Raffaello Napoleone ラファエロ・ナポレオーネ
PITTI IMMAGINE CEO
PITTI IMMAGINE(ピッティ・イマージネ)は、イタリア・フィレンツェで、世界最大級のファッションのプラットフォーム「ピッティ・イマージネ・ウオモ」をはじめ、レディスの「ピッティ・イマージネ・W」、キッズの「ピッティ・イマージネ・ビンボ」などを開催している企業。ちなみに、この6月開催の「ピッティ・イマージネ・ウオモ 82(2013 S/S)」では、特別ゲストとしてカルヴェンが招待されることになっている。また、昨年からはネット版「e-Pitti」も展開。
今年3月のMercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012-13 A/Wでは、世界中から海外有力バイヤーが来日して大きな話題となったが、バイヤーのみならず、ファッション業界の重要人物もショーやインスタレーション、イベント会場を訪れていた。そのうちの一人が、伊ピッティ・イマージネ社長(CEO)のラファエロ・ナポレオーネ氏だ。
今年1月に開催された「ピッティ・イマージネ・ウオモ」に「TOKYO FASHION WEEK in ITALY」が出展した際、東京ブランドのクリエイション力やプレゼンテーション力の高さに衝撃を受け、東京の”今” を自分の目で確かめなくてはならないという思いに駆られ、来日することを決めたと話す。タイトな滞在スケジュールだったが、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012-13 A/Wのファッションショーやインスタレーション、イベントに出来る限り足を運び、さらに東京の街やショップも回ったという。
ナポレオーネ氏が感じた、東京のファッション、街、カルチャーはどのようなものだったのだろうか。お話をうかがった。
今回、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOとして2シーズン目となりますが、東京のファッション・ウィークについて、どう感じられますか。
東京のファッション・ウィークが変わった、良くなったということは、イタリアまで届いています。
今回来日したのもそのためです。
ショーやインスタレーションを何本かご覧になっていると思いますが、いかがでしょうか。
yoshio kubo、CHRISTIAN DADAのショーと、AMBELLのインスタレーションを見ました。yoshio kuboとCHRISTIAN DADAのショーは、非常に計算されたイメージの出し方をしていて、ヨーロッパのファッションショーにはない演出で、とても面白かった。AMBELLのインスタレーションはライティングも含め、演出が凝っていて、コレクションとしては英国からの強い影響があるように感じました。
yoshio kubo 2012-13 A/W Collection
CHRISTIAN DADA 2012-13 A/W Collection
AMBELL 2012-13 A/W Collection
今年1月のピッティ・イマージネ・ウオモに「TOKYO FASHION WEEK in ITALY」として、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOの参加ブランド含め、東京を代表するブランドが出展しましたが、いかがでしたでしょうか。
主催者としては、非常に成功したのではないかと思います。多くの引き合いもありました。1,700以上のジャーナリストが来場しましたが、日本の若いデザイナーのクリエイションに触れる非常に良い機会となったのではないでしょうか。「TOKYO FASHION WEEK in ITALY」は、今回のピッティ・イマージネ・ウオモを盛り上げた、重要な推進力のひとつになっていたと思います。ただ、一度きりの打ち上げ花火で終わらせるのではなく、今後も継続して参加することが重要なので、大いに期待しています。
今回で来日は何回目ですか。
10回ほどは来ているかと。でも、今回の来日は、ヨウジヤマモトの展示会に行って以来、6年ぶりです。ピッティ・イマージネ・ウオモには日本のブランドが70社ほど出展していて、日本はとても重要な国だと思っていますから、年に一回は必ず、スタッフを日本に行かせるようにしています。
PITTI IMMAGINE UOMO
6年前の東京に比べて、何か変わったと感じるところはありますか?
たくさんあります!ショップだけでなく、国際的なラグジュアリーブランドが投資して大きなビルも建っているので、街の雰囲気が大きく変わったように思います。特に代官山は、前回の来日ではそれほど重要な街というイメージはなかったのですが、表参道同様、開発されて大きく変わったように思います。また、東京には若手のデザイナー、ブランドも次々と出てきていて、新しいトレンドやエネルギーが溢れ出しているという印象を受けました。
“新しいエネルギー” とは、どのようなものでしょうか。
日本は8年ほど前から不景気と言われていますが、一方で非常に力強い国だと感じます。震災後1年ということもあるのかもしれませんが、国民が団結して復興に向け、動いている印象です。特にエネルギーの問題は、日本だけでなく世界的な危機ですよね。万国共通で省エネは絶対のテーマで、服を作る時に消費する水や電気なども、より高効率な使い方の工夫をしていかざるを得ない状況だと思います。食べ物に関しても、量をたくさん食べるというよりも本当に良いものを少しだけ食べるということが、将来的には主となっていくでしょう。
今回の来日で、出掛けられた街やショップなどを教えてください。
原宿や表参道、代官山、そして銀座にも行きました。有楽町の阪急MEN’S TOKYOは特に気に入りました。銀座では、JITAC(ヨーロピアンテキスタイルフェア)にも足を運びました。この後はroomsLINKに、明日はシブヤファッションフェスティバルに行く予定です。『ヴォーグ』主催の「ファッションズ・ナイト・アウト」もそうですが、ファッションと街を絡めるイベントはとても大切ですし、ファッション・ウィークと連動していることも素晴らしいと思います。
今年1月のピッティ・イマージネ・ウオモに出展した「VERSUS TOKYO」のディレクター、吉井さんのショップ「THE CONTEMPORARY FIX」にも行かれたとか。
とても面白いショップですね。ジェラートも本当に美味しかったし、彼がデザイナーの一人を務めている「Mr.GENTLEMAN」も素晴らしかった。良い食事と良いファッションがミックスするというのは重要です。ピッティ・イマージネでは、メンズ、レディス、キッズだけでなく、「TASTE」という食の展示会もオーガナイズしていて、食の重要性をよく理解しています。代官山の「イータリー」にも行きましたが、素晴らしいディレクションだと思います。ニューヨークの「イータリー」には1日に25,000人もの人が来ます。来年にはローマにも出店するそうで、非常に面白いイタリアン料理プロジェクトになるのではないかと思っています。
TASTE
イタリアには食とファッションが融合したショップはないのでしょうか。
あるにはありますが、ブティックにコーヒーショップが併設されている程度で、軒数も多くありません。とは言え、イタリアでもファッションと食の融合は広まりつつあって、ミラノの百貨店「ラ リナシェンテ」の最上階はフード&レストランフロアになりましたし、ブランドショップの中にレストランやバールがあったりしますが、日本の方がミックス感が強くてコンセプトも面白いと思います。食は良いコミュニケーションツールになりますが、ただ品質が良く、ファッショナブルなメニューを揃えるということではなく、カンパニーイメージとのバランスも大切です。