Interview & Report

服づくり 4.0 featuring junhashimoto & sitateru

服づくり 4.0 featuring junhashimoto & sitateru 対談

junhashimotoデザイナー 橋本 淳/シタテル株式会社 代表取締役 河野 秀和

服づくり 4.0 featuring junhashimoto & sitateru
デザイナーと繊維産地 / 工場によるコラボレーションをITプラットフォームを通じて行うという、従来とは異なるデジタル時代の服づくりを実証実験するプロジェクトです。具体的には、デザイナーjunhashimotoが、シタテルのITプラットフォームを活用し、これまで取引のなかった工場とコラボレーションして短期間でコレクション作品を作成しました。イベント会場では、作品を作成する過程の映像や実際の作品をご覧いただけます。
*Free entrance

服づくり 4.0

ファッションデザイナーと川上の繊維企業との連携を推進するため、デジタルサービスの活用がより一層注目されている中、経済産業省の実証事業として「服づくり4.0」が実施される。株式会社ローランド・ベルガーによるプロジェクト運営のもと、Amazon Fashion Week TOKYO参加ブランドのjunhashimotoと、衣料品製造のITプラットフォームを提供するシタテル株式会社の協力により、2017秋冬コレクションの一部を製作。3月20、21日に本プロジェクトの製造工程を紹介するインスタレーションが、3月20~22日にはjunhashimotoの2017秋冬コレクションをその場でオーダーできるという「See now, Buy now」の実験の場となる展示会が渋谷ヒカリエ8階で行われる。 junhashimotoデザイナー 橋本淳氏と、シタテル代表取締役 河野秀和氏の対談を通して、この取り組みについてご紹介する。


 

シタテル株式会社 代表取締役 河野 秀和 氏

シタテル株式会社 代表取締役 河野 秀和 氏

「服づくり4.0」のテーマは、デザイナーと工場による新しい服づくりのあり方を提案するということですが、シタテルのサービス内容を教えて下さい。

河野氏:シタテルはインターネットを通して、優れた技術を持つ工場の「時間・技術・資源」のデータ管理を行い、「短納期・高品質・小ロット」での服の製造を実現する、国内初の衣服生産プラットフォームサービスを提供しています。さまざまなニーズへの対応力、提案力が強みです。

橋本氏:僕はこの取り組みで初めてシタテルさんを知ったのですが、今の時代にマッチしているサービスだと感じました。服づくりにおいては、工場の情報は自分たちのコネクションの範囲内が基本です。新しいことにチャレンジしようとした時に、取引先ができないと、それ以上の手段を見つけられないことを課題に感じていたところで、今回のお話がありました。

junhashimotoデザイナー 橋本 淳 氏

junhashimotoデザイナー 橋本 淳 氏

河野氏:テクノロジーの力で工場の絞り込みを簡略化して、シタテル・コンシェルジェという専属スタッフが、デザイナーさんの生産を納品までサポートしています。 junhashimotoさんのこれまでの商品を拝見して感じたのは、人が着た時にきれいなシルエットが出る服だなと。特に現代のスマートなビジネスマン層にファンの多いブランドだと思いました。

橋本氏:鋭いですね(笑)。実はうちのブランドは「プラス3cm、マイナス3㎏」という裏テーマがあります。ハンガーにかかっている時は何の変哲もないシルエットに見えるかもしれませんが、着ると少し背が高く、痩せて見えるようなバランスになるように計算してデザインしています。

今回は、どんなアイテムを製作されたのですか。

橋本氏:アウター、トップス、パンツと製作させてもらいました。パターンから素材選び、縫製まですべてシタテルさんにお願いしました。一貫してお任せしたことで、シタテルさんとの取り組みのメリットや面白みを強く実感できました。

河野氏:生産の打ち合わせをする中で、「スーパーカジュアルとスーパークラシックの融合」というキーワードをいただきましたよね。

橋本氏:チノ素材のセットアップなんですが、0番のAMFステッチでクラシックっぽく仕上げて欲しいとお願いしました。これは相反する要素なので、なかなか難しいことなんです。0番はタコ糸くらいの太い糸で、AMFステッチはスーツに使う手縫い調のきれいな仕上げです。

河野氏:そうですね。0番ステッチとAMFステッチの組み合わせは、私たちも初めて受けたご依頼でした。こういったエキサイティングな生産は大変さもありますが、デザイナーさんのこだわりを妥協せず形にできることは、服づくりに携わる上でやりがいでもあります。

 

橋本 淳氏 × 河野 秀和氏
橋本 淳氏 × 河野 秀和氏

 

デザイナーの視点でシタテルの強みとは?

橋本氏:シタテルさんの強みは、先ず付き合っている工場の数ですね。先ほども言いましたが、新しいアイデアに対して、付き合い先の工場やOEM会社に「それはできません」と言われてしまうと、通常だとそこから先は進めません。ただ、シタテルさんならネットワークしている先の工場の数が格段に違うため、相応しい工場を見つけて対応していただけます。

河野氏:現在、国内250の工場と連携しています。シタテルのサービスの特徴でもありますが、工場の情報を独自開発したテクノロジーの力によって絞り込むことができるので、人力で工場を探すよりも、スピードもコストも抑えることができます。

橋本氏:これだけ対応してくれて、納期も正確で、生産コストは安く感じました。また、現場サイドからは、シタテルさんのチャットシステム「マイアトリエ」を使うことで、服づくりに必要なコミュニケーションを効率的に行えたとも聞いています。

河野氏:デザイナーズブランドの利用数も増えていて、それを知った技術自慢の工場から「うちではこんなことができるよ」と売り込みされることも増えてきました。ブランドさんにとって生産しやすい環境が育ってきています。最近は特に、小ロットのアイテムや、仕様の凝った難しいアイテムなど、ブランドさんやショップさんから、通常の生産には乗せることのできないご依頼も増えてきています。元来、工場にとってデザイナーズブランドからの仕事は、やりがいがあって収益性もそれなりの案件。ただ、小ロットで稼働率が安定しないことが課題でした。シタテルのプラットフォーム上で稼働率を見える化してマッチングすることで、この問題が解決されるのです。

 

橋本 淳氏 × 河野 秀和氏

今回、渋谷ヒカリエで開催される展示会やインスタレーションの見所を教えてください。

橋本氏:服はもちろんですが、特に生地屋さんやアパレル関係者には、この機会にシタテルさんを知ってもらいたいと思いました。工場側もアパレル側も、良いものはみんなで使った方が良いので。

河野氏:橋本さんのようなデザイナーにそう言っていただけると心強いです。

橋本氏:素材屋さん、生産代行業者さんには提案力が求められますが、シタテルさんとは素材選定などのコミュニケーション面もスムーズに進行したので助かりました。

河野氏:今回お取り組みする中で、橋本さんにもアドバイスをいただきましたが、生産状況をスマホでチェックできる「ステータス表示機能」があれば、ブランドさんも予定が組みやすくなるとのことで、必要性を改めて感じました。

橋本氏:生産状況をタイムリーに把握できると安心感が増しますね。

 

今後の展望を教えてください。

河野氏:国内に工場がたくさんある中で、テクノロジーを活用して効果的に工場と生産を求める側をシームレスにつなげることのできる未来を作っていきたいと思っています。また、プロのファッションデザイナーはもちろんですが、アパレル以外の異業種の方も気軽に服づくりができるプラットフォームを構築したので、産業全体を盛り上げていけたらと思っています。

橋本氏:例えばですが、シタテルさんとデザイナーが手を組めば、デザインと生産力がセットになって、異業種の方にアイテムの提案ができ、デザインから生産まで一貫して受けられるようになりますよね。

河野氏:そうなんです。デザイン提案の機能を強化していくためにも、今後はデザイナーさんと連携して、新しいシナジーを生んでいきたいと考えています。

 

ファッションデザイナーがITプラットフォームを活用して服の製作を行うことの有効性が今回の実証事業で見えてきた。今後は、シタテルに限らず、同様のITサービスを提供する事業者も増えてくるであろうし、サービスも充実してくるであろう。それをどう活用し、コレクション製作に活かしていけるかは、ファッションデザイナーにかかっているのではないか。そして、ファッションデザイナーとITプラットフォームが協業していく中で、このコラボレーションの姿もまた発展していくであろう。

橋本 淳氏 × 河野 秀和氏

INTERVIEW by Shinya Miyaura / PHOTO by Kenji Kaido

Go to Top