MIZEN | 初参加アンケート26AW
ブランドや服作りについて
── ファッションデザイナーを目指したきっかけと、ブランを立ち上げた経緯を教えてください。
幼少期より、ヨーロッパの文化やデザインに強い憧れを抱いていました。中学・高校が私服の学校だったこともあり、自然とヨーロッパのファッションに関心を持つようになりました。高校時代に出会った Alexander McQueen の作品は衝撃的で、とりわけその独創的なシルエットと構造的な切り替えに強く心を奪われました。
その頃から、デザイン画そのものよりも「型紙」に強い関心を抱くようになりました。型紙は単なる設計図ではなく、構造そのものがデザインになり得るのだと知り、「服を描く」ことよりも「服を構造として作る」ことへと関心が移っていきました。当時はデザイナーとパタンナーの職域の違いを明確に理解していたわけではありませんが、構造という視点から洋服を見る感覚は、この頃に芽生えたのだと思います。
一浪ののち京都大学建築学科に進学しましたが、どうしても服づくりを体系的に学びたいという思いが強く、夜間の服飾専門学校にも通い始めました。建築と並行して服づくりを学ぶ中で、友人とファッションサークルを立ち上げ、次第にその活動により深くのめり込んでいきました。
建築の設計演習を続けていた際、担当教授であった 高松伸先生とのご縁があり、そこから本格的にファッションの道へ進む決意を固めました。
最初に入社したのは Yohji Yamamoto です。ファッションの世界に入ったからには、ヨーロッパのラグジュアリーメゾンで働くことを人生の目標に掲げ、挑戦を続けました。その後、ご縁に恵まれ、Carol Christian Poell、Agnona、そして Hermès と経験を重ねていきました。
その過程で、海外の現場において「日本人であること」への期待を感じる場面が幾度もありました。日本人としての強みとは何か、日本人だからこそ担える役割とは何かを、次第に深く考えるようになりました。
転機となったのは、2016年2月、パリ郊外で開催されたテキスタイルの展示会 Première Vision Paris での着物との出会いです。そこで、日本の手仕事が持つ圧倒的な時間の蓄積と構造美に改めて気づかされました。
一方で、その手仕事の時間軸は、現代ファッションのスピードとはまったく異なるものでした。効率や即時性が重視される世界の中で、長い時間をかけて育まれてきた技術が評価されにくい現実を目の当たりにし、「この時間軸そのものを価値として提示できないだろうか」と考えるようになりました。
伝統技術を“素材”として消費するのではなく、その背景にある時間や構造、そして人の存在そのものを主役にした新しい価値観を提示したい。そう考えたことが、独立のきっかけです。
こうして立ち上げたのが、MIZENです。
MIZENはブランドというよりも、日本の伝統技術と現代を結び直すプロジェクトです。速さや視覚的なわかりやすさではなく、背景を読み解き、自らの人生と重ね合わせる「余白」を提示することで、新しいラグジュアリーのかたちを提案しています。
── ブランドのコンセプトや服作りを通して伝えたいことは?また、提案したい男性像・女性像はありますか?
MIZENは、洋服そのものを“商品”として捉えているわけではありません。私たちが本当に届けたいのは、その背景にあるストーリーです。洋服はあくまで、そのストーリーを伝えるための手段であり、媒介であると考えています。
現代のファッションはスピードを前提に成り立っています。その中で、技術や背景の物語は「付加価値」として扱われ、「あれば良いもの」とされがちなのが現実です。しかし一方で、インターネットやSNS、さらにはAIの進化によって、「美しい」「かっこいい」「かわいい」といった視覚的な表現は、実在性を伴わなくても容易に生み出せる時代になりました。だからこそ今、刹那的なビジュアルの良し悪しだけで評価することの意味が、改めて問い直されていると感じています。
消費者は、単にお金を払うのではなく、「なぜそれを選ぶのか」という納得の理由を求めるようになってきています。その納得を支える物語をいかに提示できるかが、これからの時代においてより重要になるのではないでしょうか。
MIZENは、その物語の軸として「手仕事」を選びました。手仕事の背景には、無数の人の時間と経験が積み重なっています。そして、その価値をどう読み解くかは、受け手の解釈次第で無限に広がります。つまり、手仕事の価値は固定されたものではなく、それに触れる人それぞれに異なる「納得」の形を与えてくれる存在だと考えています。
ただし、その納得に至るまでには時間が必要です。現代のスピード重視の評価軸では、見過ごされてしまうことも少なくありません。だからこそ私たちは、スピードを少し緩め、ものの本質を時間をかけて「心の眼」で見るという価値観を広げていきたいと考えています。
MIZENが提案する男性像・女性像は、表層的なトレンドに流されるのではなく、自らの価値観で選び取ることができる人です。背景を読み解き、自分自身の人生と重ね合わせながら装うことができる人です。受け手が主役となり、解釈することで完成するファッション。それが私たちの目指す姿です。
そして、この価値観が広がることこそが、世界中の手仕事に関わる人々の存在をより輝かせることにつながると信じています。ファッションという、世界中で共有されている文化的なプラットフォームを通じて、その思想を広げていくこと。それがMIZENの目標です。
── クリエーションにおけるインスピレーション源、コンセプトメイキングの方法は?
一般的に現行のファッションでは、デザイナーの世界観を実現するために技術が用いられることが多いのに対し、MIZENではその発想を逆転させています。私たちは、「どのように表現すれば、その技術そのものが最も輝く形になるのか」という視点からデザインを考えています。
そのため、洋服の背景にあるストーリーを最も重要な要素と位置づけています。そこには当然、デザイナーとしての意思も含まれますが、それだけではありません。テキスタイルが生まれた土地の歴史や環境、素材に至るまでの過程、縫製の技法、そして一着の裏側に関わる多くの人々の存在——そうしたすべてが物語の一部です。
私たちのコンセプトメイキングは、その物語をどのように編集し、どの部分を立ち上がらせるかという作業でもあります。デザインとは、形を作ることだけではなく、背景にある時間や構造をどう可視化するかという行為だと考えています。
そしてそれは、消費者がMIZENの服を目にしたとき、「この一着の背景にはどのようなストーリーがあるのだろうか」と想像し、その答えを探していく時間そのものを価値として提案するためです。見ること、知ること、解釈すること。その過程に流れる時間もまた、私たちが提示したい豊かさの一部です。
── 現在の取り扱い店舗を教えてください。また、ブランドのファンはどのような人たちですか?
現在、MIZENは卸売は行っておりません。これまでは直営を中心に、ブランドの思想や背景にあるストーリーを丁寧に伝えることを重視してきました。
今回の出場を一つの契機として、国内外を問わず、MIZENの価値観に深く共感してくださる店舗やパートナーと出会えることを期待しております。単に商品を扱うという関係ではなく、背景の思想や物語を共に伝えていけるような、方々との出会いを望んでいます。
MIZENのファンは、物事の背景まで理解しようとした上で評価をする方々です。表層的な美しさだけで判断するのではなく、その奥にあるストーリーに自らの人生を重ね合わせ、自分自身の物語へと変換していく。その過程そのものに豊かさを見出せる、深い思考と「余白」を楽しむ感性を持つ方々だと感じています。
彼らにとって装うことは、単なる消費ではなく、解釈であり選択です。自らの価値観で選び取る姿勢こそが、MIZENのファンを特徴づけていると考えています。
── ファッションで影響を受けたブランドやデザイナー、スタイル、カルチャーは?また、その理由は?
ファッションに強く惹かれるきっかけとなったのは、Alexander Mcqueenの作品でした。彼のコレクションを通して、パターンカッティングそのものがデザインの核になり得ることを知りました。シルエットや構造によって生み出される緊張感は、それまで私が抱いていた「装飾としてのデザイン」という概念を大きく覆すものでした。
その後、Carol Christian Poellの存在に強い影響を受けました。彼は単に形を生み出すのではなく、「技術そのものをデザインしている」デザイナーだと感じています。作品の中には常に構造や工程の美しさが内包されており、その姿勢は現在の自分の思考にも深く通じています。技術を隠すのではなく、むしろ可視化し、価値として提示する姿勢は、MIZENの根幹にもつながっています。
さらに、Stefano Pilatiからはスタイリングの重要性を学びました。それまでは個々の洋服の造形にばかり意識が向いていましたが、彼との仕事を通じて、スタイリングという行為自体が一つの高度な技術であり、文脈を生み出す力を持つことを知りました。洋服単体ではなく、全体との関係性や構成によって意味が生じるという感覚は、その後のクリエーションに大きな影響を与えています。
これらの経験を通じて、私は一貫して「構造」や「技術」が持つ力に魅了されてきました。そして現在は、それらをデザイナーの自己表現としてではなく、背景にある時間や人の存在を可視化する手段として扱いたいと考えています。それがMIZENの現在の姿勢につながっています。






2026 AWについて
── Rakuten Fashion Week TOKYO 2026 AWへの参加の動機は?
今回の参加の動機は、より多くの方々にMIZENの存在を知っていただくことにあります。これまで私たちは、背景にあるストーリーや思想を丁寧に伝えることを重視しながら活動してきましたが、その価値観をより広い舞台で提示する必要性を感じていました。
特に、海外の方々に向けて、日本の手仕事やその時間軸の価値をどのように伝えられるかという点に、大きな可能性を感じています。ファッションウィークという国際的なプラットフォームを通じて、単にブランドとしての認知を広げるのではなく、MIZENが提案する「スピードを緩め、本質を見つめる」という価値観そのものに触れていただく機会にしたいと考えています。
東京という場所から発信することにも意味があると思っています。日本の伝統技術を背景に持つプロジェクトとして、その思想を東京から世界へと提示する。その一歩として、今回の参加を大切にしたいと考えています。
── 2026 AWシーズンのコンセプトやイメージを教えてください。
Slow Fashion
── ショーもしくはインスタレーションの構想を教えてください。
スピードを前提とする現代ファッションに対し、あえて速度を緩めたときに見えてくる世界を提示したいと考えています。
速さの中では見過ごされがちな技術や構造、時間の痕跡に目を向け、「見る」という行為そのものの価値を問い直す空間を構想しています。立ち止まり、解釈する余白を感じていただけるような演出を目指しています。
今後
── ブランドとしての展望を教えてください。
これまで以上に世界を視野に入れた活動を行っていきたいと考えています。ただ単に市場を広げるということではなく、日本の技術が持つ可能性を、異なる文化や価値観の中でどのように響かせることができるのかを探求していきたいと思っています。
そして、日本の手仕事の未来をより豊かなものにしていくために、同じ志を持ち、その価値に共感してくださる仲間たちとともに歩んでいきたいと考えています。技術を消費するのではなく、その背景にある時間や人の存在を共に高めていく。その実践を世界に向けて広げていくことが、MIZENの目標です。






TOKYOについて
── あなたにとってTOKYOとはどんな街ですか?
東京は、あらゆるものが集積している街だと感じています。情報も、人も、文化も、世界の動きも、常に更新され続けています。その意味で、非常に刺激的でエネルギーに満ちた場所です。
一方で、日本各地には、あえて言えば多少の不便さを抱えながらも、独自の時間軸や文化を守り続けている地域があります。東京があらゆるものを内包する都市であるからこそ、そうした地方の存在がより際立ち、お互いの個性を浮かび上がらせているのではないかと思います。
私にとって東京は、中心であると同時に、周縁の価値を再認識させてくれる街です。その両義性こそが、東京の魅力だと感じています。
── 東京で好きな街もしくはスポットと、その理由を教えてください。
広尾周辺です。人混みが比較的少なく、落ち着いた空気が流れている大人の街だと感じています。
── お気に入りもしくはオススメのショップ(ファッション、インテリア、飲食などジャンル問わず)、施設、スポットなどを教えてください。
Maerge、KERMIS TOKYO、wine living signature(全て飲食)








