ALAINPAUL × ANDAM/NATHALIE × TELMA SPECIAL TALK SESSION
RUN x ANDAM FASHION AWARDS PARISとJFWOのコラボレーションにより、RakutenFWT 26A/Wにて東京で初のショーを開催したALAIN PAUL。現代バレエの経験からなる美意識と造形美が特徴的で、2025年ANDAMの特別賞受賞を受けて今回の取り組みが実現した。RakutenFWT 26A/W会期中公式会場の渋谷ヒカリエでは、パリ発のショールームRUN(WSNグループ)とフランスを拠点に世界的な若手デザイナーを発掘・支援するコンテストANDAMが、初めて日本でイベントを開催した。その、ANDAMの創設者であるNathalie Dufour、JFW NEXT BRAND AWARD 2025受賞のTELMA中島輝道とショーを終えたばかりのALAINPAUL (Alain Paul / Luis Philippe)で、国を越えて魅力的なクリエーションを語り合う、特別なトークセッションの時間を実施。
今後のグローバルなファッション業界をリードするデザイナー、そして若い才能を発掘し続けるファウンダーから見た、日本ブランドの印象、ヨーロッパブランドとの違い、そしてこれからのクリエーションに必要なこととは?
──ALAINPAUL、日本で初めてのランウェイショーについて
Alain)すべてが本当にうまくいき、夢のような気分です。このような機会をいただけて、素晴らしい人々、プロダクションチームと一緒に仕事ができました。私たちが毎回パリで行っている感動を東京に持って来ることが目標でしたが、照明と音楽によって会場に本当に美しい感動を創り出せたと思います。
Nathalie)パリでもショーを見ましたが、キャスティング、音楽共に素晴らしかった。アラン・ポールにとって、ブランドの美学、コンセプトに基づいたランウェイを東京で発表したことは本当に意味がありますし、ここでの成功はアランにとって重要なステップになるでしょう。
Nakajima)まずは本当に美しいショーでした。昨今は、ビジネスやプロダクトの完成度がより強く求められる時代になっているかと思いますが、今回のコレクションは作り手としての視点が非常に明確で、その純度の高さに強く惹かれました。特に印象的だったのは、ファッションを単なる造形としてではなく、「身体と布の関係」として捉えている点です。元ダンサーというバックグラウンドからくる身体性や、修練によって培われた強さが、形式的な美しさだけでなく、リアリティを伴って表現されていたように感じました。

──日本のファッションマーケットについて
Nathalie)あまり多くは見ていませんが、日本のデザイナーは、伝統、歴史、そして日本のポップカルチャーをミックスした背景を有していると思いました。若く新しい世代は、教育に起因した深い教養がありますね。70年代の山本耀司や川久保玲のような日本人デザイナーよりも、日本の伝統により影響を受けていると思います。歴史的な背景なものへの回帰に現代的なポップカルチャーが融合されている、そんな新しい世代が魅力的に映りました。
Nakajima)日本のデザイナーは非常に編集能力に優れていると思います。特に近年では、自分たちの文化的背景や個人的な感覚に、より意識的なブランドが増えている印象があります。
Alain)日本の若い世代のデザイナーは世界観を創造するセンスが本当に魅力的だなと私も思いました。ナタリーが言ったように、伝統的な服や技術の表現に加えて、ツールを駆使したビジュアル表現が非常に未来的で前向きな考え方を持っていると感じました。
Nathalie)ショーの表現に一貫性があり、個人的で特別なアイデンティティに焦点を当てられているので、すぐにブランドのアイデンティティが分かります。非常にプロフェッショナルな仕事ができていると思います。TELMAも本当に一貫性があり、同時にクリエーションのバリエーションがあり、プロダクトに対するセンスも感じました。

Nakajima)ありがとうございます。私がクリエーションについて考えるとき、ビジネスとのバランスも考慮せざるを得ないですが、個人的な感情や経験を出発点にする事を大切にしています。ヨーロッパで働いていたときは、洋服が有していた社会的、歴史的な文脈からアイデアを組み立てる事が多かったのですが、日本に帰国してからは、クリエーションをよりパーソナルな動機から表現を立ち上げ、それを形にしていく傾向になっている感じがします。
Alain)中島さんはヨーロッパで勉強し、働き、今は日本を拠点にされていますが、ヨーロッパと日本での働き方にどんな違いがありますか?
Nakajima)そうですね。モノをつくるのかコトをつくるのか、という違いでしょうか。日本のものづくりは、非常に完成度の高い製品を目指しますが、ヨーロッパでは、コンセプトをより大切にするので、違いは大きく感じますね。
Alain)ファブリックや加工技術など、ヨーロッパよりも日本にいる方が選択肢は多いように思います。
Nakajima)日本の産地は非常に高い技術と精度を持っています。産地ごとに専門性の高い素材開発がなされており、素晴らしい選択肢が与えられています。繊細な要求にも応えてくれる技術と知識があり、日本ブランドにとって大きなアドバンテージになっていると思います。
──将来的な可能性を感じるデザイナーとは?
Nathalie)うまく実現されていない、粗野な創造性があるかどうか。マーケティングされておらず、プロダクトとして適応される時間がなかったような荒削りなものの中に、本当に革新的な潜在能力を感じるときです。
アラン・ポールには常に身体と洋服に纏わる「解体の作業」があり、その探求、進行そのものがブランドのアイデンティティになっていて、それが興味深い。解体と再構築のバランス。今でも少し粗野な何かがあり、完全に構築されたものではありません。そうして常に更新されたコレクションを作り続けていく、それぞれの瞬間に意味があり、それぞれのアクティビティが評価に値するのです。
──TELMAに対する印象
Nathalie)TELMAのテクニック、テキスタイルの組み合わせ、精密さ、そして非常にオリジナリティの高いプリントに感銘を受けました。アントワープで学んだ影響から来ている色使い、オブジェクトに対する解体と構築の関係性が見られるブランドですね。また、着物を想起させる日本の伝統をモダンに、フレッシュで洗練されたものへ解釈し、素晴らしいと思います。
グローバルにブランドを成立させていく上では、その展開は無限にあるのではないかと感じられるほどの豊かな世界観をブランドが持つ必要があります。一貫して強いビジョンがあり、とても豊かであること。TELMAには非常に強いアイデンティティがありますので、長い期間に亘りブランドを展開することが出来ると思います。彼に求められる素材やシェイプの複雑さ、クオリティを維持していくのは非常に難しいと思いますが、その要求に応えることを手放さず、ラグジュアリーであり続けて欲しい。

──これからのファッション、クリエーションについて
Alain)パリがやはりファッションの中心地でありますが、東京やニューヨークなどのマーケットでコレクションを披露することは本当に興味深い経験になると思います。今までに見せたことのない場所で、コミュニティと直接の対話を持ち、パリに来ない人々にコレクションを見てもらうことができ、新しいクライアントの獲得にも挑戦ができます。現地で洋服を愛するファッション産業の方々とブランドが直接対話できる機会は本当に素晴らしいこと。
私はコレクションを作ることが本当に好き。そして、ショーやキャンペーンはコレクションを表現するもので、ナタリーが言ったように無限に更新される世界観を毎シーズン展開していくもの。ブランドとして一貫したアイデンティティを保ちながら、人々に異なる感情をもたらしていく。コレクションごとに、人々が新しい感情に出会ってブランドが更新されていくコードを作っているような感覚です。
今年パリオペラ座に向けて衣装を作りましたが、売るため、着るための服ではなく、よりアーティスティックさを追求する服であり、そのプロセスが私にとって非常に楽しかった。ショーにももちろん情熱を持っていますが、時にはファッションシステムから抜け出し、このような創造的で豊かなプロジェクトに取り組めることもブランドがコミュニティと世界観を拡大するために重要だと思います。
私たちは年に2回公に語りかける必要があります。年に2回、アラン・ポールとは何か、ブランドの価値、私たちが何を考え、ファッションのために何を望んでいるかを伝える機会があります。伝え続けることは不可能ではありませんが、大企業やメゾンが治めている世界に置いて若い小さなブランドが同じルールの中で強いビジョン持ち続けることが難しい。
Nakajima)アランさんの考えには同感です。年2回のショーだけでなく、それ以外の特別なプロジェクトや異なる分野とのコラボレーションを通じて、ブランドの価値観や世界観を多角的に伝える事がより重要になると感じています。ファッションを単なるプロダクトとではなく文化として捉え、その担い手として自らの言葉で物語を語り続けていく必要があります。
私自身も、服に限らない表現方法の可能性を探りながら、ブランドとしての思想や世界観をより広い形で展開、挑戦していきたいと考えています。
Luis)私から見ると、アラン・ポールはすでに強く、ビジョンとブランドのアイデンティティをコミュニティに伝えていると思います。だから、ブランド として、アラン・ポールのコミュニティを拡大していくことをこれからの目標の一つとしています。

Luis Philippe / Alain Paul / Nathalie Dufour / Terumasa Nakajima
ルイス・フィリップ/アラン・ポール/ナタリー・デュフォー/中島 輝道アラン・ポール(Alain Paul)は1989年に香港で生まれる。1997年に家族とともにフランスへ移住し、翌年マルセイユ国立高等ダンス学校(現在はダンスカンパニー「(La)Horde」の拠点となっている)に入学する。幼少期は、現代バレエの厳格さと美意識に満ちた環境の中で育つ。18歳のとき、さらなる表現の可能性を求めてダンスの道を離れ、パリでファッションを学ぶ。学業修了後の2014年、デムナ(Demna)の革新的なビジョンに惹かれ、若きファッションハウス〈Vetements〉に参加。
2018年から2022年までは、〈Louis Vuitton〉のヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)のスタジオに所属し、メンズ・レディ・トゥ・ウェア・コレクションにおいて、モダニティとクラフツマンシップを融合させる役割を担う。2023年には、自身の名を冠したファッションハウス〈ALAINPAUL〉を設立。
Nathalie Dufour ナタリー・デュフォー
高等芸術職業学院(ICARTパリ)を卒業後、社会科学高等研究院およびルーヴル美術館付属美術学校現代美術科で学び、1988年に文化通信省視覚芸術局ファッション部門責任者としてキャリアを開始。1989年にはジャック・ラング文化大臣(当時)とDEFI会長ピエール・ベルジェの支援を得て、国立ファッション芸術協会(ANDAM)を設立。ナタリー・デュフォーはイエール・フェスティバルおよびUFACの理事を務め、2016年よりレジオンドヌール勲章シュヴァリエ、2018年より芸術文化勲章シュヴァリエの称号を保持している。
Terumasa Nakajima 中島 輝道
2010年アントワープ王⽴芸術アカデミー卒業。卒業コレクションが評価され、「Christine Mathys賞」および「Louis賞」を日本人として初めてダブル受賞し、同コレクションがアントワープ市内にあるセレクトショップLouisのウィンドーディスプレーを飾る。これを機に同年、DRIES VAN NOTEN に入社し、ドリス ・ヴァン・ノッテンのアシスタントとしてウィメンズデザインを担当。その後、⽇本的な物作りを学ぶ為に帰国し、14年に ISSEY MIYAKE へ⼊社。⼀枚の布という概念から独⾃のシルエット表現と国内産地との素材開発を学ぶ。2022年春夏コレクションより「TELMA」を発表。
ALAINPAUL
[URL] https://alainpaulstudio.com/
[Instagram] https://www.instagram.com/ALAINPAUL/
ANDAM (Nathalie Dufour)
[URL] https://andam.fr/
[Instagram] https://www.instagram.com/andamfashionawards/
TELMA (Terumasa Nakajima)
[URL] https://telma.jp/
[Instagram] https://www.instagram.com/telma.jp/
