Interview & Report

VERBAL

VERBAL バーバル

m-flo / TERIYAKI BOYZ® Producer / MC / DJ / Designer

m-floでの活動の他、独自のコネクションを活かして数多くのアーティストとコラボレーション。超豪華ラップグループTERIYAKI BOYZ®のメンバーとしても活躍しており、Pharrell、Kanye West、will.i.am(BLACK EYED PEAS)など、海外のアーティストとも交流が深い。昨年よりDJとしても飛躍を遂げ、そのスタイルはファッション界からの注目も熱く、ジュエリーブランド "ANTONIO MURPHY & ASTRO®"、そして "AMBUSH®" のデザインも手掛ける。また、初の映画監督にも挑戦しており、今後もミックスな感性を武器にあらゆるフィールドでの活躍に期待が集まる。
新たに立ち上げた KOZM AGENCY の代表として、MADEMOISELLE YULIA を筆頭に様々なアーティスト/プロデューサーのマネージメントも始める。 3月14日にはついにm-floとしては5年ぶりとなるアルバム『SQUARE ONE』をリリース。

[ m-flo ] www.m-flo.com
[ TERIYAKI BOYZ® ] www.teriyakiboyz.com
[ AMBUSH® ] www.ambushdesign.com
[ AMBUSH® twitter ] www.twitter.com/ambushdesign
[ KOZM AGENCY ] www.kozm-agency.tv

1998年、Taku Takahashi氏らとともにm-floを結成し、今や日本を代表するアーティストとして広く知られる存在となったVERBAL氏。2002年には、「AMBUSH®DESIGN」を立ち上げ、自身のジュエリーブランド「AMBUSH!®」「Antonio Murphy & Astro®」などで独自のセンスを発揮し、ファッションリーダーとしても絶大な人気を誇っている。
メルセデス・ベンツ ファッション・ウィーク 東京のアドバイザーでもある彼が、ファッションにおける原体験やブランド立ち上げの経緯、ファッション・ウィークに対する意見などについて語ってくれた。

ファッションに興味を持つようになったのはいつ頃からですか?

VERBAL:小学5年生の時に親の仕事の関係でボストンに滞在する機会があったんです。そこでは、同い年くらいの子たちがブレイクダンスをしたり、スクールバスの中でラップを合唱していて、ファッションにしても、色んなブランドのスポーツウェアを着たり、スニーカーを履いていたんですね。それまで日本で漫画くらいしか知らなかったような子が、突然そんなカルチャーに触れて、急に音楽やストリートファッションに目覚めたんです(笑)。最初は、ナイキのトラックスーツがカッコ良いという感覚は全然わからなかったんですが(笑)、みんながスニーカーなどの自慢をしているから本当にカッコ良く見えてくるし、そこにあるカルチャーやアティチュードにすごく刺激されました。日本に戻ってからは、アメリカのヒップホップ雑誌を読んだり、スケートボードのビデオを見たりして、ストリートファッションを研究するようになりました。

当時のVERBALさんにとって、そうしたストリートファッションを身に付けるということに、
何か特別な意識はありましたか?

VERBAL:ヒップホップ・カルチャーに魅力を感じた部分とも共通するんですが、そうしたファッションをすることで意思表明ができるんですよね。まだ人種差別も多かった時代のヒップホップには、黒人としての誇りについて書かれたラップの歌詞も多くて、感化されていました。スケートカルチャーにもそれと近いところがあって、「スケボー = 社会にとって迷惑な存在」というイメージに対して、「SKATEBOARDING IS NOT A CRIME」というステッカーがスケーターの間で流行っていたんですね。当時は、社会から阻害されたり、人と同じじゃイヤだという気持ちが強い人たちが、こうしたカルチャーに集っていたところがありました。僕にとってのヒップホップやストリートカルチャーは、自分の声で意思表明できるツールであり、ファッションもその中のひとつだったんです。

現在のVERBALさんは、ヒップホップだけにとどまらない自由なスタイルをされていますね。

VERBAL:始めは何もわからなかったので、向こうのファッションの完全なコピーでした。でも途中で、あまり似合わないということに気づき始めて(笑)、だんだん自分に合う着こなしにアレンジしていくようになりました。ヒップホップには、こうじゃないといけないというルールが色々あるんですが、それにも疲れてきていたんですね。スケートカルチャーにしても、当時はヒップホップとは完全に別物として捉えられていたのですが、僕は両方とも好きだったし、別に一緒でもいいんじゃないかと思い、色んなスタイルを混ぜるようになりました。その頃からファッションがさらに楽しくなってきたところがありましたね。

様々なスタイルをミックスするというのは、日本のカルチャーの特色なのかもしれないですね。

VERBAL:そうですね。海外から取り入れたものを日本独自のフィルターを通すことでカッコ良いものにして、それがまた海外に広がっていくということも多いですよね。日本のすごいところは、ファッションに対して何の抵抗もなく、オープンなところだと思います。アメリカやヨーロッパには、ファッションに対する固定概念が強くて、保守的なところがありますが、例えば、原宿に行けばみんな色んな格好をしていて、誰にも何も言われないじゃないですか。それに最近はデザイナーにしても、ファッションデザインの専門的な勉強をしたかどうかは関係なくなっていますよね。色んな才能がどんどん入ってくることで、ファッション全体が活性化しているイメージがあります。

ご自身でもジュエリーのデザインなどをされていますが、そのきっかけを教えて下さい。

VERBAL:ヒップホップのアーティストとして、自分が欲しいと思えるジュエリーやチェーンがあまりなかったというのが大きかったですね。その後、ジュエラーのANTONIOと出会い、僕が描いたスケッチをもとに実際に作るようになったのですが、それを自分で付けていたら色んな人が興味を持ってくれて、セレクトショップにも置かせてもらうことになったので、2004年にジュエリーブランドとしてスタートしました。2008年には、より多くの素材を使ったセカンドラインを立ち上げ、カニエ・ウエストをはじめ海外アーティストが身に付けてくれるようになり、一気に広がっていきました。うちのデザインは特殊なので、幅広い層に向けたものにはならないかもしれないですが、好きな人には響いているので、このまま特殊なジュエリーやアクセサリーを作り続けていきたいなと思っています。最近は問い合わせも増えているので、今年の4月にはまとまった形で新作コレクションを発表できたらと考えています。

国内外の若手クリエイターとのコラボレーションにも積極的ですね。

VERBAL:若いデザイナーが作っているものは発想が豊かですし、可能性を感じられるので好きです。若手でも何かを感じさせるデザイナーならAMBUSH®DESIGNでもコラボレーションしていきたいし、もともと何か新しいことが始まる瞬間を共にすることが好きなんです。ただ、国内の若いデザイナーには、作っているものはすごくカッコ良いのに、PRに対して無頓着な人が多い(笑)。それはちょっともったいないので、少しでもプロモーションの助けになれたらと思って、彼らに自分の衣装を依頼したりすることもあります。お金のためにアートをしてはダメだけど、アートをやるためにはお金を稼がなければいけないこともある。そこは大事なのかなと思っています。

そうした発信力の部分は、東京のファッション・ウィークにおいても、ひとつの課題になっているように感じます。
ファッション・ウィークに対する提案などがあれば教えて下さい。

VERBAL:提案というほどではないですが、ファッション・ウィークを楽しむひとりとしては、もっと簡単にイベントやパーティなどのインフォメーションが手に入れられるようになるといいなと感じます。あとは、実際に海外から来た人に言われることが多いのですが、有名ブランドのショーの情報だけではなくて、日本ならではの面白いネタなども発信していけるといいのかなと。海外のアーティストやバイヤーが来日した時なんかでも、キレイなレストランに連れていくよりも、もっと庶民的なところに行った方がみんな喜ぶんです。良い意味でB級の部分をもっと見せていくといいのかもしれないですね。

音楽、ファッション、デザインなど幅広い分野で活躍されているVERBALさんですが、
今後、新たにやっていきたいことなどはありますか?

VERBAL:最近は、若い人たちのためにレーベルを立ち上げたりしているのですが、アートや音楽に携わる若い人たちが、もの作りに集中できるプラットフォームを作っていきたいです。自分でものを作ることももちろん好きですが、そういった環境作りにも力を入れていきたいと考えています。また、海外のアーティストと日本の若い才能をつなげていくことで、日本にもこんな作り手がいるんだということを国外に伝えられたらいいなと思っているので、その架け橋役になりたいですね。

「Maison BO-M」

3月14日にリリースされた、m-floとしては5年ぶりとなるアルバム『SQUARE ONE』

最後に、先日リリースされたばかりの5年ぶりとなるm-floのオリジナル・アルバム「SQUARE ONE」について、コメントをお願いします。

VERBAL:これまで「loves…」シリーズで、色んなアーティストをフューチャーしてきたのですが、今回は一切フューチャリング・アーティストをクレジットしていないんです。5年前に比べて、CDの売上自体は急激に落ち込んでいますが、みんなが音楽を欲しているということは変わらない。そんな時代だからこそ、原点に帰って、楽曲や歌の良さだけで勝負できるものを作りたかったんです。「SQUARE ONE」というタイトルも、「ふりだしに戻る」という意味の「Back to square one」という言葉から取っています。もともとm-floは、自分たちが本当に良いと思ったり、面白いと感じる音楽を作ることから始まっているし、もう一度その原点に戻りたかったんです。

INTERVIEW by Yuki Harada

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