Interview & Report

Takeshi Kitazawa / Emiko Sato

Takeshi Kitazawa / Emiko Sato 北澤 武志 / 佐藤 絵美子

DRESSEDUNDRESSED

2006年 都内セレクトショップ「CANDY」を立ち上げ、オープニングディレクター兼バイヤーを経て独立。
2009年 DRESSEDUNDRESSEDを設立。
2011年 tokyoeyeプロジェクトのもと、パリのTRANOI SHOWROOMに出展。
2012年3月、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYOにて単独ランウェイ形式で2012年秋冬コレクションを発表。5月、Singapore Fashion Week「Blue Print」にて世界の注目デザイナーを紹介するShow Case Designerに選出される。開幕式でのShowと展示会に参加。10月、インターナショナル・ウールマーク・プライズ(IWP)に『VOGUE Italia』編集長Franca Sozzaniから推薦を受けて、スペシャルエントリーで日本代表ファイナリストとしてノミネートされる。同じく10月、bellesalle SHIBUYA GARDENにて、単独ランウェイ形式で2013年春夏コレクションを発表。11月、JFW-JC PIGSKIN SHOW designerとして選出され、PIGSKIN SHOWを発表。2013年2月、ロンドンファッションウィークで開催された "インターナショナル ウールマークプライズ" にてカプセルコレクションを発表。

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2009年のブランド設立以来、男性と女性、クラシックとパンクなど、相反する要素の結合をテーマに、モノトーンに徹したミニマルなデザインで急速に頭角を現してきたドレスドアンドレスド。その評価はすでに国外にも及び、昨年のシンガポール ファッション・ウィークでのコレクション発表に続き、先日ロンドンで開催されたインターナショナル・ウールマーク・プライズ(以下IWP)には、『VOGUE Italia』編集長Franca Sozzani氏の特別推薦により、日本代表として参加している。2013-14A/Wコレクションの発表を間近に控えた北澤武志、佐藤絵美子のデザイナーデュオに話を伺った。

ブランドを立ち上げたきっかけを教えて下さい。

北澤:24歳の時、古着屋のオーナーの方に、突然、新宿2丁目にCANDYというショップを作らないかとお話を頂きました。僕は特にファッションの学校で学んできたわけでもなく、専門知識もなかったのですが、これは僕にとって大きな人生の転機、チャンスだと思い、話を受けました。同じくファッション経験者ではなく、ファッションに対して固定概念の無い2人、佐藤、イギリス人のレイチェルに声をかけ、素人3人でCANDYをスタートしたんです。

佐藤:そこで実際にショップで働きながら多くの洋服に触れていく中で、自分たちも洋服を作りたいという気持ちが出てきて、次第にそれが強くなっていきました。

北澤:CANDYでは自分たちでリメイクした商品も販売していたのですが、実際に自分たちのクリエイションに対する反応がわかる事。その経験は大きかったですね。自分でブランドをやることに決め、ロンドンに行き、デザイナーにホームステイをさせてもらったのですが、現地で様々なクリエイターのアトリエに行く中で、彼らのクリエイションから勇気をもらいました。日本人としての意識について改めて考えられ、とても大きな体験になりました。

おふたりでブランドを始めようと思ったのはなぜですか?

佐藤:北澤も私も音楽からの影響が強いのですが、基本的に好きなものや通ってきたところが似ているんですね。私は中学までクラシックをやっていたのですが、高校になって初めてパンクを聴いてクラシックの基本に忠実なところ、譜面通りに、というところとの真逆の考え方に衝撃を受け、その精神性が素敵だなと感じたんです。ふたりとも、そういうところからファッションに興味を持ったというのが大きかったのかなと思います。

北澤:僕たちは、クラシックとパンク、双方に魅力を感じます。その相反する要素の境界線、その狭間に新しい感覚を見出せないかなと思っているところがあるんです

それが 「二元性の結合」というブランドコンセプトにもつながっているのですね。

北澤:そうですね。そこでは性別というのも大きな要素になっています。例えば、男性にとってファッションというのは、社会的な地位や職業などと大きく関わってくるものだと思うんですね。僕と同じ年の人でも、サラリーマン、弁護士、消防士など様々な仕事をしている人がいて、その立場によってファッションは変わってくるわけですが、その中でどこまでチャレンジをしていけるかという意識があるんです。

佐藤:一方で女性の立場としては、私たちが作っているようなミニマルな洋服というのは、どちらかというと男性のファションのイメージが強いですよね。私自身、メンズの服のシンプルなデザインが好きでよくこれのレディスサイズあったらいいのにと思っておりました。自立した強い女性像をイメージしながらどこまでレディスの洋服に落とし込んでいけるかというところにチャレンジしています。

北澤:現在は、パターン、特にテーラードについては男性と女性をしっかり分け、それぞれの身体にフィットする形を作り、同じデザインや素材での中で二元性の結合に挑戦しています。

先日、ロンドンで開催されたIWPに参加されていましたが、現地での反応はいかがでしたか?

佐藤:向こうでは、みんな私たちの洋服を「日本人らしい」と感じるみたいなんです。日本では逆に、海外っぽい洋服だと言われることが多いので驚いたのですが、ミニマルだけど細かいところに目が行き届いたデザインというものを「日本人らしい」と感じるそうなんです。

北澤:古来からある日本の簡素美や、ディテールに配慮した日本人らしいデザインというのは、自分たちのブランドの根本にあり、それが海外の人に伝わるというのは凄くうれしいことでした。また、今回は様々な素材メーカーさんと仕事をさせて頂き、日本のもの作りの素晴らしさや技術の高さを改めて知ることができたもの大きな収穫です。曲がりなりにも日本代表として選んで頂き、そこに信用して協力をして頂いた方々のためにも、しっかり作らないといけないという思いが強かったし、ブランドとしての責任を意識するようになりました。東京でのショーでも、IWPで発表したピースを新しい形でお披露目できたらいいなと考えています。

いよいよ来週、ランウェイショーでの発表が迫った、2013-14 A/Wコレクションの構想を聞かせて頂けますか?

北澤:今回は、83年に公開されたデヴィッド・ボウイとカトリーヌ・ドヌーヴが主演の映画「ハンガー」がもとになっています。吸血鬼の物語なのですが、ホラーというよりはエレガントでモダンな映画で、主人公の人間と不老不死である吸血鬼の狭間にいる人物像からふくらませました。全体を包み込む雰囲気はクラシックとポストパンクの要素を掛け合わせ、現代に落とし込んだコレクションです。

毎シーズンのコレクションテーマはどのように決めているのですか?

北澤:映画やアート、建築などにインスパイアされることが多いのですが、まず、はじめに考えるのは、主人公の人間像です。その洋服を着る人の人間性をまず考えて、そこから洋服のアイデアや素材を決めていきます。毎回人物像は変わるのですが、男女の狭間など、やはり二面性が重要なキーワードになっていると思います。

人間の内面性から洋服をデザインしていくことが多いのですね。

北澤:あまり強く意識したことはないですが、そういうところがあるのかもしれないですね。洋服はその人を反映するものだと思います。僕らが黒に対しての気持ちも自分たち、日本人の持つ、髪や目の色への探求や、日本人の精神性の追求という意識もあるんです。

佐藤:黒はエレガントで魅惑的で、もともと好きな色ということももちろんあります。また、黒には凄く細かい差異があって、一見同じに見えるものでも、ほんの少しの違いで表情が大きく変わってくるんです。

北澤:ごまかしのきかない色なので、必然的にディテール、素材にこだわらないと成り立たない。だから、細部にこだわった自分たちのデザインとは相性が良いし、黒だからこそ、生地の素材感や厚み、全てにおいてどこまでもこだわっていける。その中で黒の奥行きを表現できたらいいなと思っています。

ショーではイメージムービーも流していましたが、プレゼンテーションの部分で意識していることはありますか?

佐藤:私たちは何十年もやっているブランドではないので、まだ知らない人たちに対して、どれだけブランドのイメージを伝えられるかということを意識しています。そのためには、映像や音楽などもとても大切になってきます。例えばショーの音楽は、昔からの仲間にやってもらっているのですが、毎回コレクションのイメージをすべて伝えてディスカッションをした上で、曲を作ってもらっています。

北澤:自分たちの頭の中にあるイメージを映像や音楽などで伝えながら、それをこういう形でリアルクローズに落とし込んでいるんだということを伝えられるとうれしいですね。もともと僕たちは音楽や映画をはじめ色々なものに影響を受けてきていて、そこが自分たちの強みでもあるし、そういう要素が洋服や自分たちのブランドを好きになってもらうきっかけになったらいいなと思っています。

2013年春夏コレクションのランウェイショーで放映したムービー

今後の展望を聞かせてください。

北澤:日本でしっかりとした土台を作り、海外でもしっかり発表できるようになりたいと考えています。洋服を通して、様々な国の人と対話できることはとても楽しいですし、海外の様々な人たちと仕事をしていきたいですね。

佐藤:他にも色々な夢があって、いつかこういうことをやりたいねということは常にふたりで話しています。もともと私たちは、4年前にたった5型のTシャツだけのコレクションからスタートしていて、そこから少しずつ大きくなってきたブランドです。だからこそ、まずは自分たちのブランドを着実に成長させることが大切かなと思っています。

北澤:1年前にファッション・ウィークでコレクションを発表し、コレクションを見てくださった海外の方からオファーを頂き、シンガポールやロンドンでの発表につながりました。今は18日に行うSHOWを最高の形で見て頂けるよう、最善を尽くしたいです。

2013年春夏コレクション

初のランウェイショーとなった2012-13年秋冬コレクション (Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2012-13 A/Wにて)

INTERVIEW by Yuki Harada

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