INTERVIEW 02/28/2025

竹内 美彩 Misa Takeuchi

PHOTOCOPIEUデザイナー

竹内 美彩 Misa Takeuchi

良い服を作りたいという真摯で実直な気持ちがピース、ルック、コミュニケーション、ブランドの全てから滲み出る「PHOTOCOPIEU」。偽りのない強い姿勢が纏う女性に美しき力を与える、そんなブランドだ。2019AWシーズンにスタート以降取扱店舗を増やし、次なるステージに望むべく海外展開を視野に入れ始めた今、ブランドのこれまで、これからについてデザイナー竹内美彩に話を聞いた。

ブランドをスタートした経緯を聞かせてください

フランスで働いていたときに、小柄で弱そうな自分を洋服で補填したいと思って、強くいられるようにと自分のためのドレスをシルクで作ったんです。そのドレスを着ていると友人から褒められることも多く、次は友人のためにとアレンジを加えてドレスを作り・・・ということを続けていたら黒のドレスが複数仕上がっていきました。これをコンセプトにブランドをやりたいと帰国後スタートしましたね。2019年2月に初めての展示会を開催し今年で5年を迎えました。

5年間でブランドとしてどのような変化がありましたか?

フランス女性のような独立心、知性を持った強い女性像を意識して始めましたが、海外で発表することを考えた際に女性像の伝え方を再検討し、「強さの中に奔放さがある人」というのが理想の女性像だと気づくことができたのが今シーズンです。
また、前シーズンの反省から次のコレクションは更に良くしたいと常に思っているので、シーズンごとにクリエイションも変化しています。24年9月パリで発表した25SSに関しては、ドレスが映えるコレクションにしたくて。分かりやすさ・売りやすさではなく、純粋なデザインアプローチに焦点をあてています。

paris showroom / Photography by Kazumi Miyamae

ものづくりで注力していることは?

フランスで学んだ、長方形の布を切ってボディに当てオリジナリティあるシルエットを生み出すという工程はずっと大切にして続けています。元々、布自体の特性を生かして彫刻するような立体裁断が好きでしたが、イザベルやヴェロニクで働いているときに「シルエットを作り込む=良い服を作ること」とより強く感じて、こうしたアプローチがブランドらしさに繋がっていると思います。

ドレスが印象的なブランドですが、竹内さんにとってドレスとはどのようなものですか?

ドレスはウエスト、肩、袖があり、女性の洋服として最も見所があり作っていても楽しいです。また、メンズのテーラードジャケットを作るようにドレスを作れたら、男女が対等な社会になれるような気もしていて。たとえばメンズのジャケットは細かく仕立てていくのに対してウィメンズのジャケットは開き見せで良いというのは「女性はこれくらいで良い」という社会構造の歪みにも思えませんか?それっぽいものを作れば女性は良いという社会的な感覚を変えて行きたいし、それっぽさで誤魔化す偽物のような服は作りたくない。

ブランドの顧客様はどんな方々なのでしょうか?

ウィメンズの洋服は毎シーズントレンドが移り変わることが一般的ですが、自身の変わらないスタイルを持ち、そのスタイルにそっとPHOTOCOPIEUの洋服が寄り添うような、そんなお客様に選んでいただいています。
洋服が強くて目立つというより、PHOTOCOPIEUの洋服を着ていると今日素敵だねと褒められるお客様が多いようで、それはブランドとしてとても嬉しく思います。

Photography by Harumi Obama

現在のビジネス概況も教えてください

国内は26アカウント、海外はLA、韓国に2アカウントの取引先があります。シルエットに重きを置いているブランドであるがゆえに、海外に関してはサイズ展開に関する課題がありますが、自分たちのこだわりやファブリックの良さを深く理解してもらえる層は確実に海外にも存在していることがパリのショールームで実感できたので、今後じっくりと広げて行きたいですね。

2024年3月にRakuten Fashion Week TOKYOにてインスタレーション形式で発表されました。今振り返ってみて、このプレゼンテーションはいかがでしたか?

普段は卸先の店舗様にお任せしているお客様とのコミュニケーションについて、自分たちが主体となり、直接メッセージを伝える場に出来たのがとても良かったと思っています。テーマは「忘れがちなものへの愛」で、一般に暮らしている人たちにスポットを当てたプレゼンテーションとしました。子供を迎えに行く途中の人がいたり、買い物途中の人がいたり、様々なシーンに寄り添う服としてPHOTOCOPIEUを着せ見せました。モデルに着せるのではなくてマネキンにすることで、どこか誰かっぽい、自分っぽいみたいな自分ゴトに出来るようにし、見る人によって印象が違う空間にしたかったんです。イベントやショーは華やかで派手なものが表現されることが多いので、日常的な服を展示したことが逆に新鮮に映ったと言われたり、反響はとても大きかったですね。
また、この機会があったことでプレゼンテーションの可能性を感じることが出来ました。SNSなどでテキスト、写真を通してコレクションや商品のイメージを伝えることを現在もやってはいますが、スタイリングを直接提案したり、私たちが目指す社会のあり方や、女性の生きやすさについて共有する場所を、例えば写真展のような場を通して今後持てたらと考えています。

PHOTOCOPIEU 2024 A/W collection

ブランドとして今後の展望は?

実際着てくださる方と接点を持って、従来のファッションビジネスやルールに囚われず、自分たちの洋服に共感してもらえるシステムを考えて行きたい。

デザイナーとして挑戦してみたいことは?

コラボレーションの経験がこれまでないので、挑戦してみたいですね。シューズやレザー小物なども手がけてみたいと思います。

Photography by Harumi Obama

INTERVIEW by Tomoko Kawasaki

Misa Takeuchi

竹内 美彩
東京での4年間の企業デザイナー勤務の後、2013年に渡仏。パリ・サンディカEcole de la Chambre Syndicale de la Couture Parisienneを卒業、ISABEL MARANT、 VERONIQUE RELOYでの 勤務を経て、2018年に帰国し自身のブランド「PHOTOCOPIEU」を設立する。2019AWシーズンよりデビュー。