Interview & Report

SAVE THE ENERGY PROJECT ”Re:神社”

SAVE THE ENERGY PROJECT ”Re:神社” インスタレーションレポート&インタビュー

AmazonFWT 2017 S/S [RELATED EVENTS - Special]

SAVE THE ENERGY PROJECTとは?
「SAVE THE ENERGY」=「エネルギーを守ろう」これは身近な問題であり、海外のファッション業界では既に大きなテーマです。日本ではもっと意識しなくてはならない課題の一つです。
「SAVE THE ENERGY PROJECT」では、ファッションに関わる分野での省エネルギーへの取組を紹介、推進し、ファッッションを通じて賢く、カッコよく「省エネ力」を取り上げ、意識していくことを目的としています。

経済産業省資源エネルギー庁が主催し、2016年3月のファッション・ウィークに立ち上がった「SAVE THE ENERGY PROJECT」は、Amazon Fashion Week TOKYO 2017 S/Sでも、スペシャル関連イベントとしてインスタレーションを開催した。 2度目の発表となった今回は、2017年3月の「SAVE THE ENERGY PROJECT」本格始動に向けて、柿本ケンサク氏によるインスタレーション“Re:神社”が渋谷ヒカリエ8階のCOURTに出現し、SAVE THE ENERGY PROJECTプロモーションビデオが上映された。インスタレーションの模様をクリエイティブディレクターの柿本ケンサク氏、企画ディレクターの高橋直子氏のインタビューと合わせてレポートする。

 

プロジェクトのスローガンである“「SAVE THE ENERGY」=「エネルギーを守ろう」”は現代人にとって非常に身近な問題であり、2015年12月にパリ協定という国際的なCO2削減への枠組みが同意され、海外では大きなテーマとして位置付けられてきている。
前回は、日本が世界に誇る素材であるデニムに焦点を当てたプレゼンテーションであったが、今回は全く新しい神社“Re:神社”が発表された。歴史や宗教の壁を超えた、新しい自然崇拝を表現した。

古事記にさかのぼると、日本人は太古の時代から自然そのものを“神”として崇めてきた自然崇拝の軌跡がある。天地自然、山川草木の一切、動物、鳥、虫もこの地球に存在するすべてがひとしく命あるもの、そこに神が宿るもの、あるいは神そのものであり、これらを崇拝する精神性が根源にあるという。

“Re:神社”はエネルギー削減を考慮した100%リサイクルのダンボールを材料として制作され、その社内には土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)という紙様をまつっている。高知・土佐は、和紙の産地として1000年近い歴史を持ち、その中で誕生した土佐典具帖紙は、19世紀から変わらぬ手漉(す)き和紙の流し漉き技術の域を極めた伝統技法で、厚さ0.03ミリの世界一薄くて強い様子から「カゲロウの羽」とも表現される。ボストン美術館の「浮世絵」をはじめ、各国の重要書籍修復、バチカン市国の「システィーナ礼拝堂」、ミケランジェロ作礼拝堂主祭壇「最後の審判」などの修復にも土佐典具帖紙が多方面で使用されているという。

薄くて強い土佐典具帖紙は、これから何百年も国内外の美術品、文化財の命を守っていく。“Re:神社”は自然崇拝のみならず、地球規模の省エネや環境保全に対する認識を深め、広げていくことへの「祈り」そのものを展示した。

Interview

SAVE THE ENERGY PROJECT クリエイティブディレクター:
柿本 ケンサク氏
演出家/映像作家/写真家

SAVE THE ENERGY PROJECT 柿本 ケンサク氏

前回のインスタレーションでは、ファッション界の省エネ力について、デニムに焦点を当て、省エネ力のあるメーカーの服を買うことで、間接的に省エネに参加することになるという提案をしました。前回制作した映像を本プロジェクトのプロモーションビデオとして継続的に流すことによって、コンセプトを浸透させつつ、今回は概念に対して新しいアプローチをしたいと考えました。

例えば、私がいる映像業界では日々、広告、PV、映画で巨額な費用でセットを組みます。仮に映像では環境問題への提議をメッセージにしていても大量の廃材を出してしまう矛盾がありました。そこで衣服の再生可能性から発想を得て、再生可能な段ボールで展示を制作して、新しいリサイクル素材で循環の轍(わだち)をつくれないかと考えたのが構想の入り口でした。そこに日本人の信仰性をかけて、日々の自然とともにある感謝と祈り、恭敬を表現しました。

SAVE THE ENERGY PROJECT 柿本 ケンサク氏

 

SAVE THE ENERGY PROJECT 企画ディレクション:
高橋 直子氏
ブランディング ディレクター

SAVE THE ENERGY PROJECT 高橋 直子氏

今回は、ファッション・ウィークの会場である渋谷ヒカリエに神社が出現して、来場するファッション関係の方々が参拝していく、というユニークさも意識しました。
SAVE THE ENERGY PROJECTは先端技術と伝統技術の両軸で進めていきたいと思っており、前回は日本のデニム製造に焦点を当て、今回は伝統工芸に注目しました。土佐典具帖紙は日本一の透明度を持つ仁淀川のほとりが紙漉き場で、地元の吾北産の楮(こうぞ)が天日で乾かされ和紙の原料となります。地域に根付いた一気通貫の素材で、大自然の恵みが詰まっています。
中でも、浜田兄弟和紙製作所(HAMADAWASHI)の土佐典具帖紙は、世界一薄い手漉き和紙として国の重要無形文化財に認定されています。来年3月には本プロジェクトの一環で、HAMADAWASHIとファッションデザイナーがコラボレーションした作品を発表する予定です。手漉き和紙の伝統を守り、皆さまに伝えていきたいと思っています。
これからも、こういった伝統技術とファッションを結んでいきたいと思っています。
省エネとファッションがまだまだ距離があるので、だからこそ時間をかけて両者の接点をしっかりプレゼンテーションして、省エネが生活の中で定着するようにプロジェクトを進めていきたいです。

SAVE THE ENERGY PROJECT 高橋 直子氏

INTERVIEW by Shinya Miyaura

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