Interview & Report

幾左田 千佳 Chika Kisada

幾左田 千佳 Chika Kisada Chika Kisada(チカ キサダ)

TOKYO FASHION AWARD 2017受賞デザイナー

幼少期よりクラシックバレエを学ぶ。コンクールなどで数々の成績を収め、バレエダンサーとして舞台で活動した後、2007年に「REKISAMI」、2014年に「Chika Kisada」を立ち上げる。バレエと音楽、都市の空気をインスピレーションに、強く生きる女性のための服を製作。2016年TOKYO FASHION AWARD 2017受賞。
「Chika Kisada」はバレエのエレガンス、パンクの生命力。その儚さと強さ、相反するイメージの融合から生まれる「強いエレガンス」がコンセプト。仕草や動きにともなって漂う人間の美しさの移ろいと存在感を追求したシグネチャーライン。都市で生き、動き続ける、新しい上質さを求める女性たちのための服。

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バレエダンサーとして活動を続けた後、ファッションデザイナーに転身するという異色のキャリアを持つ幾左田千佳氏。そんな彼女がデザインするチカキサダのコレクションは、儚さや繊細さといったバレエに通じるイメージと、それらと相反する強さや反骨精神が同居し、現代社会をアクティブに生きる女性たちから支持を得ている。先日、ブランド初のランウェイショーを東京で開催するなど、ますます注目度が高まっている幾左田氏に、「チカキサダ」「レキサミ」という2つのブランドを手がけることになった経緯やクリエーションの源泉など、さまざまな話を伺った。

 

幾左田さんはもともとバレエをされていたそうですが、そこからなぜファッションデザイナーになったのですか?

ダンサー時代はバレエ一筋という感じでしたが、周りに洋服が好きな友達が多かったことから、色々なブランドのことを知るようになり、少しずつファッションに興味を持つようになりました。バレエの世界から遠退き、今の会社に就職しましたが、入社当時は営業を担当していました。その後、会社から新しいブランドを立ち上げないかと声をかけてもらったことをきっかけに、2007年にレキサミというブランドを立ち上げました。

 

Chika Kisada

以前から洋服のデザインをしたいという思いは持っていたのですか?

入社当時に担当していたブランドのデザイナーと一緒に企画を考える機会などはありましたが、その頃は将来デザイナーになるというビジョンは描いていませんでした。ただ、専門職を極めたいという思いは強かったので、自分に何ができるのか模索している時期でした。色々な作業を経験するうちに服における創造的な仕事に惹かれるようになりました。もともと人がTPOなどに合わせて洋服を選び、個性を表現するという行為に興味を強く持っていましたが、それはダンサーがさまざまな役やシーンに合わせて自らの解釈で身体を使って表現することと通ずるものを感じていたからかもしれません。そこから服づくりのプロセスやノウハウなどを勉強し、習得していきました。

 

Chika Kisada

レキサミを立ち上げた後に、新しいブランドとしてチカキサダをスタートしたのはなぜですか?

バレエで経験してきたものをより色濃く反映させながら、強いエレガンスを表現できるようなブランドを立ち上げたいという思いがあり、タイミングを図っておりました。それが2014年に実現し、チカキサダとしてデビューすることができました。

 

チカキサダはレキサミとは作り方のプロセスなども異なるのでしょうか?

チカキサダでは、毎シーズン最初にストーリーを設定し、そこからイメージを膨らませながらコンセプトやテーマを固めていきます。毎日の生活の中でふと感じたものや、興味を持ったもの、あるいは映画や美術、音楽などから受けた刺激を少しずつ自分の中に蓄積させて、その中から特に惹かれるものを徹底的に掘り下げていくことが多いです。

 

デザインするにあたって、特定の女性像をイメージすることはありますか?

私は、女性の身体というものをテーマにしていて、洋服を着た時に人がどう美しく見えるか、着た時に布がどのように動いてドラマティックに見えるか、ということを主に意識して洋服をつくっています。そのため、特定の女性像をイメージすることはありません。

 

チカキサダの洋服には、バレエにも通じる繊細な美しさがある一方、それと相反する強さも共存しているように感じます。

私はバレエを挫折して引退したので、バレエに後ろ髪を引かれる思いがありました。未だその世界に憧れを抱いていますし、その複雑な感情は私から切っても切れない存在で、バレエの要素や培ってきた経験は服づくりにおいても大切にしたい部分です。色々と感じてきた複雑な感情はパンクの精神と通じるものがあり、そうしたものが相まって「パンクバレエ」という現在のブランドのテーマにたどり着きました。

Chika Kisada 2017 A/W Show room
Chika Kisada 2017 A/W Show room

2017年1月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo A/W 2017」の様子

 

今年の3月には、TOKYO FASHION AWARDの受賞ブランドとして、東京で初のランウェイショーを行いましたが、こちらについてもお話を聞かせてください。

初めてのランウェイショーにあたっては、音楽や照明、モデルのウォーキングなどを通じて、洋服と身体との関係性や布の動き方など、展示会ではなかなか伝えきれなかった部分を明確に伝えられることを心がけました。また、日常着におけるエレガンスを追求してきたので、普段はあまり日常から離れた洋服をつくることはありませんが、ショーでは非現実的な世界という側面も断片的に演出したかったので、今回はショーのためのドレスやヘッドピースなどもつくりました。国内外のさまざまな方にブランドのことを知っていただく非常に良い機会になったと思います。

 

先日パリで行ったショールーム展示でも新しい国との取り引きが決まったそうですね。多様な国から注目されているように感じます。

宗教や文化の違いなどで、その国のファッションのスタイルはそれぞれですが、ブランドの世界観に共感してくださる方たちの間には共通した意識や感覚があるように思います。今後も国内外問わず、ブランドに共感してもらえる方たちを中心に販路を拡大していけるように、丁寧な服づくりを続けていきたいと考えています。

Chika Kisada 2018 S/S Show room

2017年6月にパリで行われたTOKYO FASHION AWARD「showroom.tokyo S/S 2018」の様子

 

Interview by Yuki Harada
Photography by Yohey Goto

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