Interview & Report

石田 栄莉子/清水 亜樹 Eriko Ishida / Aki Shimizu

石田 栄莉子/清水 亜樹 Eriko Ishida / Aki Shimizu MALION vintage(マリオン ヴィンテージ)

MALION vintage Designer

デザイナー/ 石田 栄莉子(いしだ えりこ)
1989年生まれ千葉県出身
杉野学園ドレスメーカー学院ファッションデザイン科を卒業後、企業デザイナー、バイヤーとして8年間経験を積み、2016年に古着のアップサイクルブランド『MALION vintage』をスタート。 2019年に祖父の材木屋から名付けた自身のブランド『ERiKOKATORi(エリコカトリ)』を始動。

デザイナー/ 清水 亜樹(しみず あき)
1983年生まれ兵庫県出身
高校卒業後、地元のセレクトショップに勤務。その後上京し、「Cher(シェル)」で 11年間バイヤー、店長を勤め、2016年石田と共に『MALION vintage』をスタート

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TOKYO FASHION AWARD 2022を受賞し、2022年3月にランウェイショーを東京で、9月にパリで海外初の展示会を開催したMALION vintage。古着を素材として使用するため、全てが1点モノの商品であり、他コレクションブランドとは立ち位置が異なるものの、そのユニークさや実直なクリエイションが時代性にマッチし、ファンを獲得している。今後ますます活躍が期待されるブランドを支えるデザイナーの石田氏、清水氏に、初めての海外出展を終えた今の気持ちを伺った。

まずお二人でブランドを立ち上げるに至った経緯を聞かせてください。

私たちはCherで企画、接客を経て古着バイヤーとして一緒に働いていたのですが、古着はサイズが大きかったりするので、お客様が着やすいようにリサイズしたり、一部に手を入れたりして古着をベースとした1ブランドとしてネームも付けて価値を持たせて売り出した方が良いのではと考えるようになり、Cher内の1ブランドとして2016年に立ち上げたのが始まりです。その後、2017年夏に独立して、今の形になりました。

今年でブランド設立6年目を迎えられたわけですが、どのような歩みを経てきたと捉えていますか?

私たちにはセールス担当がいないのですが、営業せずとも、Cher在籍当時からブランドを気に入ってくださる方々がいて、スタート当初から売上を落とさず継続して発注いただいています。前年比で毎年少しづつ大きくなってはいますが、ドーンと急成長するようなブランドではないですし、そういうイメージも持ってはいません。お取引は個店さんが多く10店舗程度ですが、コロナ禍でも落ちずに前年度アップを続けられています。これからも細く長く続けていけたらと思っています。

マーケットの中でユニークなポジションを築いていらっしゃるように感じます。モノづくりにおいて大切にされていることを教えてください。

ふたりで古着の買い付けも企画、デザインも共同でやるという点でしょうか。ふたりの感性をすり合わせして生まれるクリエイションを大切にしています。外部委託等を導入すればもっと量産できるとは思うのですが、モノづくりに関してブレを出したくないので今も私たちふたりで提案し続けていて、それがブランドを続けられている理由かなと。

ブランドの顧客様はどんな方々でしょうか?

Cher時代からのお客様もいらっしゃいますし、伊勢丹等のポップアップでブランドを知ってくださった方など、30〜40代の方が中心ですね。若いお客様もいらっしゃいますが、単価が高いこともあり、しっかりお仕事されてらっしゃる方が多い印象です。

お二人がこれまで影響を受けたデザイナーはいますか?

デザイナーでは思い浮かびませんが、古着を見てこういうのを作りたいというモチベーションは常にありますね。小学校、中学校くらいから古着が好きで、ハイブランドとかは全く通らずでした。私の場合は、メンズ服を娘の私に着せたりと母親が変わった趣味を持っていたので、母親の影響も受けていると思いますね(清水さん)

TOKYO FASHION AWARD 2022を受賞したことで、ブランドとして変化はありましたか?

周囲の方々から「そんなこともできるんだ!」ととにかく驚かれました!(笑)。アワードに応募したのは、ここ数年私たちと似よりのデザインだったり、リメイクした洋服を販売されている古着屋さんが出てくるようになっていたので、私たちこそが本物という認証を得たかったというのがあって。今回受賞できたことで他とは明確に差別化できたように感じています。
また、応募したときはまだまだコロナ禍でしたし、ブランド設立5周年という節目でもあったので、何か新しいことをしたいなとも思っていました。

MALION vintageが海外市場へ進出する理由は?

海外市場はリメイクに対する価値を理解してもらいやすいと思っていて、出してみたいと以前から思っていました。国内市場だと、パッと見たときのかわいさと買いやすさが重視されるので、現在の上代が高いと思われてしまっていて、価格交渉されたりする場合もあるんです。価値を理解してもらえない市場に対して、頑張って作って販売する意味あるのかなと思ったりします。もちろん、私たちのPRやブランディングの不足もありますが、これだけ手間をかけて丁寧に仕上げていることが理解してもらいづらい現状があるんです。

国内市場においても、洋服の背景にあるプロセス、価値を理解してもらいたいですよね。今回、実際パリのショールームに出展してみて、いかがでしたか?

AWARDを受賞してショールーム出展できたことは、私たちの現状を試すとても良い機会になりました。サイズも変えず、グレーディングもせずに出してみたのですが、やっぱり今のサイズ感では厳しいなと痛感しました。次パリで見せる際には、ユニセックスで着用できるメンズサイズのデザインを拡充するつもりです。古着をパッチワークしているというファブリック、工程そのものを高く評価してもらえたので、ベーシックなスタイルとしてシャツ、パンツの要望が多かったです。また、価格についても高いとは思われず、ものづくりのプロセスや考えに共感してもらえて、素晴らしい!と褒めていただけたことも嬉しかったですね。
洋服をリビルドするムーブメントは世界中でトレンドですが、カジュアルで男性的な表現が多いので、私たちのようなフェミニンな立ち位置のブランドは他になく、手応えを感じています。

TOKYO FASHION AWARDのプログラムに参加したことは、ブランドにとってどのような経験になりましたか?

ブランドを支えてくださる身近な方々が喜んでくださったことがとにかく嬉しいですね。3月のランウェイショーもパリでのショールームも良い経験になりましたし、同業とも言える古着屋さんから褒めてもらえたりとブランドとしてステップアップした感覚があります。

TOKYO FASHION AWARDに応募を考えている方に一言お願いします。

あれこれ考えるくらいならとにかく応募してみたら良いんじゃないかなと思います!

向かって右:MALION vintage デザイナー 清水 亜樹氏 左:MALION vintage デザイナー 石田 栄莉子氏

最後に、ブランドの今後の展望を聞かせてください。

国内に関しては実店舗を増やす、売上を伸ばす、取引先を増やすということよりも、自社工場を作りたいと考えています。工場があれば、私たちが年を取ってもずっとものを作り続けられますし、オーダーメイドのような展開も可能になります。そして、工場を持つことで、洋服のクオリティをもっと上げていきたい。ブランド力も上げて、もっと多くの方に知ってもらうことも必要だと思っています。海外に関しては、韓国、アジア圏の方は体型も近いので可能性があると思っていますし、欧米に関してもセールスを付けてパリで継続して展開していけたらと考えていますね。
また、デザイナーの野望としては、大好きなアーティストにMALION vintageをいつか着て欲しいと思っています!

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