Ksenia Mamontova クセーニャ・マーモントバ
Leform/バイヤー
「Leform」はBrownwood Co, Ltd.が運営する、モスクワの高感度セレクトショップ。ロシアに3店舗、オンラインで1店舗展開している。メンズ・レディスアパレル、インテリアの中~高価格帯の幅広い商材を扱い、30歳以上の男女が主な顧客。
保守的だったロシアのファッションマーケットにおいて、「アントワープ6」をはじめ、他にはないエクスクルーシブなファッションを紹介するセレクトショップとして、1997年にモスクワにオープンした「LeForm」。 今ではモスクワ随一のセレクトショップとしての地位を築いており、コムデギャルソンやヨウジヤマモト、アキラナカ、スズキタカユキ、ミュベールなど、全体 の3~4割程度を日本ブランドが占めていることでも知られている。Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2014 S/SにJETROの招聘によって来日した同ショップのバイヤー、クセーニャ・マーモントバ氏に、日本のファッションの印象やロシアの現状などについて伺った。
来日は今回で何回目になりますか。
3月に開催された前回のファッション・ウィークが初来日だったので、今回が2回目になります。私たちは、新しいデザイナーが作るエクスクルーシブなもの、ワクワクするものを常に探しているのですが、それが日本にはあるということをすでに知っています。ですから、今回JETROさんの招聘で来日の機会を頂けたことは、とても嬉しく感じています。
日本ではどのようなところを見て回っているのですか。
ショールームに行くことがほとんどですが、いくつか興味のあるショップなども回っています。また、今回は初めてランウェイショーを見ることができたのですが、これまでにない体験で非常に面白かったですね。ただ、ショーで見ることができるのは、あくまでもモデルが着るための洋服。やはり実際にファブリックに触れてみないと判断することはできないので、ランウェイとショールームは別のものだと考えています。
クセーニャさんがバイヤーを務める「Leform」はどんなショップなのですか。
「Leform」がオープンする前から、モスクワにも世界的に有名なブランドの洋服はあったのですが、よく探さなければ見つからないようなブランドを取り入れたお店はありませんでした。その中で私たちは、アン・ドゥムルメステールやドリス・ヴァン・ノッテンなど「アントワープ6」と呼ばれるベルギーのブランドを集めてスタートしたのですが、当初は閉鎖的なモスクワのマーケットに新しいものを導入することは簡単ではありませんでした。そのため、当初はアンダーグラウンドストアという形でスタートしたのですが、現在はより多くの人たちに受け入れられるようになっているので、アンダーグランドという意識ではなく、新しい境地を切り開いていくような感覚を持っています。私たちの信念は、他にはないエクスクルーシブなものを提供すること、高い品質や着心地の良さを通して、人生のためにあると言えるような洋服を提供するということです。
Leform http://www.leform.ru/
現在では、「Leform」でかなりの割合を占めている日本のブランドにはどんな印象を持っていますか。
ショップがオープンして1年ほど経ってから、コム デ ギャルソンなどを扱い始めたのですが、日本のブランドには他にない品質や新しいフォルムがあり、非常に強く美しいデザインだと考えています。当初は日本の 洋服をモスクワの人たちに理解してもらうことがなかなか難しく、アーティストや建築家など他とは違うものを好んで着る一部の人たちだけに支持されていたの ですが、最近はより多くの人たちに受け入れられるようになっています。
コムデギャルソンやヨウジヤマモトなど世界的なブランドだけではなく、新進ブランドも多く取り扱っていますが、どのようにして日本のデザイナーの情報を得ているのですか。
パリをはじめヨーロッパの人たちから得る情報が多いですね。オーナーがもともと洋服が好きで、ショップをオープンする前から、ベルギーで変わったデザインの靴を見つけては、自分でデザイナーを突き止めていくような人だったんです。そのようにして友人関係が徐々に広がっていき、日本のデザイナーについて教えてもらう機会も増えていきました。やはりこうした情報を得るためには、世界中から色々な人たちが集まってくるパリに行くのがベストだと思っています。
日本のブランド以外ではどんなブランドが人気ですか。
ファッションコンシャスな人たちの間で好まれているブランドをひとつ挙げるとすれば、ドリス・ヴァン・ノッテンですね。シーズンごとに常に新しい要素があり、ファブリックもカラーも豊富で、インスピレーションを呼び起こしてくれるデザインだと思います。また、幅広い年齢、サイズ、性別をカバーしてくれることも大きな魅力です。そういう点で言うと、日本のブランドにもサイズの多様性がもう少しほしいところはあります。また、日本の洋服にはガーリーなデザインが多いですが、エレガントで大人でも着られるようなシェイプのものがもう少し増えたらいいなと思います。
実際に来日してみて、パリでは得られないような新しい発見などはありましたか。
そうですね。3月に来た時には、アキラナカやスズキタカユキなど、新しい出合いがありました。また、サカイやミュベール、ルグランブルー、イフシックスワズナインなども素晴らしいと思います。他にも日本に来ると、若くてまだパリには来られないようなデザイナーたちの洋服も見ることができるからいいですね。基本的に「Leform」では25歳以上をターゲットとして考えていますが、最近はロシアの若い人たちもファッショナブルになってきています。そういう人たちに向けたものを見つける上でも、現地で直接若いデザイナーたちの洋服を見ることは大事だと思っています。
日本のストリートファッションについてはどんな印象をお持ちですか。
日本のファッションの強みはストリートにあると思います。日本では象徴的なストリートファッションをあちこちで見ることができますし、非常にスタイリッシュで色にあふれ、強さを感じます。若い人たちが怖気づかずにどんどん自分を表現していることがカッコ良いですね。一方でロシアには保守的なところがあるのですが、日本の若い人たちのファッションは私たちにとって非常に良いお手本になると思いますし、ショップを通してもっと啓蒙していきたいと考えています。
ロシアではどんなスタイルが人気ですか。
フェミニンなドレスなどが多いですね。ロシアの女性たちは、男性たちが求めるようなセクシーでリッチなファッションを好んでいるところがあると思います。ただ、それらは私たちのショップのコンセプトとは大きく異なるものです。
ロシアのファッション産業の現状を教えて下さい。
まだまだこれからだと思います。良い製品も素材もあまりないですし、良いものがほしいと思ったらパリやミラノの展示会に行く必要があります。ただ、Alexander TerekhovやNina Donisなど興味深いデザイナーも少しずつ出てきています。特にNina Donisは、日本のマーケットにもフィットすると思います。彼らのように育ちつつある作り手が排除されてしまわないように、私たちのショップでも少しずつ取り上げながら支援をしていければと考えています。やはり自分たちの国が好きですし、自国のデザイナーやファッションビジネスがもっと成長してほしいと切に願っています。