SAVE THE ENERGY PROJECT イベントレポート&インタビュー
AmazonFWT 2017 A/W [RELATED EVENTS - Special]
SAVE THE ENERGY PROJECTとは?
「SAVE THE ENERGY」=「エネルギーを守ろう」これは身近な問題であり、海外のファッション業界では既に大きなテーマです。日本ではもっと意識しなくてはならない課題の一つです。
「SAVE THE ENERGY PROJECT」では、ファッションに関わる分野での省エネルギーへの取り組みを紹介、推進し、ファッッションを通じて賢く、カッコよく「省エネ力」を取り上げ、意識していくことを目的としています。
ロゴマークのコンセプト
「SAVE THE ENERGY そのことによって自然のご褒美が返ってくるイメージでデザインしました。 ロゴマークの形に込めたのは、手と発芽。芽が出る限り、自然は永遠に続いていく。そこに広がる山と雲。 ほかにも、いろんな形を読み取ってくださると幸いです」
2016年、経済産業省資源エネルギー庁によって立ち上がった「SAVE THE ENERGY PROJECT」。 Amazon Fashion Week TOKYO 2017 A/W会期5日目の夜に、ヒカリエホールBに高座が設けられ、落語家の立川志らく氏による落語形式でのプロジェクトの公式マーク発表が行われた。 本プロジェクトを主催する経済産業省 資源エネルギー庁の三牧純一郎氏や、斬新なアイデアでプロジェクトを導くディレクターの高橋直子氏など、関係者のインタビューと合わせて、今季の「SAVE THE ENERGY PROJECT」の取り組みについてレポートする。
「SAVE THE ENERGY PROJECT」のローンチイベントとなった2016年3月のファッション・ウィークでは、柿本ケンサク氏による映像が披露され、プロジェクトのアンバサダーを務める井浦新氏によるプレゼンテーションが行われた。2回目のプレゼンテーションとなった前回は、渋谷ヒカリエ8階COURTに鳥居を設置した“Re:神社”を実施。地球規模の省エネや環境保全に対する認識を広げていくことへの「祈り」を表現する展示となった。 そして3回目となる今回は、立川志らく氏の落語や気鋭の写真家の小浪次郎氏撮り下ろしによるZINEの発行、BEAMS JAPANではポップアップショップが行われ、日本の繊維産地メーカーとファッションブランドのコラボレーションアイテムが販売されるなど、様々な取り組みが行われた。
3月24日の夜、ヒカリエホールBで行われたプレゼンテーションでは、立川志らく氏による約20分間の落語「死神」が披露され、その後、同氏から「SAVE THE ENERGY PROJECT」公式マークが正式に発表された。版画家の松林誠氏によるこのマークは、省エネによって自然のご褒美が循環して返ってくることを表現したもので、「山と雲」と「手と発芽」がデザインのインスピレーション源という 。本マークは「SAVE THE ENERGY PROJECT」に賛同し、省エネを実践しているメーカーやデザイナーなどに付与して、商品に付けることで、本プロジェクトのコンセプトを一般の方にも普及させていくと説明された。
プロジェクトの企画ディレクターを務める高橋直子氏は、「エネルギーに対比するものとして、今回は伝統工芸に着目しました。伝統工芸の手仕事はずっと前から、化石エネルギーを極力使わずに、丁寧なものづくりを重ねている。落語は、座布団一つで成り立つという伝統的なエンターテイメントで、『SAVE THE ENERGY PROJECT』にぴったりだと思った」と着想を振り返った。また、本マークについては「一過性にならないように、いつかこのマークが世の中でスタンダードになることを目指して、着実に伝え続けていきたい」と語った。
「Sasquatchfabrix.(サスクワッチファブリックス)」と協働した株式会社浜田兄弟和紙製作所の代表取締役 浜田洋直氏は、「土佐典具帖紙の製作方法は天保時代の一世紀以上前からほぼ変わっていません。自分たちが変わらず続けてきたことを、このような表現でご一緒させていただき、とても光栄で楽しかった」と話した。今後の目標は、海外に和紙を広めることだと言う。
「blackmeans(ブラックミーンズ)」と協働した中伝毛織株式会社の取締役副社長 中島君浩氏は、「工場の屋根に太陽光パネルを設置したり、加工場での温水の再利用など、自社設備で省エネルギーや環境保全に取り組んできたので、こうやって焦点を当てていただけたのは嬉しい」と話した。今回のプロジェクトでは、半永久的に使用できるというウールの特性を活かし、同社で取り組んできた再生ウールを使用した法被を「ブラックミーンズ」と製作した。
通常はランウェイが敷かれる場に高座が設けられ、落語が披露されるという前代未聞のプレゼンテーションだったが、会場には一般客の来場も目立ち、会場の外ではポップアップショップが実施され、今回はファッション業界にとどまらず、広く「SAVE THE ENERGY PROJECT」を訴求する取り組みとなったのではないだろうか。
Interview
三牧 純一郎氏
経済産業省 資源エネルギー庁 省エネルギー・新エネルギー部 省エネルギー課 課長補佐(企画調整担当)
「SAVE THE ENERGY PROJECT」の第1弾では、日本が誇るデニムをテーマ素材にしたプレゼンテーションでしたが、今回は一般社団法人日本ファッション・ウィーク推進機構(JFWO)の協力のもと、合成繊維の小松精錬、毛織物の中伝織物、土佐典具帖紙の浜田兄弟和紙製作所といった様々な産地の素材メーカーとファッションデザイナーをマッチングして商品を製造し、BEAMS JAPANで販売しました。具体的な取り組みになったことで、ファッションを通じて消費者の方々に「省エネ力」の高い商品を訴求していくという当初描いていたビジョンに近づけていると思います。私も今回、デザイナーと共に小松精錬と中伝毛織を訪問しましたが、デザイナーと工場側で省エネについて議論しながら、ものづくりに取り組めたことは良い機会になったと感じています。
このプロジェクトを通して、事業者の省エネ取組が付加価値となった商品が世に出ていくことで、消費者の理解を深め、さらに省エネに賛同し、実際に取り組むメーカーも増やしていきたいと思っています。BEAMS JAPANでのポップアップショップでは、商品の販売だけでなくシルクスクリーンプリントのワークショップを実施したり、「SAVE THE ENERGY PROJECT」の ZINEを通して、消費者に効果的にメッセージを伝えることができたと手応えも感じました。
今後も、ファッション・ウィークという場でイベントを行いながら、デザイナーとメーカーのマッチングを続けつつ小売店との連携も図り、よりBtoCにも広げていきたいと考えています。「ファッションと省エネ力」という要素を共存させて、これが新しいビジネスモデルの一つとして成立することを目指していきたいです。
PDF >>「ファッション業界における省エネ活動強化のための実行計画」進捗状況
写真家 小浪次郎氏が、徳島県の藍染工房「buaisou(ブアイソウ)」と高知県の手漉き和紙「土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)」を製造する「浜田和紙」を訪れ、本プロジェクトのために撮り下ろした写真をまとめたZINE。