Interview & Report

アキコアオキ AKIKOAOKI

アキコアオキ AKIKOAOKI 青木 明子

AKIKOAOKI Designer

女子美術大学ファッション造形学科卒業後、ロンドンのCentral Saint Martins にてファッションを学ぶ。
帰国後コレクションブランドでアシスタントを経て、2015 S/Sシーズンよりウィメンズウェアフラン ド“AKIKOAOKI”をスタートする。

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2015SSにスタートし、独自のフィロソフィーとスタイルを持つウィメンズブランドとして確実な成長を遂げている「AKIKOAOKI」。直近ではアイコニックなシェイプでファッショニスタを虜にさせているシューズラインの印象が強い人も多いだろう。国内外含めて今後の更なる活躍が期待されるブランドについて、デザイナー青木氏にこれまでの軌跡と今後の展望について話を聞いた。

青木さんがファッションに興味を持ったきっかけを教えてください。

幼稚園から高校までカトリック系の学校に通っており、自分の好きな洋服を選べずに制服を着るという時期が長くありました。そうした経験がファッションとは?アイデンティティとは?という問いに繋がっていき、小学生の文集にはファッションデザイナーになりたいと書くほど小さい頃からファッションに興味を持っていました。

美大を卒業後にファッションブランドをスタートされていますね。

日本の美大でアートの一つとしてファッションを専攻し、その後ロンドンの大学に留学し、帰国後にブランドを立ち上げました。物事に対してなぜそうなるのかと考える癖があるので、美術解剖学や写真、身体パフォーマンス、テキスタイルなど幅広い芸術的観点から「ファッションとは何なのか」を学びたかった。その答えはまだ出ていないのですが、ファッションとアートの違い、プレゼンテーションの重要性、建築的な見立てなど、自分なりのファッションフィロソフィーを構築する上で大切な経験になっています。

ブランドの特徴は?

女性の身体のシェイプを再構築し、実際に袖を通していただくことで、はじめて衣服のシルエットが明らかになるアプローチが特徴ですね。女性の身体そのものに対しては、ある程度の距離を持って考えることで、新しくユニークなシェイプを作り出し、着て感じていただける美しさを追求しています。

クリエイションで大切にしていることは?

最近だと、ぱっと見での刺激物になり過ぎないことを意識しています。現代社会においては、SNSの発達も相まって刺激的なものに中毒的な習慣があると思います。でも、実は瞬間的な刺激は長期的には記憶に残りずらいものだと思うんです。それよりも自分の暮らしや思想に時間をかけて馴染むファッションであることを目指しています。 また、状況によっては少しネガティブな意味で捉えられることもある “ 流行 ” という概念に対しても私はポジティブで、時代が移り変わる中でブランドも自分も、変わることのないフィロソフィーを持ちながらも、同時に、フレキシブルに変化していくべきだと思っています。一見、真逆に見える、この2つの概念を共存させていくことが自分にとっては大切です。

コレクションのテーマはどのように決めていますか?

ふと感じる疑問や気分、時代感など日常の中からテーマを拾うことが多いですね。23AWに関しては、自由な現代だからこそ、制約や不自由さにフォーカスにしてみようと思い、自分の意志とは関係なく聖母としての役割を突如与えられて宿命を全うすることになった「マリア」をテーマとしました。宗教的なオマージュではなく、マリアという人物像に、スーチング、ストリートのグラフィックなど、社会性やリアリティーを加えていくことで独特な人物像が生まれるのではないかと考えました。

そのテーマはコレクションにどのように落とし込まれたのでしょうか?

象徴的なディテールとしてヴェールがあります。ショー中に何度もヴェールのルックをリピートで登場させることで様々なタイプのマリアを一貫して包み込みながら、ブランドが伝えたいことが滲み出るようなものとして人々の記憶に刻み込む演出をしました。ピースとしては、メンズに使われることが多いピンストライプなどユニフォーム感のある硬めな素材やドレス、襟と身頃の境界が溶けているようなシェイプなどに落とし込んでいます。

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provided by AKIKOAOKI

東京で久々の発表となった23AWシーズンのショーにはどんな狙いがありましたか?

ショーはとても発信力があるプレゼンテーションですし、ルックや展示会では表現できない世界観、ライブ感があるので、ブランドとしてのアティチュードを見せたいと思って挑みました。メディア露出も増え反響が大きかったですし、東京でショーをやったブランドとしてビジネス的な効果もあり、実際にやってよかったです。今回ショーを行ったことでデザイン面での課題にも気づくことができました。

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provided by AKIKOAOKI

ビジネス概況はいかがですか?

現在国内は約20アカウント、海外は6アカウントのお取引先があり、シーズンを経るごとに伸びています。DtoCとして始めた、Three Treasuresとの協業のシューズラインも、好調に推移しています。ECはコロナ禍でスタートし、シューズはEC販売に向いたプロダクトとして始めました。最近では、韓国のアーティストが履いてくれたり、既存のブランドとはこれまで接点のなかった層や男性にもシューズを選んでいただけていて、シューズがブランドの入り口になり、そこから洋服を買ってもらえるという流れが出来てきています。

ブランドの今後の展望を聞かせてください。

海外展開に力を入れていきたいですね。TOKYO FASHION AWARD支援で1年間パリのショールームに参加して、いろんな国のバイヤーが来場してくださり、日本とはまた異なる反応やセレクトをしていただき、勉強になりました。23AWはショーを開催する前提でのコレクションだったので強いピースが多かったのですが、24SSではパリの街で感じたリアリティを入れ込みたいと思って制作をして、着る人のスタイル、生き方に溶け合う余白のある服を意識しました。自身の意識も変わり、デザインもグローバルな眼差しで取り組んでいきたいと思っています。
クリエイションとしては、物の見方が様々なパリに集まるクリエイターと協業して仕事に取り組んでみたい。シューズも今スニーカーソールでの展開だけなので、バリエーションを増やしてやって行けたらと考えています。

Interview by Tomoko Kawasaki
Photography by Kenji Kaido

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