所でした。今回は、少し長めに日本に滞在する予定なので、代官山や恵比寿、中目黒などで、これまでに行きたくても行けなかったお店などをまわってみたいと思っています。あと、友人から勧められているチームラボミュージアムも、アメリカにはあまりないタイプの美術館でとても興味がありますし、箱根に行って温泉にも入ってみようと思っています。

 

Interview by Yuki Harada
Interpretation by Aiko Osaki

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