藤田 哲平 Teppei Fujita 「sulvam(サルバム)」デザイナー
TOKYO FASHION AWARD 2015 受賞デザイナー
1984年千葉県生まれ。ヨウジヤマモトでパタンナーとして経験を積み、2013年「sulvam」をスタート。
[ URL ] http://www.sulvam.com/
ヨウジヤマモトでパタンナーとして経験を積んだ藤田哲平が、2013年に設立したメンズブランド、sulvam(サルバム)。ヨウジヤマモト時代に習得したパターン技術をベースに、色気を感じさせる男性像を押し出したコレクションで支持を集め、TOKYO FASHION AWARD(以下、TFA)の受賞ブランドとして、今年2回にわたってパリのショールームでの発表も終えた藤田に、現在の心境や服づくりにおけるこだわりなどについて伺った。
藤田さんはヨウジヤマモトで働かれていたそうですが、そこから自身のブランド、サルバム設立に至るまでの経緯を教えて下さい。
ヨウジヤマモトではパタンナーとして働いていて、未経験の状態から先輩方に教えていただき、7年ほど在籍していました。当初は、独立して自分のブランドをつくりたいという思いはなかったのですが、一代で世界的なブランドにまで成長させた(山本)耀司さんのもとで働いていたことで大変刺激を受け、自分でもブランドなり会社をつくってみたいと考えるようになってきました。自分の力を試してみたいという思いもあり、30歳になる前に自分のブランドを始めることにしたんです。
ヨウジヤマモト時代にはどんなことを学びましたか。
技術的な部分から感覚的な部分まで、ヨウジヤマモトでの経験は大きな糧になっています。ヨウジヤマモトにいた時は、耀司さんのデザインをパタンナーとして形にすることが自分の仕事でした。独立して自分ひとりになると、当然ですが、パターンやカッティング、分量の取り方など、すべてひとりで考えていかなくてはいけない。それは、予想以上に大変なことでした。
ご自身のブランドでは、どんな洋服をつくっていきたいと考えていますか。
モード、ストリートなどのジャンル分けがされないような洋服をつくっていきたいと思っています。ただ、メンズウエアというのはテーラードがベースにあると思っているので、そこからいかに崩していけるかということを大事にしています。また、サルバムというブランド名は、ラテン語で「即興演奏」という意味ですが、何か予期せぬものがぶつかり合うことで生まれるオリジナルの空気感のようなものを、洋服で表現したいという思いがあります。僕はデザイン画も描けないし、PCのソフトも使えないので、ボディに布を合わせながら形をつくっていくというアナログなつくり方しかできません。そうした自分ができる範囲の中で、生地屋さんや縫製工場さんなどさまざま人たちと、バンド演奏に近いイメージで服づくりができればと考えています。
ブランド設立から間もない段階で、2シーズンにわたってパリで展示会をされましたが、もともと海外への意識は強かったのでしょうか。
はい。パリ、ロンドン、ニューヨークなど場所は問わず、外に出て勝負をしないといけないという意識は持っています。また、TFAについては、審査員が全員バイヤーということも参加した大きな動機になっています。やはり自分が最も届けたい相手というのはお客さんですから、そこに近いバイヤーの方たちにしっかりと見てもらえるということは、海外進出へのサポートがあるということと同様に非常に重要なことでした。
パリでの展示会に加え、今年3月には東京で凱旋ショーも行いましたが、全体としてどんな反応がありましたか。
今年1月のパリでの1回目の展示の際に、着やすさなど販売面について考え過ぎてしまったところがありました。その反省を踏まえ、2回目の展示では、自分がやりたいことをストレートに表現しました。その結果、非常に良い反応が得られ、海外ショップとの新規取引も決まりました。東京でのショーについては、当初はコスト的な部分をはじめ不安だらけでしたが、実際にショーをしたことによって、さまざまな方にブランドの存在を知っていただくことができました。このショーを見ていただいた『Vogue Italia』のシニアエディター・Sara Maino氏に気に入っていただいたことをきっかけに、9月に開催されるテキスタイル展「Milano Unica(ミラノ・ウニカ)」から招聘され、合同ショーに参加することが決まりました。
これからも東京でランウェイショーを行いたいと思いますか。
国内の取引先からは、東京でショーをすると喜んでいただけるので、今後もできるだけ東京での発表を続けてきたいと考えています。もっと、東京のファッション・ウィークにも海外の人たちが足を運んでくれたら素晴らしいと思いますので、東京に興味を持ってくれる人を少しでも増やしていく必要性があると感じています。