Interview & Report

Takuya Saito

Takuya Saito 斉藤 卓也

スタートトゥデイ バイヤー

2004年、ファッション通販サイトZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイに入社。商品管理を経て、2005年にバイヤーに就任。オリジナルセレクトショップEPROZE、ROWGAGEなどのバイヤーを経て、2010年に国内外のデザイナーズブランドやラグジュアリーブランドを集積したハイエンドECサイトZOZOVILLAの立ち上げに従事する。2012年7月にJFWコミッティに就任し、次世代のファッションを担うために新たな活動を始める。

2004年の立ち上げ以来、着実に売上を伸ばし、国内最大級のアパレルECサイトとしての地位を不動のものにしているZOZOTOWN(運営:株式会社スタートトゥデイ)。カジュアルからハイエンドまで幅広いレンジのブランドやショップが出店する一方で、エッジの効いたオリジナルのバイイングも同サイトの大きな強みになっている。そんなZOZOTOWN独自の個性を象徴する存在が、今年度からJFWコミッティにも名を連ねるバイヤー、斉藤卓也氏だ。これまでにZOZOTOWN内のさまざまな店舗のバイイングから企画までを手がけてきた彼に、現職に就くまでの経緯やバイヤーとしての視点、ファッション・ウィークのことなど、お話を伺った。

斉藤さんが現在の仕事をするようになるまでの経緯を教えてください。

まず第一に、洋服が好きということがあったのですが、大学では工学部の応用物理学科というところでレーザーの勉強をしていたんです(笑)。周囲にもあまりファッションが好きな人はいなかったですし、僕自身体育会系だったので専門的な知識は一切なかったのですが、もともと古着が大好きで、僕が学生の頃はちょうど日本のストリートファッションが台頭してきた時期だったこともあり、将来はファッションの仕事をしたいと思っていました。しばらくフリーターをしながら就職先を探していたら、たまたまスタートトゥデイがスタッフを募集していて、この世界に入ることができました。

当時はバイヤー職として入社したのですか?

ちょうど僕が入った年の暮れにZOZOTOWNができたのですが、1年目は商品管理をやっていました。そこで物流関連のことや、商品の撮影、採寸などをひと通り経験させてもらい、2年目に入った頃に会社が事業を拡大し、取扱いブランドも増やすというタイミングでバイヤーをやらないかと声をかけられました。そこからは従来の商品管理の仕事を続けながら、バイヤーとしても動くようになり、その後、部署が分かれてからはバイヤーに専念するようになりました。当時は、バイヤーの数が今より少なかったので、ひとりで2、3ショップを担当していましたね。

ZOZOTOWN

ファッション通販サイトZOZOTOWN

斉藤さんがバイイングをする際に大切にしていることを教えて下さい。

お店としてはMDなどを考えることも必要ですが、個人的には売れ筋のものばかりを選ぶことはあまりしたくないという思いがあります。ECサイトの性質上、まずは写真で惹きつけないといけないので、やはりアイキャッチな商品が目を引きやすいのですが、それよりも重視しているのは、ブランドとしての提案がしっかりできているかということ。今はブランドも凄く多いですし、デザインや価格に差がなくなってきています。だからこそ、ブランドらしい提案ができているかが大切ですし、僕自身もバイヤーとしてしっかり提案をしていきたいなと考えています。例えば僕の場合、まず自分自身でそのスタイルをしてみるんですね。僕が冬でもショートパンツを履いているのは、そういう理由もあるんです。女性は冬でもファッションとしてミニスカートを履きますが、男性にももっとファッションに貪欲になって欲しいという思いがあるので、それならまずは自分からやらないとな、と。

入社から現在に至るまで業務内容に変化はありますか?

バイヤーとして大きな変化はありませんが、これまでにストリートからモード、メンズ、レディス、インポートとあらゆるジャンルの仕事を経験させてもらい、その中で商品を買い付けるだけではなく、より多くの人たちを巻き込んだ企画をやりたくなって色々と手を出してきました。その結果、社内ではちょっと特殊な立ち位置になっています(笑)。バイイングも企画も両方好きですし、今回のJFWコミッティの仕事なども含め、何かを変えていけるようなことを積極的に社内外でやっていきたいなと思っています。

変えたいということは、現在のファッションや業界に不満があるということですか?

良くも悪くもファッション業界には色んな障壁があると思うんですね。それぞれの色んな考えがあるので、なかなか簡単に一丸にはなれない状況があると思うのですが、もっとファッションを盛り上げたいという気持ちはみんな根本にあるはずなので、それをキーワードにして一緒にやっていけないかなと。自分たちだけで盛り上がるということもできなくはないと思いますが、やっぱりファッションは着ることで完成するものだから、リアルショップの重要性もとても大きいと思いますし、そういう部分も含めてみんなで考えていかないと、本当に日本が発信していきたいものが、数年後にはダメになってしまうんじゃないかと感じています。

日本のファッション・ウィークについてはどんなことを感じていますか?

例えば、パリやニューヨークなどのファッション・ウィークに行くと、街全体がそういう雰囲気になっているんですね。でも、日本の場合はごく一部の人たちにしか浸透していない。もともとファッション・ウィークは業界向けのものと言えるのかもしれないですが、もう少し直感的に楽しめる場があってもいいと思うし、エンドユーザーとの距離も近づけた方がいいのかなと。あと、ファッション・ウィーク自体が場所を提供するための器としての印象が強く、少し受け身な印象がありました。もうちょっと踏み込んで、主催者自ら盛り上げていくことも大切ですし、イベントとしての密度をより高めていくことで、海外からの人も集められるといいなと感じています。

斉藤さんがメインのフィールドとしてきたインターネットは、そうした問題点を解決する大きなツールになり得ますよね。

そうですね。ZOZOTOWNの場合は、お客さまに対してという面が強いと思いますが、日本のファッションの魅力をプレゼンテーションしていくことはどんどんやっていきたいと考えています。単に会社の売上を上げるということだけに拘らず、ファッション・ウィークというものをもっと認知してもらうために、会期中に一般のお客さんが参加できるイベントを紹介するなどして、リアルな現場の高揚感を感じてもらえたらなと。まずはそういう場に誘導することが、自分たちにできる最初のステップだと思い、ちょうど今、企画を立案している段階です。

斉藤さんから見て、日本のブランドの強みというのはどんなところにあると感じていますか?

デザインやクリエイティビティという面では日本のブランドは世界で最も層が厚いように感じています。ただ、ブランド側の体力の問題や、欧米人との体型の違いなどがあるので、まだ海外に目が向いていないブランドが多いですが、商品としては十分勝負できると思うので、もっと海外のバイヤーなどに知ってもらう機会さえできれば、状況は変わってくるかなと。デザイナーは服作りのプロですが、それをプレゼンテーションするのを苦手とされる人も少なくありません。そういう部分をサポートしていく場などを作りながら、ブランドを育てていくという意識も今後ファッション・ウィークには必要なのかなと思います。

いまやブランド側にとって、ZOZOTOWNに出店するというのはひとつの大きな選択肢になっています。今後ECサイトをはじめネットを通して、ブランドが世界観や商品を発信、販売していく際に、どんなことが大切になってくると思いますか?

よく言われることなのですが、ECでの販売はあまり手間がかからないと思われがちですが、結局ブランドさん側が本気で取り組まなければうまくいかないんですよね。伸びているところは担当者を何人もつけて、MDもしっかり組んでいるし、逆にリアル店舗の片手間で取り組んでいるところは正直あまりうまくいっていないところもあります。ネットというものに対して固定概念を持たず、しっかりお店作りをしていくことが大切なのかなと感じます。最近はネットに対する意識も高くなってきていますし、販売はもちろん、プロモーションツールにも向いているので、戦略的にうまく使ってもらえるといいと思います。

最後に、JFWコミッティのメンバーとして、今後の抱負などを聞かせてください。

周りが大御所の方ばかりなので、他の人たちと同じ立場で考えるというよりも、まずは自分ができることを見つけていきたいなと思っています。ファッション・ウィークだけでなく、日本のファッション業界には変えていかなくてはいけない部分がたくさんあると思っているので、もっとファッションのことを勉強した上で、自分なりの意見を発言していくことがファースト・ステップです。あと、ファッション・ウィークに対して、ブランドさん側がどう感じているのかということも聞いてみたい。僕のようなヤツなら、デザイナーさんも多少本音を話してくれるような気がしますし(笑)、そういう意見も取り入れながら良い方向に持っていくことが、僕の使命だと思っています。

INTERVIEW by Yuki Harada

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