Interview & Report

下野 宏明 Hiroaki Shitano

下野 宏明 Hiroaki Shitano WHIZ LIMITED(ウィズ リミテッド)

TOKYO FASHION AWARD 2016 受賞デザイナー

1976 年東京出身 LUMP co.,ltd. 代表。WHIZ LIMITED 以外にもFinest Classics(最高の定番)をコンセプトとしたA.W.A も手掛ける。過去にはアウトドアブランドMarmot とのコラボレーションラインMarmot by WHIZ のデザイン、スノーボードウェアブランドのBONFIRE とのコラボレーションライン BONFIRE by Felicity のデザイナーを務める。

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裏原宿ブーム真っ只中の2000年にブランドをスタートし、設立15周年となった昨年3月には過去のコレクションをメインとしたショーを、東京のファッション・ウィークで開催したWHIZ LIMITED(ウィズ リミテッド)。同年秋には、TOKYO FASHION AWARD 2016を受賞し、ブランドとしては初の海外展示となるパリでのショールームに2シーズンにわたって参加するなど、節目を迎えてもなお、飽くなき前進を続けるブランドのデザイナー・下野宏明に、現在の心境を聞いた。

3月に東京で開催されたショーでは、ストリート出身のさまざまな世代のモデルを起用して話題を集めましたが、この演出にはどんな意図がありましたか。

昨年3月にブランド15周年を記念したショーを行ったのですが、本当はこの後しばらくショーはしないつもりでした。今回はTOKYO FASHION AWARD受賞デザイナーとしてショーをすることになりましたが、色々考えた末に、プロのモデルは使わずに、原宿のストリートというブランドの背景を伝えるショーにすることにしました。実は、15周年の時にもこうしたショーをイメージしていたのですが、当時はまだ自分の周りにショーに出られるような個性を持つ子が少なかったんです。そこから1年が経ち、ミュージシャンをはじめ、さまざまな分野で活躍し始めた若い人たちが身近に出てきて、このようなショーを実現することができました。

2012年春夏シーズンから東京でのショー発表をしばらく続けられていましたが、ブランドにとってショーとはどんなものですか。

4シーズン継続してみて分かったのは、自分たちの場合はショーでの発表が売上にはダイレクトにつながらないということでした。一方で、自分たちの洋服をこういう形で表現することで、人の心に響くものがあることも分かりました。ただ、ショーをコンスタントに続けることは大変なので、アニバーサリーなど本当に大事な時にだけ、特別なものとしてウィズ リミテッドのお客さまに見せられればいいと考えるようになりました。

パリで行われたshowroom.tokyoの様子
上2枚:2016年1月開催/下2枚:2016年6月開催

ショーをすることは、クリエーションに何か影響を与えましたか。

むしろ、できるだけ影響されないように意識していました。ついついショーを面白くするための洋服をつくりたくなってしまうのですが、そのほとんどが売れない服になってしまいます。例えば、15周年のショーでは過去のアーカイブを使ったのですが、普通であればショーで昔のコレクションを発表しても意味がないと思われますよね。僕たちは、ファンの人たちやディーラーさんに向けてショーをしているところがあるので、他のブランドとは考え方がだいぶ違うのかもしれません。

昨年ブランド設立15周年を迎えましたが、今後の方向性として何か考えていることはありますか。

今後の方向性というのは、実はこれまでもほとんど考えたことがありません。それこそ半年先も見えたことがないくらい、常に行き当たりばったりのところがあるんです。15周年を迎えて少しは落ち着くのかなと思っていましたが、TOKYO FASHION AWARDを受賞してパリのショールームに参加させていただいたり、色々なチャンスを与えてもらっているので本当に飽きないし、むしろどんどん忙しくなっていて(笑)。1年後に自分が何を考えているのかも想像がつかないのですが、少なくとも今とは違う考えを持っていたらと思っています。

15年間変わらずにクリエーションを続けられる原動力は何ですか。

自分は純粋にファッションが好きで、カッコ良い洋服を着たいという欲望は今も変わらずにありますし、顔が見えているお客さんが全国にいるので、彼らに恥ずかしい思いをさせられないという気持ちもあります。つい先日、ブランドの設立記念日でしたが、毎年このお店(LUMP TOKYO)では、一切告知をせずにスペシャルアイテムを出しています。うちのファンの人たちはそれを知っているから、平日でも有給を取り、地方からでもお店に足を運び、並んで待っていてくれるんです。自分たちもお客さんもお互いにプライドを持ちながら、良い信頼関係が築けていて、それが励みになっています。

ブランド立ち上げ時から現在に至るまでに、お客さんが求めるものに何か変化はありますか。

そんなに大きくは変わらないと思いますが、かつてのように雑誌を日常的に見なくなるなど、環境面の変化はあるのかもしれません。それとも関係があるかもしれませんが、最近は「裏原系」などの括られ方があまりされなくなってきていますよね。百貨店などは別だと思いますが、少なくともうちに来るお客さんはこのお店のためだけに足を運んでいる人が多いように感じるし、良くも悪くも細分化が進んでいるのかなと。そうした流れの中で、最近はInstagramなどのSNS上にコミュニティがつくられ、全国のファンがブランドや商品の情報を共有していく動きがあり、とても今っぽいと感じます。

今後、ファッション以外の分野でチャレンジしてみたいことはありますか。

地方のショップの内装などを自分で手がけることもあるのですが、基本的につくることは全般的に好きですね。そもそも自分が15年間も洋服のデザインをするとは考えていなかったのですが、いつ辞めても悔いが残らないようやってきたつもりです。40歳になって大人になったからか(笑)、誰かの下で働いてみたいと思うこともあります。例えば、月曜はパン屋、火曜はコーヒー屋、水曜は洋服屋といった感じで、毎日誰かの下で働くようなスタイルも面白そうだなと。そういうことをしながら、自分の周辺の地域を盛り上げるようなことができたらと思っています。

 

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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