Interview & Report

リース・クリスプ

リース・クリスプ Reece Crisp

AmazonFWT 2019 A/W 海外ゲストインタビュー vol.1

LN-CC HEAD OF BUYING, CREATIVE & STYLING

ロンドンに実店舗を持ち、オンラインサイトで世界中に顧客を持つ、ハイエンドセレクトショップLN-CC。ビッグメゾンから新進気鋭の若手ブランドまで独自のヴィジョンに基づいてキュレーションし、常にその動向が注目されるショップのヘッドバイヤー、リース・クリスプ氏がAmazon Fashion Week TOKYO 2019 A/Wの会期に合わせて来日した。
グローバルな視点で新しい才能を発掘し、革新的なファッションのあり方を提案し続けるリース氏に、日本ブランドやファッション・ウィーク、さらにLN-CCについて聞いた。

今回はJETROの招聘で来日されましたが、来日は2回目だそうですね。前回と比べて、東京の街や人々のファッションなどで、何か変化は感じられましたか?

まず、今回JETROに来日の機会をいただき、大変感謝しています。
前回の来日は2017年で、当時Farfetchに在籍していて「IFF Magic Japan」の視察のために東京を訪れました。2年前と比べ、トレンド的な変化は感じましたが、私がもともと東京に対して持っていたUNDERCOVERやCOMMEdesGARCONS、sacaiに代表される “ストリートの先駆者” というイメージは大きくは変わりませんでした。私は、東京にいても、ロンドンにいても、いつもインスタグラムをチェックして街や人々の動向をウオッチしています。都市によって、リーチしたい情報が違うためフィルターのかけ方は異なりますが、東京はインスピレーションを得られる場所としてチェックしています。

今回の来日で足を運んだショップやスポットを教えてください。

多くのショップに足を運んだのですべて挙げきれませんが、特に気に入ったショップだけ挙げると、吾亦紅(ワレモコウ)、GARDEN、GR8(グレイト)です。訪れたどのショップも面白かったのですが、どこもドメスティックブランドとインターナショナルブランドのバランスが絶妙で、セレクトの視点がとても良いと感じました。アクセサリーの使い方が印象に残りましたし、機能性があるプロダクトをプレゼンテーションするのが上手いと感じました。個人的な買い物ももちろんしましたよ(笑)。ナナミカでショルダーバッグと、BONUMでヴィンテージリーバイスを購入しました。

初めてご覧になった東京のファッション・ウィークは、他都市のファッション・ウィークと比較していかがでしょうか?

東京のファッション・ウィークは、ドメスティックブランドやアップカミングな若手ブランドが中心で、新しい才能を見出す場所だと感じました。ビッグブランドが中心で、世界各国のブランドが目指しているパリよりも、ロンドンファッション・ウィークに近いですね。

リース・クリスプ

海外ゲストの方々。一番右がリースさん

今回はショーをご覧になっただけでなく、アトリエ訪問もされましたが、気になるブランドはありましたか?

LN-CCでも2019春夏シーズンから取り扱いをスタートしたChildren of the discordance(チルドレン オブ ザ ディスコーダンス)は、ブランドの美意識やヴィジョンを感じられてとても印象に残っています。また、ANEI(アーネイ)は、新しいブランドとして可能性を感じ、今後も注目していきたいと思っています。その他には、ANREALAGE(アンリアレイジ)KUON(クオン) 、SYU.HOMME/FEMM(シュウ オム フェム)も良かったですね。

LN-CCについても教えてください。ショップはロンドンにあり、オンラインストアを通して世界中にファンをお持ちですね。

LN-CCはストーリーや体験を重視していて、常に先進的でイマジネーションを与えられる場所であることを目指しています。取扱商品は “DESIGNER” “CONTEMPORARY” “CORE” “CONCIOUS” の4つのゾーンに分けて、ブランドやアイテムのキュレーションを行っています。
“DESIGNER” は、GUCCIやPRADA、Thom Browneなどのビッグメゾンにより構成する普遍的なゾーンです。 “CONTEMPORARY” は、Off-WhiteやMARTINE ROSEなどの現代的な美意識を持つ成長株のブランドで構成し、店舗として最もフォーカスしているゾーンです。スニーカーもこの “CONTEMPORARY” に入ります。そして “CORE” は、LN-CCのDNAを伝えるゾーン、 “CONCIOUS” はJW AndersonやAcne Studiosのようなクリーンでミニマルな世界観のゾーンです。先ほどお話したChildren of the discordanceや私自身が大好きなsulvam(サルバム)など日本ブランドは “CONCIOUS” で展開しています。
ロンドンのショップもオンラインストアも同じコンセプトで運営しており、展開しているブランド、商品に違いはありません。本や音楽も取り扱っていて、それぞれにセレクトをお願いしているパートナーがいます。音楽は特に重要な要素で、店舗には小さなクラブもありますよ!

 

とても魅力的な店舗ですよね。ここ数年、ビジネスの状況はいかがでしょうか?

売上は好調に推移していて、昨年度は前年比100%増を記録しました。実店舗とオンラインストアの販売割合は、おおよそ実店舗15%、オンラインストア85%といったところです。エリア別の売上シェアは、欧州、アジア、アメリカでそれぞれ30%程度ずつ、欧州はロンドン、パリ、ベルリン、アジアは東京とソウル、アメリカはニューヨークとロサンゼルスのお客さまが中心ですね。エリアごとに人気のある商品は違いますが、販売エリアとバイイングエリアに相関はありません。

LN-CCで取り扱いのある日本ブランドはどのような状況ですか?また、日本ブランドの魅力的な点などあれば教えてください。

LN-CCでは常に120~130ブランドを取り扱っていて、毎シーズン6~10ブランドずつ入れ替えています。現在取り扱っている日本ブランドは、sulvam、Yohji Yamamoto、PORTER、CLAMPなど約10ブランドで、メンズが多いですが、HYKE(ハイク)beautiful people(ビューティフルピープル)のウィメンズラインにも関心を寄せているところです。
日本のブランドは、自分たちのやり方を守り貫くビッグメゾンとは違って、良い意味で境界線が曖昧で、新しいことに対して挑戦的であったり、枠からはみ出すことを厭わない印象があります。AURALEE(オーラリー)のようにクリーンで昼間のようなイメージのブランドがある反面、FACETASM(ファセッタズム)のように、ダークで夜のようなイメージのブランドが共存していて、物事の両面性を備えているのが日本のファッションシーンではないかと思います。それぞれのブランドがDNAを持ち、ユニークな視点から幅広い表現方法で提案している印象です。また、日本のブランドはプロダクトの質が高く、クラフトマンシップを強く感じます。

逆に、日本ブランドの課題は何でしょうか?

質やクラフトマンシップとの兼ね合い、バランスになりますが、プロダクトへのこだわりが強いゆえに高価格であることが海外市場において一つの壁になってしまうことも事実です。また、欧州で求められるデリバリー時期に納品できるかという問題も大きいですね。あとは海外に良いパートナー、代理店を見つけることも重要です。

 

今後も日本ブランドに注目していただけたら嬉しいです。

私はLN-CCで、メンズ、ウィメンズの予算管理含めて全てのバイイングを統括する立場です。こういう立場になるとマネジメントに集中しなければならないことが多いのですが、私はブランドによっては今でも直接バイイングしていますし、いつまでもプロダクトに近い立場にいたいと思っています。東京には注目しているブランドがいくつかありますし、sulvamの(藤田)哲平をはじめとして仲の良い友人がたくさんいるので、またぜひ来日したいと思っています!

Interview by Tomoko Kawasaki
Interpretation by Aiko Osaki

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