パスカリン・スメッツ Pascaline Smets
MBFWT 2016 A/W 海外ゲストインタビュー vol.2
「Smets Premium Stores」バイヤー/クリエイティブ・ディレクター
「Smets Premium Stores」は1986年、ベルギー出身のカリーヌ・スメッツがルクセンブルクにオープンさせた、世界のファッション、デザイン、アートの3分野を軸に、商品を展開しているショップ。ブリュッセル含め25の店舗と、ECサイトも運営している。現在は、夫のティエリーと娘のパスカリンも経営に携わっている。
【主な取扱ブランド】
ウィメンズ:Alexander Mc Queen, Givenchy, Kenzo, Isabel Marant, Mary katrantzou, Stella McCartney, Christopher Kane, Tom Ford, Christian Louboutin, Gianvito Rossi, Jimmy Choo
メンズ:Balenciaga, Dsquared, Balmain, Pierre Hardy, Saint Laurent
インテリア:Vitra, Moroso, Hay, Cappellini, Artemide, Ligne Roset, MDF Italia, Carl Hansen and Foscarini.
ビューティ:In addition, Smets has joined forces with Cosmeticary to create a specialist beauty corner. Shoppers will find brands including Bobbi Brown, By Terry, Bumble and Bumble, Khiel’s, Laura Mercier, Radical Skincare, Essie and Dermologica.
WebSite http://www.smets.lu/
Facebook https://www.facebook.com/SMETS.LU
Twitter https://twitter.com/SMETS_STORE
Instagram https://www.instagram.com/smets_store/
世界のファッション、デザイン、アートの3分野を軸に、商品を展開しているルクセンブルクを拠点とするショップ「Smets Premium Stores」(以下、Smets)。オーナーで創業者のカリーヌ・スメッツの娘で、Smetsのバイヤー兼クリエイティブ・ディレクターを務めるパスカリン・スメッツが、Mercedes-Benz Fashion Week TOKYO 2016 A/Wの会期に合わせて来日した。
ファッション業界で世界的に活躍する人物として「BoF 500」(The Business of Fashion)にも名を連ねるパスカリンさんに、Smetsについて、また初めて訪れた日本の印象や日本ブランド、ファッション・ウィークについて聞いた。
初来日とのことですが、感想をお聞かせいただけますでしょうか。
まず、今回、日本を訪れた理由をお話します。日本ブランドのコレクションはパリの展示会で触れたり、オーダーすることはできますが、そのコレクションがどういう背景や環境で制作されているかを知りたいと思ったからです。バイヤーがデザイナーの拠点に足を運ぶことは重要だと考えています。
もともと私は、日本の文化や建築、アートが好きなことや、日本人のフィロソフィーや人を迎え入れるおもてなし、茶道などのお作法にも興味があったことも、来日を決心した理由です。人物で言うと、安藤忠雄や村上隆、杉本博司を尊敬しています。日本には、今ヨーロッパで失われかけているような美意識が残っている気がしています。また、ファッションにおいてもパワーを感じていますし、ファッションにとって重要な国と認識しています。
Smets Premium Stores ウェブサイト
www.smets.lu/
Smetsについて、ご紹介いただけますか。
Smetsは、アート、フード、ファッションなどジャンルに関係なく、クリエイションの高いものを集積し、それによって、個性が発揮されるようなショップづくりをしています。ターゲットは、私たちのフィロソフィーに共感してくれる世界中の人々です。
買い付け先は、パリを中心に、ロンドンにもよく行きます。ロンドンは特に、アップカミングなデザイナーの発掘やマーケットリサーチとしても欠かせない都市です。
ECにも注力されていますが、最近の顧客の変化など感じられますか。
ECでの顧客は、中国とアメリカが多いです。特に中国はVIPのお客さまが多く、ここ数年で顕著に増えました。 最近は、ECでもパーソナルな対応が求められてきているように感じます。デジタルは今後ますます進化していくと思いますが、一方で、デジタルの中にもヒューマニティが大切で、顔を知っている信頼できる人から買う、つまり誰から買うかということを重視する、ある意味、実店舗での接客のようなことが求められているように思います。
私のバイイングでもそれと近いところがあります。各国のショールームからのニュースレターが1日600件ほど私のもとに届きますが、数が多いためすべてを開くことはできません。でも、私の好きなテイストを把握している知人から紹介されたブランドの情報は必ずチェックし、実際にその中から買い付けることが多いです。
MBFWT 2016 A/Wで気になるブランドはありましたか。
「東京ニューエイジ」は印象的でした。すぐにオーダーということではないですが、今後の成長が楽しみですね。合同ショーだったので、一ブランドあたりでは短いプレゼンテーションでしたが、何か生まれてきそうな期待感が湧いてくるようなショーだったと思います。
日本ブランドの魅力、逆にウィークポイントはどこにあると思いますか。
クオリティの高さ、ものづくりに対する誠実さから生まれる構築性の高さ、シルエットの美しさなどは、日本人デザイナー独特で大変魅力的だと思います。ただ、アピール力は少し足りないように感じます。
特に海外など、新しいマーケットに進出する際は、ブランドとしての売りとなるものをできるだけ絞って、際立たせて、分かりやすくメッセージを発信することが重要です。メッセージをシンプルにすることで、メッセージ性が強まります。例えば、布帛もニットも扱っているブランドでも、どちらかと言えばニットを得意としているなら、思い切ってニットに特化したビジュアルやコンセプトを掲げても良いかもしれません。全コレクションを出そうとしたら、結局、伝えたいことがぼやけてしまい、バイヤーの記憶には残りません。
ランウェイショーなどのプレゼンテーションでも同様のことが言えます。インターナショナルなブランドになるためには、「このブランドはニット」と印象づけるくらい、アイコニックなアイテムやアイデンティティがないと売れないと思います。ショーであれも見せたい、これも見せたいと発表してしまうと、情報量が多くなってしまい、結局、記憶に残るルックは1、2点だけというような状態になってしまいます。
そういった“見せ方”がうまいと思われるブランドはありますか。
ロンドンのファッション・ウィークで発表している「SIMONE ROCHA(シモーネロシャ)」のショーでは、15型ほどのフェミニンなドレスを、素材や丈違いのバリエーションで発表していましたが、「SIMONE ROCHA」はフェミニンなドレスを得意にしているブランドということは一目瞭然で伝わってきました。ブランドからのメッセージが私たちバイヤーに明確に伝わらないと、私の店のお客さまにも伝えることができません。デザインが美しく、ものづくりもしっかりしていると感じて、買い付け候補になったとしても、メッセージ性が弱いという点で最終的に見送ってしまう可能性があるくらい、ブランドにとってその点は重要だと思います。
パスカリンさんの インスタグラム
www.instagram.com/pascalinesmets/?hl=ja
海外バイヤーが東京のファッション・ウィークに足を運びやすくするには、どのようにすれば良いと思いますか。
ショーの合間に展示会を回るツアーなどを実施していただければ、効率的に動くことができて、限られた滞在時間を有効に使えると思います。特に外国人にとって、東京を公共の交通手段で移動することは難しいので、ショー会場や展示会会場、アトリエなどを巡回してくれる、バイヤー向けの車両を運行していただけると大変ありがたいです。
あと、デザイナーお勧めの美術館やギャラリーなどの情報も欲しいですね。日本のデザイナーのクリエイションの源を知るきっかけになると思うので。
今回の来日で、印象的だったショップはありますか。
GR8(ラフォーレ原宿)、the POOL aoyama(2016年3月21日閉店)、CITY SHOPなどを回りましたが、どこもすごく面白かったです。
例えば、ストアパーティを海外バイヤーとデザイナーのハブにするのも良いかもしれませんね。実際に商品がどのように売られているかを見ることができますし、何よりデザイナーに出会えるチャンスなので、バイヤーとしてもぜひ足を運びたくなります。少しお酒が入った方が話しやすくもなりますしね(笑)。