Interview & Report

吉田 ユニ Yuni Yoshida

吉田 ユニ Yuni Yoshida Art & Creative Director

MBFWT 2013 S/S & 2013 A/W Key Visual Creator

1980年東京生まれ。女子美術大学卒業後、大貫デザイン入社。06年より、宇宙カントリーにアートディレクターとして所属。07年に独立し、広告、CDジャケット、本の装丁、MUSIC VIDEOなど幅広く活動。最近の主な仕事に、ラフォーレ原宿、野田秀樹演出の舞台「THE BEE」の宣伝ビジュアル、きゃりーぱみゅぱみゅ出演のSPACE SHOWER TVのSTATION IDなど。

東京の街の巨大なビルボードに張り付いたモデルたちのビジュアルが話題を集めた2013 S/Sに引き続き、2013-14 A/WのMercedes-Benz Fashion Week TOKYOのキービジュアルのディレクションも担当した吉田ユニ。前シーズンのイメージを踏襲しながら、マンションの壁面を駆け上がるメルセデス・ベンツ新型 A クラスに乗ったパワフルな女性たちを独自の世界観で表現した今シーズンのビジュアルもまた、東京の街に新鮮な驚きを与えることになりそうだ。ラフォーレ原宿などの広告からショーの演出まで、ファッションの仕事も数多く手がけている注目の女性クリエイターに話を伺った。

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2013-14 A/Wのキービジュアルのコンセプトを教えて下さい。

前回手がけたビジュアルと連動しているのですが、重力を操った3次元的な絵作りで、飛び出してくるような力強いパワーを表現したいというのがまずありました。また、今回は車を入れるという新しいトライもあったのですが、車と女性モデルというシンプルなビジュアルにしてしまうと、ファッション・ウィークというよりは車の広告に見えてしまうという懸念点があったので、車の見せ方なども色々考えながら、ビルの壁面を凄い勢いで車が上っていったようなアイデアを表現することにしました。車が縦に置かれているビジュアルはあまり見たことがなかったし、今回撮影したAクラスは、女性がカッコ良く乗れるような車というイメージだったこともあり、ファッションをパワフルに楽しむ女の子たちを通して、東京のファッション・ウィークを表現できるんじゃないかなと思いました。

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2013-14 A/W キービジュアル

STAFF
CREATIVE & ART DIRECTOR:吉田 ユニ / Yuni Yoshida
PHOTOGRAPHER:田島 一成 / Kazunali Tajima (MILD)
STYLIST:伏見 京子 / Kyoko Fushimi
HAIR & MAKE-UP ARTIST:加茂 克也 / Katsuya Kamo (mod’s hair)
MODELS:Kadri (DONNA) / Destiny (ZUCCA) / Martyna (BRAVO MODELS)

“ファッションが持つパワー”というのは、前回のキービジュアルでもポイントになっていましたね。

東京のファッション・ウィークをもっともっと盛り上げたいという思いがありました。日本のファッションも面白いんだよということを、国内外の人たちに伝えられたらと思い、溢れ出るような強いパワーを表現しました。前回の場合はビルボードからモデルが飛び出てくるようなイメージで、そのパワーを表現したんです。前回から通して言えることですが、世界に出しても恥ずかしくないクオリティを目指すということと、新しいメイン会場の渋谷ヒカリエに飾られた時に、お客さんがしっかり見てくれるようなものにしたいという気持ちで作っていきました。

重力に逆らうような不思議な立体感が印象的ですが、撮影はどのように行なったのですか?

前回はビルボードのセットを床に水平に置き、その上にモデルを寝かせて俯瞰から撮影しました。今回の手法もそれと同じで、マンションの外壁のセットを床に置き、その上に車を載せ、斜俯瞰で撮影をしています。

Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2013 S/S キービジュアル

STAFF
CREATIVE & ART DIRECTOR:吉田 ユニ / Yuni Yoshida
PHOTOGRAPHER:田島 一成 / Kazunali Tajima (MILD)
STYLIST:Toshio Takeda (MILD)
HAIR & MAKE-UP ARTIST:加茂 克也 / Katsuya Kamo (mod’s hair)
MODELS:Val (BRAVO MODELS) / Noa (WIZARD MODELS) / Klaudia (BRAVO MODELS)

All dresses: et momonakia(Mercedes-Benz Presents designer)

毎回かなり緻密にセットを作り込んでいますよね。

そうですね。まず始めにラフスケッチを描いて、イメージ画像などを美術さんとやり取りして、セットを作ってもらっています。今回に関しては、車のタイヤとマンションの窓の位置関係なども大切だったので、その辺のサイズ感も考慮してもらいながら、写真で撮った時にしっかりマンションに見えるようにディテールまでしっかり作り込んでもらいました。セットを実際に作っていくと、後からCGで処理することでは見えてこない発見や広がりがあるし、仕上がりの強さや暖かさも出てくると思っています。結構大変な作業なので、自分で自分の首を締めているなと感じることも時々ありますが(笑)、それでも良いものを作りたいんです。

ビジュアルの仕上がりイメージは、最初の段階からかなり明確に見えているのですか?

ラフスケッチの段階から仕上がりのイメージは、わりと明確にできています。でも、あくまでもそれは最低ラインで、撮影現場でカメラマンさん、スタイリストさん、ヘアメイクさん、美術さんなどみんなの力が集結することで、自分の想像を超えるんです。その想像を超えた時が一番快感ですね。

2シーズンに渡り、ファッション・ウィークのビジュアルを手がけてみていかがでしたか?

ひとつのブランドの広告を作るのとは違い、より幅広い対象に向けた仕事なので、やってみてとても面白かったです。また、春夏、秋冬と両方できたので、シーズンごとにシチュエーションや色のトーンを変えたりしながら、年間を通してイメージが表現できたのも良かったと思います。

最近はファッションショーの演出の仕事なども手がけられていますよね。

ショーの演出では、間近で見ているお客さんに楽しんでもらいつつ、生き物(=ライブ)なので、一発勝負の中でどれだけのことを伝えていけるのかということを考えていくのですが、その場ですぐにお客様の空気感が伝わってくるし、グラフィックデザインの仕事とは全然違っていて、また面白いですね。

吉田さんご自身は、どんなファッションがお好きなのですか?

可愛いだけではなく、カッコ良さもあるようなものが好きですね。ファッションに限らず、甘いテイストのものやポップなものよりも、クールなものが好きです。

グラフィックデザイナーを志したのはいつ頃からなのですか?

小学生の頃からなんとなく考えていて、卒業アルバムにも将来の夢はデザイナーと書いているんですよ。当時はデザイナーがどんなものかよくわかっていなかったと思いますけど、小学校の時は工作クラブで、電ノコに凄くはまっていたり(笑)。遊ぶ時はおもちゃをまず自分で作ることから始めていました。家でおままごとをしている時も、料理を折り紙でリアルに作ったり、歯医者さんごっこでも入れ歯やカルテを自分で作ったりしていたんです。そうやって自分で手を動かして何かを作ることが好きだったので、将来は何かしらものを作る仕事をするんだろうなとは思っていました。

吉田さんの作品には、トリックアート的な要素があることも多いですが、昔からそういうものに興味があったのですか?

そうですね。他にも顕微鏡を見たりするのが大好きだったのですが、実際に存在するものだけど、普段目に見えていない部分というのに興味があるんです。図鑑も好きでよく見ていたのですが、実際にあるものから自分なりに色々探ったり、想像したりすることが楽しいんです。自分の作るものにしても、別に凄く凝ったことをして、それに気づいてほしいという感覚はなくて、見た時に「あれ?なんか変だぞ」と、何かしらのきっかけとして感じてもらいたいんです。広告などの場合、まずは見てもらわないといけないので、パッと見た時に取っ掛かりがあるものにするのはもちろんなのですが、それをもう一度じっくり見てもらうきっかけが作れればいいなと思っています。

吉田さんにとってデザインの醍醐味はどんなところにありますか?

私の知らないところで自分が作ったものを見てもらえたり、後から感想を聞けたりするのが凄くうれしい瞬間です。それによって商品が動くことももちろん大事ですが、自分が作ったものが何かのきっかけになったり、それを見て少しだけハッピーになってもらえたらいいなと思っています。デザインは、見る人がいて初めて成り立つものなので、なるべく多くの人に伝わるものや、何か感じてもらえるものを作っていきたいです。

最後に、今後やりたいことがあれば教えてください。

いまは女性をターゲットにした仕事が多いのですが、今後は性別や年齢を問わず幅広い層に伝えられるものも作っていきたいですね。海外の仕事もやっていきたいので、今後そういう機会に恵まれるといいなと思っています。そういう意味で今回のファッション・ウィークのビジュアル作りは、海外の人の目にも触れる機会が多いものだったので、これが良い機会になるとうれしいですね。

INTERVIEW by Yuki Harada

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